「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」

第2次渾作戦開始直前、春雨は魂に訴えかける声を聴く…
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「つまり、駆逐棲姫が同じ魂を持つ春雨を呼んでるってのか?」「恐らく。赤レンガの推測が正しいのであれば、春雨は駆逐棲姫の意志に逆らえない。たとえ参加させなくとも、彼女は勝手にビアク島へ向かうでしょう」 「なら、何故呼ぶ?」リカルドは疑問を呈した。 57

2015-02-26 02:23:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「艦娘の船魂に呼びかけるなんて前例を聞かん。つまり、駆逐棲姫がそこまでできるほど霊格が高いんだろ?なら何故態々、己より劣る分霊を呼ぶんだ?」「そこまでは。ですが、これはある種チャンスでもある」「チャンス?」白雪の言葉にリカルドはオウム返しに問う。「ええ、チャンスです」 58

2015-02-26 02:24:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「駆逐棲姫が春雨を呼ぶならば、つまり春雨について行けば確実に敵旗艦と遭遇できると言う訳です」「成程、目的を遂げる前にやっちまうわけだ」 「ええ。ソウルを呼び寄せようとするのなら、恐らく碌な事ではないでしょう。ならば逆手に取ってやりましょう」白雪は力強く言った。 59

2015-02-26 02:25:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「深海棲艦の思う通りにはさせませんよ」「そりゃそうだ。その為の大規模作戦だ」リカルドは不敵に笑った。そして、表情を引き締め、命令した。「大淀、白雪。両名には第2次渾作戦に参加してもらう。目的は敵旗艦撃破と共に、春雨の護衛だ」 60

2015-02-26 02:26:58
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

大淀と白雪が姿勢を正す。「恐らくあいつは、自分が意志を誘導されているのを承知で、駆逐棲姫の所へ向かうはずだ。彼女を助け、敵の野望を挫いてくれ」リカルドは先程の春雨の目の光を思い出しつつ、命令を紡いだ。「了解」「了解です」白雪と大淀は、敬礼し、リカルドの命令に従った。 61

2015-02-26 02:28:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「頼んだぞ」そう呟き、リカルドは窓から月を見た。月は深海棲艦の出す黒い瘴気の中に朧げに見えた。見えぬ敵の真意を現すかのように。 62

2015-02-26 02:28:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」 # 1終わり # 2へ続く

2015-02-26 02:30:09

2015/6/9 #2

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

◇K@R@TE Entertainment◇ ◇望まねばミュート◇

2015-06-09 19:48:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」#2

2015-06-09 19:48:50
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

前回までのあらすじ (時は第二次渾作戦開始直前。輸送任務から帰投した春雨は突如、ビアク島から“声”を聴く。己を呼ぶその声に魂を急かされ、春雨は突き動かされたかのように、第二次渾作戦への参加を志願する。……だが、それは駆逐棲姫の何らかの思惑であったのだ!)

2015-06-09 19:50:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(第二次渾作戦の指揮官たるリカルド、その秘書官大淀、そして油断無き監視者白雪は、罠と知りながらも敢えて春雨を参加させることを決定する。果たしてその判断は吉と出るか凶と出るか…)

2015-06-09 19:52:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(だが、既に賽は振られ、ルビコンの此岸に戻ること叶わず!ここからはカラテのみが道を切り開く!カラテだ!カラテあるのみ!)

2015-06-09 19:53:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

数日後、ビアク島周辺海域へ向け航路を取る6人の艦娘艦隊の中に、春雨の姿はあった。彼女らの遥か後方には、敵勢力圏外に待機するひだ級中型艦娘母艦5番艦「かいもん」が控え、リカルドがそこで陣頭指揮を執る。空は深海棲艦の勢力圏内の証である黒い濃霧に覆われ、薄暗い。 1

2015-06-09 19:57:50
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(不安だ)物々しいアトモスフィアと、生命を拒む明確な殺意を称える空を見上げ、不知火はそう思った。(何故、あの子が旗艦?)不知火は艦隊の先頭を見やる。そこには春雨の姿があった。それは即ち、今回の作戦に於いて彼女が旗艦を務めることを意味する。 2

2015-06-09 20:01:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

不知火は艦隊の他の艦娘を見渡す。大淀、川内、白雪、若葉、そして自分。(不知火と若葉さんはまだわかる。私達は直掩の戦闘要員だ。川内さんは噂に違わぬ夜戦主義者。後方で控えての指揮は彼女の性に合わないはず)不知火は思案を続ける。不知火は編成が発表されてからずっと考え続けていた。 3

2015-06-09 20:03:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

己に向けられた視線を知ってか知らずか、川内は大口を開けて欠伸をした。(となるとやはり、本部勤務の白雪さんか、艦隊運営特化艤装の大淀さんが旗艦であることが正しいはず。如何に幾多の護衛任務で実績があるとはいえ、今回の作戦で旗艦となる意味は…)「おい」「……!?」 4

2015-06-09 20:04:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

思案の沼に沈んでいた不知火を、現実に引き上げる一声。不知火はハッと顔を上げた。不知火の前方に居た若葉が、振り向いて声を掛けたのだ。「心此処に在らず。と言った感じだな」若葉は訝しげに不知火に問う。言外に滲む「今は作戦行動中だ」という忠告に、不知火は少なからず狼狽えた。 5

2015-06-09 20:05:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「い、いえ。済みません」不知火は自身の非を認め、謝罪した。若葉は僅かに不知火の瞳を見た後、視線を外して前を見た。自分達の脚部艤装が立てる白波の音が、ゼンめいて不知火のニューロンに染みわたる。「何を考えているかは大凡分かる」暫しの沈黙の後、不意に若葉が呟いた。 6

2015-06-09 20:11:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「分かる、とは?」思わず不知火は聞き返した。「今回の旗艦人選」短く若葉は切り返す。「何か知っているのですか?」不知火は、若葉の言葉に食いついた。食いつくに足る確証があった。若葉はリカルドの艦隊麾下の艦娘だ。何らかの情報を知っているのではないか、と不知火は期待した。 7

2015-06-09 20:13:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、続く言葉は不知火の期待に応えるものではなかった。「いや、何も知らん」不知火は内心落胆した。「だが」若葉は言葉を続ける。若葉は一言一言は短いながらも、多弁なのだ。「大淀と白雪が異論を挟んでいない」「それは・・・そうですが」「なら、彼女たちを納得させる理由があったという事」 8

2015-06-09 20:14:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そうなのでしょうか?」不知火は内心首を傾げていた。リカルド・ベレンゲル。鹿屋随一の武闘派提督を、不知火はそこまで信用していなかった。「そうなんだろうさ」若葉は改めて不知火を振り向いた。その口元にはニヒルな笑みを浮かべていた。「少なくとも、あの提督は我々に無茶はさせんさ」 9

2015-06-09 20:17:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そう、ですか?」不知火は少しばかり驚いた。どうやら、配下には信頼されているらしい。「納得できんなら後で聞けばいいさ」前を向けば艦隊の前方により黒い瘴気の塊が聳え立っていた。不知火はそれを見上げ、気を引き締める。ここより先は深海棲艦の縄張り。この海域を支配する棲姫級の根城。 10

2015-06-09 20:20:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ええ、あとでたっぷりとお聞きしますよ」言葉と共に、不知火は感情をフラットな状態に切り替える。当面の疑念の解明は後回しだ。今はイクサを生き延び、敵を沈め、作戦を達成することを考えるのみ!同時に、先頭の春雨が声を上げ号令する。「突入します!総員第一種戦闘配備!」 11

2015-06-09 20:22:51
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