「クイックリー・アズ・アローズ、サイレントリー・アズ・イン・アンブッシュ」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

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◆与太話◇ ◆望まねばミュート◇

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「クイックリー・アズ・アローズ・サイレントリー・アズ・イン・アンブッシュ」

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(これまでのあらすじ) 「トラック泊地強襲サレリ。救援ヲ求ム」各地の鎮守府にこの様な文を携えた艦娘が、負傷した状態で辿りついていた。トラック泊地は通信施設を占領され、周辺海域を潜水艦の大軍に包囲された危険な状態に陥っていたのだ。

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この文を受け取った一人であるブイン基地元帥はただちに反攻作戦を決行。その第1段階として、周囲の潜水艦群掃討と通信施設奪還作戦が実行された。こうして、冬の大規模作戦は深海棲艦の侵攻によりなし崩し的に始まったのだった。

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早朝午前4時。太陽も昇り切らぬ程の時間に、北太平洋を駆ける複数の高速小型艇の姿在り。船艇には「鎮守府所属」「ブイン基地」の文字が極太ミンチョ体で威圧的に描かれていた。この船団はブイン基地所属の艦娘運用高速小型舟艇「さつや型」である。船団は矢の如く、トラック諸島へと突き進む。 1

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「作戦を説明する」さつや型1番艦「さつや」艦内に於いて、5名の提督と6名の艦娘が海域図を取り囲み、ブリーフィングが始まっていた。「我々は現在トラック泊地に向け急行している。現在の船速で約10分で作戦海域に到着することになるだろう」今作戦の指揮官アーロン少将が海域図を指差す。 2

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「我々は敵潜水艦群を突っ切り、トラック泊地港に入港。艦娘はそのまま「さつや」達を護衛しつつ対潜戦に突入。提督達は第1、第2、第3小隊に分かれてトラック泊地の奪還を行う。我々第1小隊は鎮守府機能の回復と生存者の確認を目標とする」アーロンは一旦言葉を区切り、提督と艦娘を見やる。 3

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「質問は？」「他鎮守府からの戦力派遣は？」アーロンの右手前に座っている桂大佐が問う。「我々の様にトラックからの脱出者から文を受け取った者は既にこちらに戦力を送っているようだが、何れも我々より遠い。早くて半日だろうな」アーロンは淡々と答える。「半日、我々だけか」桂が顔を顰めた。 4

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「トラックの状況如何では、そうなるだろうな」桂の向かいに座るアッワリ中佐がそう呟いた。「トラック泊地内の現状は？」黒と緑の鎧に身を包んだロダン少佐が質問した。「我々が保護した阿賀野の情報が確かなら、全員一カ所に集められているらしい」「集める？」アッワリは思わず問い返した。 5

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「深海の奴等がか？」「恐らく再現の都合だろう」アーロンは己の推測を述べた。「奴等が自身が勝者としてのトラック空襲を再現したいのならば、敵が必要だ。形式上でもな」「そしてその敵は」アーロンの言葉を、今まで押し黙っていたリカルドが引き継ぐ。「無力化されていても構わない」 6

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「その通り」アーロンは頷いた。「今回の作戦が艦娘は元より、我ら提督側の戦力も求められる理由がこれだ。陸に上がった敵も排除するには艦娘だけでは頭数が足りん」アーロンは改めてその場にいる全員を見渡した。そう、ここに集められた提督は、アーロンも含め全員が鎮守府の常人戦力であった。 7

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CQCの達人アーロン。剣道の高位有段者桂。アサシンの系譜たるアッワリ。そして、ハンターであるロダンとリカルド。第2・第3小隊もこれに匹敵する戦力が用意されていた。『もうすぐ作戦海域です』「さつや」操縦者からのアナウンスが室内に響く。「総員戦闘準備！」アーロンが号令した。 8

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号令と同時に、提督と艦娘達が起立する。アーロンは力強く、鼓舞するように作戦の開始を高らかに告げた。「トラック泊地を奴らの好きにさせてはならぬ！総員、暁の水平線に勝利を刻むべし！」 9

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――― 10

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KBOOOM！KBOOOM！KBOOOOM！「さつや」達を狙った潜水艦の魚雷が岩礁などにぶつかり爆発する。小型で小回りの効く「さつや」型は悠々と魚雷を避け、トラック泊地港を目指す。『間もなく、港に着きます！ですが陸上にリ級が！』操縦者が叫ぶ。「任せろ」アーロンが船首に立つ。 11

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アーロンは大型対物ライフルを構え、陸上にいるリ級に狙いを定める。KBAM！対物ライフルの弾丸で、リ級の頭部がトマトめいて吹き飛ぶ。「今の内に港に！」『了解！』地上戦力撃破の隙を突き、「さつや」達は続々と港に到着し、艦娘と提督が「さつや」から降りる。 12

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頭部を吹き飛ばされたリ級は、頭部を復元しながら起き上ろうとする。「イヤーッ！」その足をリカルドが掴み、そして！「イイヤアアアーッ！」海上に向け、投擲した！「イヤーッ！」空中を回転しながら飛ぶリ級を大淀が撃ち抜く。深海棲艦は通常武器で倒すことができない。祓えるのは艤装のみ。 13

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爆発四散するリ級を背に、リカルドは泊地施設内に、大淀は洋上の潜水艦群に突撃した。「何か言わんでもいいんで？」リカルドに並走し、ロダンが問う。「いらんさ」リカルドは兜の下で不敵に笑う。「お互い戦士だ。そして俺が全力で口説き落とした女だ。逆に無粋さ」「そう」ロダンは閉口した。 14

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「お熱いことで」霊的処置を施されたナイフを両手に持ち走るアッワリが冷やかしの言葉をかける。「これから戦闘だというのに余裕よな！」居合の構えを維持し、桂が先行する。アーロンは4人の少し後ろを対物ライフル片手に走る。やがて、彼らの眼前に施設の入り口とそれを守るツ級の姿が見えた。 15

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「ツ級とは、厄介よな！」桂はニヤリと笑う。ツ級は入り口に迫る5人を視界に入れると、その巨大な良腕に内蔵された5インチ連装両用莢砲を撃つ！KBAM！KBAM！KBAM！5人は切り払い、または回避し、散開する。「仕掛けるぞ！」「おう」桂とアッワリがツ級に肉薄せんとする。 16

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ツ級は迫る二人に対し砲撃を行わんとしたが、右腕に微かな違和感を覚えた。右腕の魚雷付近に、楔形弾丸が数発突き刺さっているのだ。KBOOOOOM！ツ級が訝しむよりも早く、楔形弾丸は爆発した！「へっ」神在月を構えたロダンが嘲笑う。「凄まじいな」アーロンは徹甲榴弾の威力に驚愕する。 17

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徹甲榴弾の爆発が魚雷に誘爆し、ツ級の右手と魚雷発射管が吹き飛ぶ。爆破の衝撃でたたらを踏んだツ級は、迫る桂に対応できなかった。「イヤーッ！」繰り出された必殺の居合が、左腕の付け根を切り落とす！同時に、アッワリのナイフが、静かにツ級の両足を切断した。ツ級は横倒しに倒れる。 18