自我を持たぬ狂気

戦艦レ級の物語
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【自我を持たぬ狂気】その一

2015-02-17 23:06:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜横須賀〜 横須賀に作られた発着場に、一台のエアシップが降り立った 航空技術が発達した現在では旅客機よりも手軽で短い時間しかかからないリパルサークラフトによる移動が一般化していた 宿毛湾司令部所属の瑠奈花司令官と秘書艦の吹雪は、大本営からの招集を受けて横須賀へとやってきた

2015-02-17 23:06:54
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜横須賀鎮守府・エントランス〜 吹雪「大本営から直々に招集司令が来るなんて何があったんでしょうね?」 瑠奈花「さあね…だが、何か不穏だ。嫌な予感がする。よからぬことが起こらなければいいが」 二人は他愛ない言葉を交わしつつ会議室を目指した

2015-02-17 23:07:42
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「失礼します」 瑠奈花と吹雪は会議室へと足を踏み入れる そこには既に軍を統べる元帥達が揃っていた 「よく来てくれたな、瑠奈花君。長旅ご苦労だった」 顔ぶれの中には瑠奈花と親しい門川龍興の姿もあった。だがそれ以外は知らない顔だ

2015-02-17 23:09:01
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門川「早速だが本題に入る。南方海域は知っているね?」 瑠奈花「ええ、何度か任務で向かったことは」 「その南方海域で不可解な事件が起こっておる。付近を通過した輸送船が消えてしまったのだ。忽然とな」 瑠奈花「消えた?」

2015-02-17 23:09:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「失礼、消えたとはどういうことです?深海棲艦に襲われて沈んだのですか?もしそうなら護衛の艦娘は」 門川「護衛はつけていた。だが彼女ら諸共、恐らくは沈んでしまったものと思われる」 瑠奈花「そんな馬鹿な。艤装のセーフティ機能が働けば少なくとも健在状態からの轟沈はありえない」

2015-02-17 23:10:45
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「例えセーフティ機能が働こうと、轟沈する可能性はある。逃げる間もなく艤装ごと破壊されてしまえばおしまいだ」 瑠奈花「しかし、今使われている艤装は早々破壊されることのないように頑丈にできているはず。艤装をまるごと破壊するなどありえるでしょうか」 「だから、不可解なのだ」

2015-02-17 23:11:34
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門川「偵察機を飛ばしてもみたが、妨害電波で映像は残らず、挙句帰ってきた機体は一機もない。逆に言えば、あそこには何かがいることを決定づけたという証にもなる」 「お主に頼みたいのは、その脅威の正体を暴くことだ。この探索には大いなる危険が伴うがの」

2015-02-17 23:12:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「もしまた南方海域が奪われるようなことになれば、我々人類は窮地に立たされる。これは重要な任務だ」 瑠奈花「…わかりました。引き受けましょう」 吹雪「司令官…」 瑠奈花と吹雪は元帥達に一礼すると、会議室を後にした

2015-02-17 23:13:13
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

門川「…上手くいくでしょうか?彼には無理をさせてしまった」 「彼ならば必ず成し遂げてくれるはずだ。以前も我らは彼に救われた」 「彼は沖ノ島を救った英雄だ。彼には風を引き寄せる力がある。問題はないでしょう」 「ふむ…」

2015-02-17 23:13:53
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〜横須賀・市街地〜 吹雪「…そんな危険な海域を私達だけで調査しろなんて!大本営は私達を殺す気なんじゃないですか!?」 瑠奈花「抑えろ吹雪。連中に聞かれたら首が飛ぶぞ」 吹雪「でも私…納得できません!」

2015-02-17 23:15:24
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「我々提督と艦娘の役目は、海を駆け、平和と秩序を守ることだ。再三言っているだろう」 吹雪「それはわかってますけど…って司令官、どこに行くんですか」 瑠奈花は道を外れ、裏路地に入ろうとしていた 瑠奈花「一杯やりにな」 吹雪「もう!」

2015-02-17 23:19:11
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吹雪「私お酒は飲めませんよ?」 瑠奈花「ミルクでも頼んだらいい」 吹雪「司令官、やっぱりさっきの任務はキャンセルしましょう。私達には…!?」 瑠奈花「…私も感じた」 瑠奈花はライトセーバーを、吹雪は護身用の拳銃を構える

2015-02-17 23:20:36
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

二人は囲まれていた。黒いフードに身を包んだ人物が三人。男か女かまではわからない 瑠奈花「…私は二人をやる。もう一人は任せた」 吹雪「了解です!」 艤装が使えない今、吹雪は少しばかり強い程度の一般人でしかない 私が守らなければならない

2015-02-17 23:21:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は片方の黒フードの人物を蹴りとばすともう片方の手首を狙い剣を振るった。しかし、緑の光刃はいとも容易く受け止められてしまう マズイな。と彼は直感的に感じた。フリク合金製の小手か何かをつけているのか 黒フードは突然、腕をこちらに向けてきた

2015-02-17 23:23:04
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外套の影から現れたのは鈍い輝きを纏った8inch三連装砲だった 瑠奈花「深海の艤装だ!気をつけろ!」 吹雪に声が届いたかはわからない 瑠奈花は砲撃を避わすと、曲芸めいた動きで敵に迫った。躊躇している暇はない。心臓を狙う

2015-02-17 23:24:11
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花の誤算は、敵がライトセーバーの攻撃に思いのほか耐えたことだった。一人を相手にしている間に、もう一人にスタンガンを浴びせられてしまった。 司令官!…自分を呼ぶ声が聞こえたが、応じるほどの余裕はなかった。彼は力なくその場に倒れ込んだ

2015-02-17 23:25:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…私は二人をやる。もう一人は任せた」 「了解です!」 吹雪は拳銃を構え、謎の人物と対峙した 相手の正体がわからない以上、無闇に撃つわけにはいかない 吹雪は脚を狙った。こういう時はまず動きを封じるのが先決。散々教わってきたことだ

2015-02-17 23:26:27
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

しかし銃撃は弾かれてしまった。鎧のようなものを着ているのかもしれない 吹雪が対処に悩んでいると後ろから声が聞こえた 瑠奈花「深海の艤装だ!気をつけろ!」 次の瞬間、背後からの砲撃が顔を掠め、吹雪は態勢を崩す

2015-02-17 23:29:02
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その隙を逃さず、敵はこちらへ襲いかかってきた 吹雪はなんとかそれを避けると、思い切り腹部を殴った …が 吹雪「痛っ!?」 不幸なことに、敵は本当に装甲をつけていたようだ。吹雪はすぐに飛び退くと、拳銃を構えた。足と体がダメなら、顔だ。敵が深海棲艦なら容赦はいらない

2015-02-17 23:30:09
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

後ろで敬愛する上司のうめき声が聞こえた。吹雪は引き金を引く手を止め、後ろを振り返る 吹雪「司令官!」 吹雪はすぐに駆け寄ろうとしたが、敵に阻まれてしまった。もうどうしようもできない。吹雪は静かに銃を地に置き、降伏した

2015-02-17 23:31:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜???〜 瑠奈花(…なんだ…ここは…私はどうなった?) 瑠奈花の意識は昏迷していた。彼は少なくとも自分が生きていることしか把握できなかった (じめじめする…気分が悪い…吹雪はどうなった?ここはどこだ?) ゆっくりと目を開けるが、薄暗くてよく分からない

2015-02-17 23:33:16
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??「気がついた?」 瑠奈花(誰だ?女性の声だ。どこかで聞いたことが?) 瑠奈花「…すまない、私を叩いてくれないか?水をかけてもいい。ああ勘違いするな、そういう趣味じゃない。意識が」 言い終わる前に平手打ちを受けた。瑠奈花の意識は一瞬で覚醒した

2015-02-17 23:34:29
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??「これで目が覚めた?“司令官サマ”?」 瑠奈花「君は…離島棲鬼か?」 目の前にいたのはかつてピーコック島で対峙した離島棲鬼だった。瑠奈花は両手両足を椅子に拘束されていた 瑠奈花「なんの真似だ?SMがご所望ならあまりいい趣味とは言えないな」

2015-02-17 23:35:32
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離島棲鬼「あんたは油断ならないからね。どう足掻いても抵抗できないようにしっかり拘束させてもらったわ」 戦艦棲姫「すまないな。危害を加えるつもりはなかった」 瑠奈花「戦艦棲姫…君までいるのか」 離島棲鬼「何かおかしいかしら?彼女は私の従者よ」

2015-02-17 23:36:29