【この地上のどこかで】福間健二 #2factory81

どう書いていいかわからないという状態が続いている。言葉がやれることは、いろんなふうにある。それに対して、たとえばもうリアリズムはだめだとか暗喩は終わりだとか言って、可能性を狭めていくことに、ぼくは大反対である。でも、そうなると、いつも方向的に引き裂かれていることになる。やりたいのは、ジョイス以降と荒川洋治以降を同時に生きること。あるいは、未知に向かうのと、簡潔・飾らないというのを、同時にやりたい。 9の「プルーストは何が足りないのか」は、スロヴェニアの詩人トマジュ・シュラムンの作品にヒントを受けて書いた。それがなんだと言ってもいい。プルーストなんかにびくつくなというメッセージを勝手に受け取った。 8と9にボブ・ディランを出した。で、音楽は、ズバリ、若い若い彼の「ミスター・タンブリンマン」。 https://www.youtube.com/watch?v=OeP4FFr88SQ
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福間健二 @acasaazul

女性の声。迂回してください。どっちに行けばいい。どちらでも。でも行かなくてもいいのだ。彼女は自分の体を大切にしていない。毎朝マッサージとかしていない。働く人たちが見えてきた。青い制服。青い空。この仕事はいつ終わるのですか。(この地上のどこかで1)福間健二 #2factory81

2015-02-10 10:18:12
福間健二 @acasaazul

真夜中、待っていた野菜の痛んだ部分をとりのぞいて新しい箱に入れた。地下室。上からおりてくる大量の焼きそばに紅ショウガをのせてパックに詰めた。ナイフと挟む道具と手。砂の色の、夜明け。音のしない線になり、それから動物に戻ってパンを食べた。(この地上のどこかで2)#2factory81

2015-02-11 10:53:17
福間健二 @acasaazul

戻れない場所。いちばん大切なもの。けっして譲ることのできないもの。関さんのそれは決まった。彼女はそれを守り、それに守られている。ぼくのそれは何をしているのか。地下室にはない。風しか敵のいない川岸に立って、先週の雪に足をすべらせている。(この地上のどこかで3)#2factory81

2015-02-12 11:32:02
福間健二 @acasaazul

洗濯バサミじゃないとしたら、だれかを笑わせたいアクセサリーだろうか。光る金属の、撫でることも擦ることもできない指たち。この地上のどこか、としかわからない地図の上におかれて。「寝てない、考えている」の僕と彼女。ボニーとクライドじゃない。(この地上のどこかで4)#2factory81

2015-02-13 11:13:16
福間健二 @acasaazul

自分こそ危ない人が「気をつけなさい」と言ってくれる。ありがとう。もっとだ。もっと崖っぷちだ。折れた枝を集めて何をつくるのか。花輪はできない。心よりも先に体に逃げられた人生から何を救出できるかということ。金色の指、Jマートで売ってたよ!(この地上のどこかで5)#2factory81

2015-02-15 12:15:58
福間健二 @acasaazul

可愛い娘さん、気をつけなさい。「死」から報酬もらって並ぶ制服が順番にキスしようとやってくる。ゴージャス、よけいなものがあるということ。ぼくは指を使わない指笛が吹ける。これがよけいだ。きみの指は地図の上をセクシーに動く。それがよけいだ。(この地上のどこかで6)#2factory81

2015-02-16 11:58:02
福間健二 @acasaazul

五十年、六十年が、あっというまにすぎて、みずうみも砂漠もそして無計画に広がる街も黙らせる夜の声が聞こえる。もうすぐ壊されるアパートの台所。何ができるのか。錆びた管がむきだしだ。できるよ、本気の麻婆豆腐だ。辛い、ほんとうに辛い。むせる。(この地上のどこかで7)#2factory81

2015-02-18 12:14:56
福間健二 @acasaazul

自分自身を知りなさい。そう言われたと思った。終電に乗り遅れ、感傷的なポケットから出した血の足りない釘。感謝を知らない指を許した。その後遺症がまたぶりかえして、 ジングル、ジャングル、ボブ・ディランの朝だ。ついてこいとは言われないけど。(この地上のどこかで8)#2factory81

2015-02-19 09:49:10
福間健二 @acasaazul

もう一歩踏み込む。それができなくて、曖昧な波紋。テーブルのミルクティーにも。そして嘘の山。それは何から生じたのか。プルーストは何が足りないのか。わかっていても、きみは小さな女の子になって壊れる。久しぶりのハイライト。笑いつづけること。(この地上のどこかで9)#2factory81

2015-02-20 08:47:55
福間健二 @acasaazul

何も見ていない旅。何も拾えない現場に立ち、自分のなかの悪い羊飼いを殺さなかった。大地、光、北風、老年。そして大事なことをいくつも忘れていた。次にきみと会うときの目印。生まれる前からの、傷。そのために生まれながらそれを迷子にしていた。(この地上のどこかで10)#2factory81

2015-02-21 10:04:48