#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#1～#2

春魔解丼 @vespiking

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さながら冷凍庫めいて、氷の張り付いた執務室。壁際にしゃがみ込む山城は荒い息を歯で食い縛り、砲塔から溢れ出す冷気を弾丸状に丸め、放つ。「イヤーッ！」「イヤーッ！」眼鏡の艦娘は息一つ切らさず、これを易々と鞭で弾く。閃光と共に弾丸が破裂する。「ハァーッ！ハァーッ！」 #KZNPLN

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「ほう、なるほど。まだ刃向かうのですね。もう少し、躾が必要でしょうか」眼鏡の艦娘は軍事用教鞭をぴんと弾き、動きの鈍った山城を打ち据える。「イヤーッ！」「ンアーッ！アババババーッ！」強烈な閃光が走り、火花と共に山城の船体がガクガクと痙攣する。山城は敵を睨み付けた。 #KZNPLN

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「ここは神聖なる領域ですよ？貴女のような無粋な軍人が、土足で踏み込んでいい場所ではない」山城は血混じりの唾を吐く。「聞き捨てならない噂を聞いたのよ。強制調査よ。鎮守府には権限がある」「道義上、それはどうなんでしようね？」「ウッサイ！知るか！」 #KZNPLN

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「そうですか。まだお解りいただけない」眼鏡の艦娘は、衰弱した山城の首元に教鞭を添える。「……あの噂は本当なの？飛龍は！」「さあ？何の事でしょう」教鞭のスイッチが最大まで押し上げられた。「アバババババーーーッ！」山城は白目を向いて痙攣し、失禁して動かなくなった。 #KZNPLN

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「ドーモ、香取＝センセイ」虚ろな顔の駆逐艦娘が、氷の執務室にエントリーする。「ドーモ、磯波＝サン。ちょうど良かったわ。この大きな鉄くずを、解体場まで運びたいの。睦月＝サン達を呼んできてくださる？」駆逐艦娘は首肯した。「ハイ、わかりました」「いい子ね。フフ」 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#1 #KZNPLN

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奥ゆかしき古都マイヅル・シティを見守る大聖堂、マイヅル・カテドラルの朝は早い。「ドーモ、如月＝サン。今日もいい天気だね」「ドーモ、睦月＝サン。あら、本当だわ。神様に感謝しないといけないわね」重工業エアロックで重金属酸性雨を阻むマイヅルの空は、今日も蒼く澄み渡る。 #KZNPLN

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「まあ、睦月＝サン。如月＝サン。ドーモ」「あ！ドーモ、初霜＝サン」「ドーモ、今朝もご機嫌麗しゅう」睦月と如月は深々とオジギした。「良い天気ですね。今日は軍人さんが来られるようですよ。皆さん、粗相のないよう注意して下さいね。では」初霜は2隻に微笑みかけ、歩み出した。 #KZNPLN

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「初霜＝サン、今日も素敵だわ」「そうだね。私達も早く、初霜＝サンみたいになりたいわね」「その時は一緒にね、睦月＝サン」「うん、そうだね如月＝サン。ユウジョウ！」「ユウジョウ！」睦月と如月はしばし視線を合わせ、互いに微笑んだ。「さあ、食堂に参りましょうか」「うん！」 #KZNPLN

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2隻が食堂に入ると、駆逐艦らが高揚した様子でざわついていた。先程初霜の言っていた、軍人の話題のようだ。「軍人の駆逐艦さんが来るらしいわ」「コワイ人なのかな」「大丈夫だよ。きっと優しい人だよ」「そうだね、楽しみだね」「コラコラ、お食事中は静かにしないといけませんよ」 #KZNPLN

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食堂に優しい声が響き、皆が一様に口を閉じた。練習巡洋艦の香取だ。「ハイ、ゴメンナサイ」「ハイ、よろしい。今日来られる軍人さんは、人探しの聞き取り調査に来られるようです。皆さん、もしすれ違ったらアイサツすること。何か尋ねられたら、快く協力して下さいね」「ハイ！」 #KZNPLN

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朝食を終え、朝の礼拝と簡単な座学を済ませた睦月と如月は、庭園の噴水で身を寄せ合い、談笑を楽しんでいた。そこへ、見慣れぬ艦艇2隻が歩いてくる。睦月らはこれが件の軍人さんである事を察し、すくりと起立してアイサツした。「ドーモ、ご苦労様です！」「ああ、ドーモ。時雨です」 #KZNPLN

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「ドーモ。夕立です」黒髪の軍人に続き、金髪の軍人もオジギする。「いい所だね。とても綺麗なアトモスフィアだ」「ハイ、ありがとうございます！」時雨はにこりと微笑み、本題を切り出す。「僕たちは、とある艦娘を探してるんだ。磯波という駆逐艦を知らないかい？伝聞でも良いよ」 #KZNPLN

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「磯波＝サンですか？それなら……」如月は少し思案し、「……知らない艦です。ご協力できず、申し訳ありません」答えた。「ああ、いいんだ。軽い目撃情報があったものでね。僕たちは暫く、ここに滞在するから。もし何かあったら、何でも言ってよ。僕の居場所は香取＝サンに聞いてね」 #KZNPLN

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「ハイ！宜しくお願いします！」睦月は元気よく言った。「ぽい！よろしくね！」夕立も元気よく応えた。「じゃあ、僕らは他をあたる事にするよ。おしゃべりを中断させちゃって、ごめんね」「いいんです。困った事がありましたら、何でも言って下さいね」「うん、ありがとう」 #KZNPLN

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「ふう、如月＝サン。私、びっくりしちゃった」時雨と夕立が去ったのを確認し、睦月が呟いた。「如月＝サンが、悪い子になっちゃうんじゃないか、って」「うふふ、そんな訳ないわ。だって、ミユキ様に怒られちゃうもの」「そうだね。黙ってないとね。飛龍＝サンが、来るもんね」 #KZNPLN

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「如月＝サンは私を置いて、ミユキ様に怒られたりしないよね」「ええ、もちろんよ。睦月＝サンも、飛龍＝サンに怒られないようにしないとね」「そうだね。磯波＝サンを護ってあげなきゃね」「連れて行かれないでね」「ずっと一緒だよね」「ええ、ユウジョウ！」「ユウジョウ！」 #KZNPLN

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ブワーン！美しい庭園に、警報が響いた。「あら、何かしら」「確か、今日は大聖堂で悪い人を『解体』する日だよ」「まあ、恐ろしいわ」「大丈夫だよ。解体場の装甲は厳重だから、もし暴れても居住区は安全だよ。この前の戦艦も、何もなかったよ。安心して」睦月は如月を抱き寄せた。 #KZNPLN

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「ヘ、ヘヘ。さあて。来たかな？」全身を拘束具で封じられた、赤い髪の軽巡洋艦が『解体場』を歩む。防弾ガラスの奥には、3人の執行人妖精。どれか一つが本物の、絞首台のスイッチを同時に押す係だ。『オイ、サッサと歩け』「アイ、アイ」軽巡洋艦は歩く。 #KZNPLN

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『ではこれより。放火殺人、強姦殺人……その他多数の重犯罪により、軽巡洋艦鬼怒。貴艦の解体を執行します。何か、言い残す事やハイクはありますか？』「ネエ、何アレ」囚人、鬼怒はボソリと呟いた。『何？』「アレだよ、アレ。あのデカイ猫の像と、ドゲザしてるオネーチャン。誰？」 #KZNPLN

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執行人らは訝しんだ。解体場には鬼怒の立つ絞首台以外、何もないからだ。『何をワケのわからん事を。気でも狂ったか』だが鬼怒は邪悪な視線を、皆が言う『虚空』に投げ続けた。「アーッ！アーッ！ゴメンナサイ！……ミユキ様！」ドゲザ女の悲鳴。「……ヘヘ、来た、来た来たァ……」 #KZNPLN

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解体執行のスイッチが押され、ガクン！鬼怒は首をロープでガクリと折られた。『……解体完了。ウゲー、やはり慣れないな』『全くだ。イヤハヤ』『……アレ？』執行人のひとりが、異変を感じ取った。直後。ドスン！ロープに吊るされた筈の鬼怒の死体が、絞首台に落ちた。 #KZNPLN

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「来た、来た来た……」執行人は慌てて絞首台を凝視する。ロープが……焼け落ちている！？『な、何だ！』『何が起きた！？』『オイ！生きてるぞ！ヤバイ！』『大丈夫だ！防弾ガラスは……』直後。絞首台が一瞬にして焼け落ちた。「アハハ、アハハハ！来た！来た来たァ！」 #KZNPLN