パルマダ

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芝村裕吏 @siva_yuri

ユーイチローは言葉がわかるかのごとく、渋い顔で歩いている。その目禁止と私は顔に張り付いた。  ユーイチローは昔通り、黙って私を無視した。いや、持ち上げてどかした。

2015-04-16 15:43:12
芝村裕吏 @siva_yuri

今度はランチァ。リーチの差を無視するように軽く横に動いてランチァの槍のように伸びた腕を切断、そのまま引っ張って引き寄せて左手の短刀で刺殺した。  鮮やかな、そして見たことのない殺人の技術。これが古いジャポネの力? ランチァが人間かは分からないけれど。

2015-04-16 15:44:00
芝村裕吏 @siva_yuri

これまで歯が立たなかった敵に対して圧倒的な力の差を見せる、ユーイチロー。我々イタリア軍は、いや、人類はなんだったのだろう。間抜け? それとも……

2015-04-17 23:26:09
芝村裕吏 @siva_yuri

「生まれてくるんだ。人から生まれる人でなきもの。人の種の危機に人が産み分けて生まれてくる、危機と本来戦うもの。災厄を狩る災厄、パンドラの箱の底を揺りかごに、苦難を餌に、絶望を故郷に、化け物と呼ばれるために生まれてきた。明日が来たと告げに遠くより来たる騒々しい足音」

2015-04-17 23:26:43
芝村裕吏 @siva_yuri

違うわ。あんたは根暗のユーイチローよ。サッカーも女の子にも興味がない、猫探ししてた小学生よ。  にゃあにゃあ。 「やっぱり人語で喋れよ」  いやよ。だって人間嫌いなんでしょ。

2015-04-17 23:27:18
芝村裕吏 @siva_yuri

ユーイチローは私を肩に乗せて今は潰れた修道院の屋根の上からパルマダの街を見下ろした。  静かな街並み。まるで何も起きていないかのよう。いや、実際に何も起きてないのだ。スパーダ達をユーイチローは狩りつくしてしまった。

2015-04-21 15:06:26
芝村裕吏 @siva_yuri

特になんの感慨もなく、背を向けて歩き出すユーイチロー。私は咄嗟に人間になって、裸で背中を抱きしめた。  これからどうするの。 ーー旅に出る。  どこにいくの。 ーー猫は助けた。次はもっと強い敵のいる所に行くさ。  私を置いてくと言ったら顔を引っ掻いておしっこしてやる。

2015-04-21 15:07:25
芝村裕吏 @siva_yuri

ーーなんでついて来るんだよ。  思い出せないくらい大昔に何かあったのよ。きっと。 ーー覚えてないなら、俺に拘らなくてもいいんだ。  私は耳をはむはむした。ユーイチローが難しい顔をしている。  こういう時は顔を赤くするものよ。 ーーついてくるな。  嫌よ。やっと会えたんだから。

2015-04-21 15:08:24
芝村裕吏 @siva_yuri

ーー覚えているのか。  なんにも?  あ。昔サッカーに誘ってもデートしようと言ってもすげなく無視されたわ。 ーー俺の机ずっと蹴ってたろ。  昔の事をぐだぐだ言う奴は好きじゃないわ。 ーー猫め。  猫ですゆえ。

2015-04-21 15:09:09
芝村裕吏 @siva_yuri

真上に広がる空の雲が真円に切り取られている。私は猫になってユーイチローにしがみついた。 ーー爪たてるなよ。  にゃあにゃあ。  彼は虚空に一歩を踏み出した。 Aの魔法陣v5 第一テスト終了

2015-04-21 15:11:49
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