英語も日本語も話せれば教えられるってもんじゃない

世間の人々が素朴に信じている語学教師のイメージには多くの誤解が含まれている。言語教師・語学教師にはそれ相応の専門性がありますぜという話のまとめです。
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kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

ちょっと本業関連。語学教師に対する一番基本的な世間の誤解は、話せるなら教えられるだろうというもの。これはわりとどこの国でも共通の認識で、ここから派生していろいろな誤解が生まれています。

2010-12-13 23:35:59
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

語学教師にまつわる世間の誤解は、たとえば、1)その国に行けばおぼえてしまうようなものに教師などいらない。2)言語学的、文化的知識があれば、アカデミックな語学教育はできる。3)語学教師は専門職ではない、などなど。そこで、語学教師は一般社会からも学術社会からも比較的冷遇されています。

2010-12-13 23:36:02
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

その国に行けば言語はおぼえてしまう。というのは一面正しいと言えます。その人の語学センスにもよりますが、その国に飛び込んで自然に話せるようになる人もいます。その人達にはたしかに語学教師など必要ありません。しかし人によってはひどい訛りや乱暴なことばが身について直らないこともあります。

2010-12-13 23:36:05
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

言語知識、文化知識だけあれば言葉が教えられるという誤解は、水泳理論だけ教えて水に放りこむような教育につながります。実技不要というようないびつな状況は、習った外国語を話せない人を大量に生み出します。その反動として「話せる」ネイティブを雇うのですが、話せても教えられるとは限りません。

2010-12-14 15:09:10
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

語学は専門職ではないという誤解は、主に大学機関での語学教師の冷遇を生んでいます。言語学その他で専門知識はずばぬけているのに、教えるとなるとからっきしの人材を大学機関はけっこうかかえています。その一方で教えることに関するスキルがずばぬけていても正規雇用にはなかなか至りません。

2010-12-13 23:36:10
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

言語を教えながら研究する「アクション・リサーチ」という方法で論文の出版点数を稼ぐ手法もありますが、結局は研究と教育の二足のわらじを満足に履くことは難しく、大学でのポジションを確保したい人は研究に軸足を置き、教育からは遠ざかっていきます。

2010-12-13 23:36:13
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

しかし、言語教育には、言語が話せること、言語知識、文化知識、教育学知識があることの他に、学習者の心理を上手に把握して、リーダーシップを取り、あらゆる知識を総動員して、効率よく、理解しやすく、相手が満足するように教えていくスキルが必要で、そのスキルこそが語学教師の専門性なのです。

2010-12-13 23:36:16
kaz hagiwara(萩原 一彦) @reservologic

しかし、日本語教師でも、英語教師でも、その他の外国語教師でも、そのような「語学教師特有のスキル」を高度なレベルで保っている人はそう多くはありません。そのような人々に習った学生は幸運だし、またそういう教師たちはもっと厚遇されるべきだと思います。以上、ガラにもなく本業モードでした。

2010-12-13 23:36:18