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世界最初のタイムマシン小説『アナクロノペテー』

H・G・ウェルズ以前に書かれたエンリケ・ガスパール・イ・リンバウのタイムマシン小説『アナクロノペテー』(1887年)のあらすじの紹介および、それに関連したSF小説に対する考察。 読みやすいように自分でまとめてみました。
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カスガ @kasuga391
クリプトムネジアの恐怖・3 hirorin.otaden.jp/e414850.html ブログの論旨とは関係ないんだけど、上で山本弘氏が紹介しているエンリケ・ガスパール・イ・リンバウの『時間遡航者』ってのは、多分私がWikipediaで加筆したやつだな(自慢)。

http://hirorin.otaden.jp/e414850.html
 さらにタイムマシン自体も、ウェルズが世界で最初に思いついたのではない。1887年に、スペインの作家エンリケ・ガスパール・イ・リンバウが書いた『時間遡行者』という小説が最初だと言われている(ウェルズの『タイムマシン』は1895年の作)。

カスガ @kasuga391
El Anacronópeteの『時間遡航者』って訳題も私が付けたんだけど、実はこれ、あんまりいい訳題じゃなかったと後悔してる。
カスガ @kasuga391
Anacronópeteってのは、確かに「時間に逆行する者」の意味なんだが、これ、作中のタイムマシンの名前なので、『時間遡航機』か、固有名詞として『アナクロノペテー』の方が良かった。
カスガ @kasuga391
ところで今検索した限りでは、リンバウの『時間遡行機』あるいは『アナクロノペテー』のあらすじを詳細に紹介してる日本語のサイトは、まだ存在しないようだ。
カスガ @kasuga391
と言うわけで、せっかくの機会だし、『アナクロノペテー』のあらすじを紹介。なお、私が読んだのはスペイン語の原書ではなく、英語の抄訳版であることをお断りしておきます。 storypilot.com/fiction/gaspar…

『アナクロノペテー』英訳版PDF
http://storypilot.com/fiction/gaspar-el-anacronopete-english.pdf
『アナクロノペテー』スペイン語原文PDF
https://archive.org/details/elanacronpete00gaspgoog


『アナクロノペテー』のあらすじ紹介
カスガ @kasuga391
1878年のパリ万国博へ向かう乗り合い馬車では、ドン・シンドゥルフォ・ガルシア博士の発明した「アナクロノペテー」が人々の話題をさらっていた。「アナクロノペテー」とは、ギリシャ語で「時間に逆らって飛ぶ者」の意味である。
カスガ @kasuga391
アナクロノペテーは電気力により飛行する「キールのないノアの方舟」で、四隅に取り付けられた空気圧搾器で大気を除去しながら、地球の自転より17万5200倍も早く逆行することで、1日あたり480年の時間を巻き戻すことができる。 pic.twitter.com/A6qR1TVwGg
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カスガ @kasuga391
博士によれば、時間とはすなわち地球の自転による大気の積層作用であり、ゆえに地球を自転よりも速く逆行すれば、時間を巻き戻すことができる。博士はこの理論をガーゼを巻きつけたシルクハットで説明する。
カスガ @kasuga391
アナクロノペテーの一階には貯蔵室があり、それらの貯蔵物は物質の変化を防ぐ「ガルシア電流」により、時間の逆行で種に戻ることのないよう守られている。また、ガルシア電流は、搭乗者が若返って消滅するのを防ぐためにも使われている。
カスガ @kasuga391
さて、シンドゥルフォ博士がアナクロノペテーを発明した動機は、決して純粋な科学への愛のためではなかった。博士にはクララという両親を亡くした姪がおり、博士はこの娘ほども年の離れた少女に懸想していた。
カスガ @kasuga391
しかしながら、クララが愛しているのは伯父ではなく、軽騎兵の隊長を務める従兄弟のルイスであった。博士はクララをお付きの女中ホアニータと共にアナクロノペテーに監禁し、伯父と姪の結婚が許される時代へ拉致しようと目論でいた。
カスガ @kasuga391
また、博士の腹心の助手ベンハミンは、かつてマドリッドで購入した後漢の献帝の妃のミイラに嵌められた腕輪から、「永遠の命の秘密」の存在を知り、その秘密を我が物にせんとの野心に取りつかれていた。
カスガ @kasuga391
一方、ルイスはクララを助け出すため、部下の軽騎兵と共にアナクロノペテーに忍び込んでいた。それぞれの思惑を乗せて、アナクロノペテーはパリ市民に見送られながらシャン・ド・マルス公園から過去の時代へと出発する。
カスガ @kasuga391
1860年のテトゥアンの戦場に着陸したアナクロノペテーは、ムーア兵の侵入を受ける。博士がアナクロノペテーを高速で過去へ推進させることで、ムーア兵たちは子供に若返って消えてしまう。
カスガ @kasuga391
ガルシア電流の保護を受けていなかったルイスたち軽騎兵も幼児に戻り消滅する。恋人の運命を知ったクララは悲嘆に暮れる。一行は一度出発前日のベルサイユに帰還したのち、再び過去に向かう。
カスガ @kasuga391
やがて、ガルシア電流が食料庫の物資に及ぼした不変性のために、石炭は燃えず、砂糖は溶けず、パンは石のように固くなって食べられないことが明らかになる。一行はやむをえず、目的の中国の後漢時代へ向かう途中、いくつかの時代で食料を補充しに立ち寄る。
カスガ @kasuga391
15世紀末のカスティーリャでは女王イザベル一世にコロンブスを支援するよう助言する。696年のラヴェンナでは市民同士の抗争に巻き込まれる。最後に、アナクロノペテーはようやく博士とベンハミンの目的地である220年の中国河南省へ辿り着く。
カスガ @kasuga391
献帝に拝謁したベンハミンは、「永遠の命の秘密」と引き換えに未来技術を提供しようと申し出て、活版印刷された新聞やコンパスや黒色火薬等の品物を得意気に披露するが、それらは当時の中国では既にありふれた技術であった。
カスガ @kasuga391
しかし、クララに一目惚れした献帝は、クララと引き換えに「永遠の命の秘密」を教えようと提案する。逆らえば死刑であることをほのめかされ、一行はやむなくその提案を承諾する。
カスガ @kasuga391
その頃、アナクロノペテーの中では、かつてベンハミンがマドリッドで購入したミイラが1600年の時間の逆行によって蘇生していた。そのミイラは、つい先日献帝によって生き埋めにされた前皇后であった。
カスガ @kasuga391
一行と前皇后は、献帝とクララの結婚式の最中に反乱を起こすが、大臣の曹丕の策略により捕らえられる。しかし、突然に現れた弓兵部隊が「スペイン万歳!」の叫び声と共に献帝を射殺し、一行は解放され、クララは救出される。
カスガ @kasuga391
謎の弓兵部隊の正体はクララの恋人ルイスとその部下の軽騎兵たちであった。一行がベルサイユに帰還した時に再び実体化していたルイスらは、次の逆行の前に密かにガルシア電流を浴びていたのである。
カスガ @kasuga391
前皇后は、「永遠の命の秘密」へ通じる手掛かりである、西域人からもたらされた羊皮紙の地図を一行に示す。その地図には、ボンペイの皇帝ネロの石像の下に「永遠の命の秘密」があることが記されていた。
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コメント

gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2015-03-16 20:48:45
ここを参考に、ウィキペディア「タイムマシン」項目に、固有名詞としての『アナクロノペテー』という言葉の掲載、PDFへのリンク、「ウェルズは『未来にも行ける』との概念を創作した」などを追加させてもらいました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3  @kasuga391
冴吹稔@電子書籍出します @seabuki 2015-08-27 08:05:07
今読んでも面白そうなんだけどコレ。奇想天外!
カスガ @kasuga391 2015-10-15 23:36:27
hirorin0015 ども、こちらこそご本人にレスを頂けるとは光栄です!
しかのつかさ @sikano_tu 2015-10-16 13:01:36
これは面白そう。読みたい( • ̀ω•́ )✧
芦辺 拓 @ashibetaku 2015-10-16 18:27:02
ほんとにワクワクするような内容でご紹介には感謝のほかないですが、この作品には十分に奇想があり思考実験があり、SFでないから残らなかったということはないと思います、ひとえに英語に比べてのスペイン語のハンデであり、作者の知名度が明暗を分けただけで、ミステリでいえばスウェーデンのドゥーゼと英国のクリスティのようなものではないかと。
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