共鳴の話。

ヤシキト①[R-18]
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イフ@東都へ行こう @2_tnm

目の前で、若くて可愛い女の子が泣いている。 涙と鼻水が混ざって悲惨なことになっており、いつか体も融けてそのまま泥になってしまうのではないかと思った。 そう。 透明な、涙も、鼻水も、漏れ出る声も。 泥なのだ。 いくら泣き喚かれても、そんなものに、同情はできなかった。

2015-03-14 14:05:26
イフ@東都へ行こう @2_tnm

心が空っぽになった気分だった。 元々、何も詰まっていなかったのだと言われればそれまでなのだが。 受け入れられない現実を、何故か頭が理解していた。 ああ、十分、起こり得ることだ。むしろ。 いつかこうなると、思っていた。 「いつまで泣いてるん」 無表情に、目の前の泥を見つめた。

2015-03-14 14:11:42
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「ロジ、ロジ……」 お前が殺したんだよ、と。 その言葉ひとつで、この女を簡単に壊せると思った。 壊しても構わないと思った。 けれど。 「キトちゃん」 水を注いだコップを差し出す。 ああ、この女が。 自分たちの、希望だったのだ。

2015-03-14 14:16:26
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「水、飲み。あと塩。いい加減泣き止み」 「ぅ、っう、」 反応、なし。 聞こえていないのかもしれなかった。 「キトちゃん」 無理やり、腕を引く。 なんの抵抗もなくふらつく女に、じっとしていろと囁いた。 口移しで、水を飲ませる。

2015-03-14 14:20:38
イフ@東都へ行こう @2_tnm

あまりにもボロボロなその状態に、笑いすら漏れる。 今更、お前は泣くのかと。 捨て置いて。 逃げたくせに。 いなくなれば、そうやって泣くのか。 唐突に、怒りがこみ上げた。 女の肩を強く押す。あっけなく床に打ち付けられる体。 広がる、黒髪。

2015-03-14 14:25:13
イフ@東都へ行こう @2_tnm

冷静な自分が、頭の中で囁く。 その怒りは、目の前の女に向けていいものじゃない、と。 お前が勝手に理想を押し付けていただけだろうと。 感情的な自分が、心を支配する。 壊してしまえ。 元より、愚かな女だ。

2015-03-14 14:31:46
イフ@東都へ行こう @2_tnm

静かに、女に馬乗りになった。 どうしてやろうかと思案する間に、伸ばされる女の腕。 「ヤシ」 手が、首の後ろに回される。 涙に濡れた、その瞳で。唇で。 「抱いて」 ああ、また、そんなことを。 まだ、そんなことを。

2015-03-14 14:34:29
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「……自分には、恋人がおるやろ?」 新しい恋人が、と吐き捨てる。 「その恋人に、優しいしてもらったらええんちゃう?」 導かれるまま顔を近づけた。 唇が触れ合う、直前。 「優しくしないで」 女が呟いた言葉は、二人の口内で溶けていった。

2015-03-14 14:38:46
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「っ、は」 しつこく舌を絡められて、息が上がる。 「キトちゃん、」 「お願い。ひどくして。乱暴に、めちゃくちゃ、に」 再び、涙。 「…………」 こんな状態の女を抱く趣味はなかった。 まるでレイプのようではないか。 ただでさえ、この女は。

2015-03-14 14:43:25
イフ@東都へ行こう @2_tnm

思考が頭の中でぐるぐる回る。 それが何ひとつ形にならないまま、服に手を伸ばした。 乱暴に、脱がせる。 「おっさんと別れて新しい男と付き合って、今度はその男を裏切って俺とヤるん?」 笑いながら、言葉をぶつける。 「なあ、キトちゃん。やっぱりお前、」 病気やな。

2015-03-14 14:50:02
イフ@東都へ行こう @2_tnm

下着ごとズボンを取っ払い、強引に指を沈める。 まったく反応していないそこを、痛めつけるように抉った。 「い、っ」 流石にきついらしく、逃げようとする腰をがっしりと掴んだ。 「逃げんな。お前が言うたんやろ」 逃げれると思うな。 そう吐きつけて、指を奥に進める。

2015-03-14 14:57:19
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「さすが、慣れてるな。もう濡れてきたで」 言いながら擦り上げると、震える体。 「もしかして、気持ちいいん? この状況で?」 なあ、キトちゃん。 囁きかけると、女が呻いた。 「なに?」 冷たく問うと、徐々に形になる言葉。 その言葉が耳に入って、ふいに泣きそうになった。

2015-03-14 15:03:35
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「なに、言うてるん」 指を抜いて、己のベルトに手をかける。 泣き続ける女。吐かれるその言葉。反応している、自身。 全てが気持ち悪かった。 「半勃ちやけどええやろ」 先端を、無理やり沈める。 奥まで入りそうにはなかったが、別に構わないと思った。

2015-03-14 15:11:47
イフ@東都へ行こう @2_tnm

「はっ、」 動こうとするも、上手くいかない。 諦めて床に腕をつき、女の言葉に、耳を傾ける。 「ロジ、ろじぃ……」 「…………」 「ろ、じ、ロジ、っ」 黙って聞いていると、涙があふれ出した。 そりゃあ、そうだ。 俺で、上手くいくわけがないのだ。

2015-03-14 15:19:03
イフ@東都へ行こう @2_tnm

誰か壊してくれ、と強く思った。 生かしも殺しもできない、自分の代わりに。 目の前の男すら認識できない、この女を。 壊してくれ。 戻らない時を。世界を。愛を。 記憶を。 どうにもならない、全てのことを。 壊して。 お願いします。

2015-03-14 15:24:22
イフ@東都へ行こう @2_tnm

僅かに繋がったまま、二人は声を上げて泣いた。 戻らない人間の名を呼び続け。 もう一歩も動けない、と思った。

2015-03-14 15:27:12