救済ブラック本丸まとめ

タイトルの通り
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ふゆ@かたな @fuyu_tr

「お前は知っているか。この方がどれほど自分を犠牲にして俺達を守っているのか」「犠牲?」問い返す宗三に長谷部は口を開く。「青江に聞いたが、」「長谷部」その名が出た瞬間に、俺はその名を呼んで言葉を止める。振りかえった彼に首を振った。「……何故です」「それは誇れる話じゃないからだ」

2015-04-03 22:07:33
ふゆ@かたな @fuyu_tr

尚も言いつのろうとする彼に、俺は言う。「お前がどう話を聞いたのかは知らないが、それは他言無用のものだ。ここで出されては困る。……だが、感謝する。お前が口を挟んでくれなかったら、俺はこの場で何も伝えられずに終わっただろう」黙る長谷部に俺は1つ息をつく。「理由はな、単純だ」

2015-04-03 22:11:06
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「守りたい物があるからだ」「守りたい物?」「そう」「それは?」そう問いかけられて笑う。「言ったとしてこれ以上のことを信じるのか?……そうだな。例えば、この世界。例えば、この歴史。例えば……お前たち」言って俺は彼らを見渡す。「俺が長谷部の言う通り自分を犠牲にしていたとして、」

2015-04-03 22:14:27
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「それは自分の為だから出来ていると言うだけの話だ。答えは以上だ」「………」酷く幼稚な答えだった。長谷部の話をすれば、もっと彼らの信頼を得ることも、こんな馬鹿な言葉を紡ぐ必要もなかったが、それよりも俺は。「あなたは、馬鹿な男ですね」やがて深々としたため息をついて宗三が口を開く。

2015-04-03 22:19:59
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「嘘がつけないのは、馬鹿だからじゃないんですか?」不愉快そうにそう言って、宗三は顔を背ける。「僕はあなたを信じていませんが、今の答えを突っつく気になりませんよ。あなたの言葉にしては杜撰過ぎて、ひっくりかえす余地が逆にないじゃないですか」「……え」「次はもっとましな答えを」

2015-04-03 22:24:25
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「用意することですね。ほんと」詰まらない男。そう言って宗三はさっさと歩きだしていく。その背を呆然と見送って、俺は困惑したまま表情を緩めた。「次があるんだな」それなら、飴でも補充しておこう。

2015-04-03 22:27:07
ふゆ@かたな @fuyu_tr

(閑話:長谷部) 部屋に戻る途中、追いかけてくる足音に振りかえる。「ああ、長谷部か」その姿に俺は向き直った。「先ほどはありがとう。まさか助けてもらえるとは思っていなかった」「……あなたは……」俺の言葉に長谷部は何か言いたげにして、結局一度口を閉じる。そして。「主」目を見張った。

2015-04-03 22:34:24
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「先ほどは、差出がましいことをして申し訳ありません」「いや、だから助かったと……」「実は、俺は青江にあなたの体調が心配だからみていてくれと頼まれていたので、あの話を存じておりました。彼には、」「別に罰したりはしないさ」「……そうでしょうね。あなたは、」言いかけて長谷部は言い淀む。

2015-04-03 22:37:09
ふゆ@かたな @fuyu_tr

そしてから首を振った。「いえ。また余計な事を言ってしまいそうなので、またいずれ。……ああ、でも」そう言って長谷部は俺を見る。「どんな理由であれ、あなたが俺達の為に力を尽くしているように、俺もできたら、あなたのために努力したいと思っています」「出来ているだろう」「……え?」

2015-04-03 22:39:12
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「さっき。主と俺を呼んでいたが?」「えっ」目を瞬く長谷部に顔を見て苦笑する。「無意識か?まあいい。ありがとう長谷部。お前のそれで、俺ももっと頑張れるよ」ではな。おやすみ。と言った俺に長谷部は顔を伏せる。「おやすみなさいませ。……主」それはきちんと俺の耳に届いていた。

2015-04-03 22:42:06
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