救済ブラック本丸まとめ

タイトルの通り
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ふゆ@かたな @fuyu_tr

「でもいいのか?小夜左文字。他の男士達に1人で俺に近寄るなって言われているんじゃないのか?」「知ってたの?」「あぁ。耳は良いんでな」頷くと彼は言う。「悪人は傷ついたりしない。だからあなたは多分……」悪人じゃない。といいたいのだろうか。「…悪人だって人だろう。傷つくこともあるさ」

2015-04-02 22:34:16
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「自分が悪人って言いたいの?」「そう言う訳じゃないが、まあいい人でもないだろうさ。でも、こういうのは、俺が自己申告しても意味がないからな」黙って俺の話を聞いている小夜左文字にとりとめもなく話す。「俺は出来れば、お前たちには他の者の意見ではなく自分で主を見極めてもらいたい」

2015-04-02 22:38:48
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「お前たちは仲が良いだろう?だから、受ける印象を共有しがちだ。だが、悪印象はともかく、良い印象ばかり共有されても困る」「どうして?」「皆が俺を好きだったら、誰も俺を咎めなくなってしまうだろう?」「咎めて、欲しいの?」「あぁ。……何か、お前たちを傷つけるようなことをする前にな」

2015-04-02 22:41:12
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「主従で主を敬うというのは、必要なことだろう。そう言う契約だしな。だが、仕えるために己を殺すべきかと言うと、俺はそういう関係は望んでいない。戦国時代ならいざ知らずだが、俺は現代人だしな」黙って俺を見つめる小夜左文字に俺は言う。「小夜左文字。お前は俺に何を見る」

2015-04-02 22:43:50
ふゆ@かたな @fuyu_tr

そう言った俺に、彼は黙ったまま何も答えなかった。 一日が早い。夜に広間を通りがかった俺は、呼びとめられた。「主」「ん?」ざわ、とそこにいた男士達がざわめくのを感じながら、寄ってきた小夜左文字を見る。「これ」そう言って柿を差し出され、俺は目を瞬いた。「……これは?」「飴のお礼」

2015-04-02 22:46:03
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「お礼?わらしべ長者になれそうだな」ありがとう。と受け取ると、彼は言う。「あと、昼間の、答え」「……聞こう」向かい合うと、彼は真っすぐ俺を見て言う。「僕は、あなたに黎明の夢を見る」言葉を受け止めてひとつ、瞬く。「空けない、夜はない」頷く彼に微笑んで、俺は言う。「君の目覚めが」

2015-04-02 22:49:14
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「良いものであるように、俺は努力することを約束する」再び頷いた彼は、満足したようで俺に背を向ける。一度ちらりと振りかえってから、たたたと走って去って行った。柿を見て、俺もその場から離れる。食べなければいけないのは分かっているが、しばらくこれは飾っておきたい気分だった。

2015-04-02 22:51:56
ふゆ@かたな @fuyu_tr

(宗三) 「詰まらない男」そう背後でわざとらしい嘆息と共に聞こえた声に俺は手元の書類から視線を上げずにペン先を襖に向ける。「結論が出て満足したのならお帰りはあちらだ」「なんですかその適当な反応は」「煽りに失敗して残念だったな」「……男なら言い返すぐらいしては?」

2015-04-03 01:30:23
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「無駄な労力は使いたくない」「僕を前にして無駄と言いますか」「別に誰を前にしても反応はそう変わらないとは思うが、あえて言うなら、お前がずっと後ろで俺を見ているせいで機密書類に手をつけられない」「良い気味ですね」「そう言うのは良いが、提出が遅れるとお前も困るぞ」

2015-04-03 01:33:39
ふゆ@かたな @fuyu_tr

支給品や装備に関わってくるからな。と続けると、彼は僅かに黙る。「別に、あなたの責任になるでしょうし僕の知ったことではありませんよ」そう言いながら脇に置いてあった飴の籠に彼は手を伸ばしてくる。ひとつを取って口に入れるのを振り返って咎めた。「……おい」「おや、思ったより美味しい」

2015-04-03 01:36:00
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「限定品だからな。……一言くらい言え。行儀の悪い」「限定品?飴ごときに贅沢をしていますね。良い御身分ですこと」「その通り良い身分だからな。作業効率にも関わってくるから惜しみはしない」「小夜はこんな詰まらない男のどこが気に入ったんですかねえ……」「気に入られたのか?」

2015-04-03 01:40:54
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「そんなわけないでしょう」「なんなんだ。邪魔しに来ただけなら出て行ってくれ」流石に呆れてそう言えば、つーんと彼はそっぽをむく。帰る気はなさそうだった。仕方ないと手を止めて向き直る。「なんですか?」「休憩だ。少し相手をしてやろう」「なんて偉そうな態度でしょうね」「偉いからな」

2015-04-03 01:45:32
ふゆ@かたな @fuyu_tr

そう返すと、宗三左文字は少し考えるように瞳を細めた。その彼から視線を外して室内を見やる。「……お茶を淹れようと思ったが急須一式持ってきてなかったな……」「別にあなたの淹れたお茶なんかいりませんよ」「誰もお前に淹れてやるなんていってない」「狭量な男は嫌われますよ」「……」

2015-04-03 01:49:27
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「ああ、まあ。……お前なら……別に……」「あなた人をいらっとさせるの本当に上手ですね」「お前に言われたくないな」俺はため息をついた。「まあ、思惑は分かった。俺を怒らせてあるかも分からないボロを出させたいんだろうが、これでも俺は気が長いんでな。その程度なら飲みこんでしまえる」

2015-04-03 01:52:15
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「分かっていて乗っているんですか?良い性格をしていますね」「面倒見がいいと言ってくれないか。まあ、それに正直お前たちを相手にしているのは結構楽しい」「……不可解な人ですね」呆れたように言って宗三左文字は立ちあがる。「わかりました。では別の手を考えてくることに致しましょう」

2015-04-03 01:53:41
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「そうか。ではまたな。宗三左文字」そう言った俺を見つめ、それから彼はふいを顔を逸らし、襖へと歩いて行く。その背を見送って、俺はまた書類に目を落とした。

2015-04-03 01:54:35
ふゆ@かたな @fuyu_tr

その日の夜。通例となった次の日の予定合わせで全員が集まった時のことだった。「ねぇ、主」全ての確認が終わり、一息ついたところを、まるで不意をつくようにして、宗三左文字が口を開いたのだ。「なんだ?」「あなたがこの本丸に来て3週間ほどになりますか?」「ああ」答えると、彼の瞳がす、と

2015-04-03 21:22:54
ふゆ@かたな @fuyu_tr

細められる。嫌な予感がしたが、この場で彼の口を塞ぐことはできない。「そろそろ、僕たちに教えてはいただけませんか?」「何をだ?」「あなたが、この本丸に来た、本当の理由。ですよ」ざわ、とその言葉に空気が揺れる。ああ、してやられた。と俺は内心で歯を噛みしめた。「本当の理由?」

2015-04-03 21:25:06
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「誤魔化しても無駄ですよ」そう言って口元を歪めるようにした宗三左文字を見据える。誤魔化しても無駄。そう言われてしまえば、曖昧な言葉は逃げや誤魔化しだと思われてしまう。そもそも、本当の理由と言う単語を使われた時点で彼らにそんなものがあるということを信じ込ませるには十分だ。

2015-04-03 21:29:49
ふゆ@かたな @fuyu_tr

先手を打たれ、逃げ場を塞がれてしまった。男士達からの視線を受けながら、俺は表情を崩さずに言葉を探す。俺の答えを待って、静寂が場に下りる。どう、したものか。でっち上げるならともかく、彼らに対して嘘は。「あなたは嘘はつかない主義なのでしょう?」彼の言葉に追い立てられる。

2015-04-03 21:35:24
ふゆ@かたな @fuyu_tr

理由。理由、か。それは、「話したくなければ、別に構いませんよ。どうせ、人間が僕たちを使う理由なんて目に見えていますからね」嘆息した宗三左文字は、他の男士達がなんだ?と視線を向けるのを待って口を開いた。「"お下がり"の"汚れた"刀を好き好んで使う輩など居るわけがないでしょう?」

2015-04-03 21:38:27
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「見合うだけの金、地位、あとは……あんなに書類仕事をしている所を見ると、僕たちで実験でもしているんですか?。まあそんなところでしょうね。……違いますか?主」そう言われて、彼らの視線が俺に向く。これでは、何と答えようと一緒だ。また。……彼らとの距離が遠ざかるのだろうか。

2015-04-03 21:42:18
ふゆ@かたな @fuyu_tr

どちらにしても、俺の言葉は変わらない。これまで通り、紡いでいくだけだ。そう、いつも通り、俺の本当の、「宗三」口を開こうとした俺はその声に言葉を止めた。「おや?なんですか、長谷部。僕は主に質問しているのですが」不快そうに眉をひそめた彼に、長谷部が前に出てくる。

2015-04-03 21:46:18
ふゆ@かたな @fuyu_tr

「その質問を撤回しろ。不敬だ」「不敬?彼を主とも呼べないようなあなたに言われたくはないですね」その言葉に長谷部は表情を変える。思ってもいなかった彼の口出しに少し気分が落ち着いた。その性格に感謝だなと思いながら、俺は口を開く。「長谷部。別に構わない。答えても何も、」「俺が」

2015-04-03 21:52:06
ふゆ@かたな @fuyu_tr

そして長谷部は何か耐えるように一度目を伏せてから、再度口を開く。「この状況を受け入れられず、主と呼べないのは、俺が未熟だからだ。この方のせいではない。そして、例え、宗三、お前の言う通り、この方の理由が金や地位だとして、それに何の問題がある」「……問題?それは」「ないはずだ」

2015-04-03 21:55:27
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