工藤吉生(くどうよしお)の短歌まとめ・第十四期【2014年10-12月】20首

工藤吉生の動向 @mk791122

【第十四期】2014年10-12月。77首。 短歌研究の特集「新進気鋭の歌人たち」に参加したが、これは初めての総合誌からの原稿依頼であり、報酬のある依頼でもあった。ネットプリントの企画に連作で参加。地元の大学短歌会の歌会にお邪魔した。

工藤吉生の動向 @mk791122

〈1〉 のたれ死にしたことがある気がしてる照らされてオレンジの歩道橋

工藤吉生の動向 @mk791122

〈2〉 幸せなあちらのオレが今ここのこのオレを思いぞっとする夜

工藤吉生の動向 @mk791122

〈3〉 ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ

工藤吉生の動向 @mk791122

〈4〉 ああ人は諭吉の下に一葉をつくり英世をその下とした

工藤吉生の動向 @mk791122

〈5〉 泣きながら叱ってくれる人は去り笑ってごまかす歯の真っ黄色

工藤吉生の動向 @mk791122

〈6〉 お父さんにかまわれたくて怪獣の口のあたりで撫でるテーブル

工藤吉生の動向 @mk791122

〈7〉 捨ててあるタイヤのなかに雨水が住んでてわりとちゃんとしている

工藤吉生の動向 @mk791122

〈8〉 １９８８年ファミコンで見た青空を今も愛する

工藤吉生の動向 @mk791122

〈9〉 どうしようオレに天使が舞い降りたそして始めた受胎告知を

工藤吉生の動向 @mk791122

〈10〉 派出所の前に立ってる警官の動かないまま小雨はつづく

工藤吉生の動向 @mk791122

〈11〉 メロディーをつけてあくびをした時の下降しようとするそのちから

工藤吉生の動向 @mk791122

〈12〉 怒ってるようなあくびでスカスカな一日は終盤にさしかかる

工藤吉生の動向 @mk791122

〈13〉 もうすでに少し歪んだ空き缶の蹴られ慣れてる下腹部ですな

工藤吉生の動向 @mk791122

〈14〉 雲と雲と雲と雲との戦乱のまっただなかに電信柱 〈15〉 風景を見てるつもりの女生徒と風景であるオレの目が合う 〈16〉 ほとんどの家に入れずほとんどの人にはオレがただのよそもの 〈17〉 君らのはケンソンだろうオレの場合ほんとにダメなんだよ近寄るな

工藤吉生の動向 @mk791122

〈18〉 体型のことを言われてひっこめる腹のそれほどでもない動き 〈19〉 ぼくは汽車、汽車なんだぞー！　と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く 〈20〉 「魂の転落」とでも題すべき雲を含んで空暮れてゆく