【開棺】中尊寺金色堂学術調査65周年語り【調査】～第一夜～　基本的なはなし

奥州藤原氏bot @ou_fujiwara4

経清「そもそも金色堂内に藤原四代の身体がミイラ状態になって安置されていることは今では公になっているけど、昭和25年までは中尊寺の秘密中の秘密。寺の対応としてもこの件にはノーコメントが基本だったと言える」

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経清「もっとも江戸時代、金色堂修理などで須弥壇内の遺体を実見した記録はあった。不思議と最古の実見記録は寛永年中の『奥羽観蹟聞老志』、つまり400年以上の間、遺体の存在を示す記録は、最初から無いか散逸したか、存在しない。中尊寺がいかに固く秘密を守っていたことか」

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季春「江戸時代の内見記録は他に『光堂物語』、『南留別志』などがあり、特に後者には「秀衡が死骸いけるが如く」とありますね。話が巷に知れ渡ったため、棺の中を見たいという不届き者もおりまして中尊寺では御遺体を見たものは呪われるなどの話をわざと流しもしたそうです」

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経清「それでも明治時代になると江戸時代の記録も信憑性の薄いものと見なされ、遺体の存在は迷信とされたり、さまざまな風説が流れたりするようになる。明治の金色堂修理の際も文部省は須弥壇下の棺の存在を全く信ぜず、須弥壇に対し乱暴な修理をしたようだし」

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経清「しかし昭和24年、中尊寺はそれまでの態度を一転させ、世間に金色堂内に藤原三代および秀衡の息子の忠衡の首が実在することを公表。さらに遺体の存在を確信していた朝日新聞社の打診を受け入れ、遺体の保存処置のための開棺調査に応ずることに決めた」

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季春「中尊寺が方針を変えたのは何故だったのでしょう」 経清「いくつか理由と思われるのはあるけど……はっきりはしていないからここで言うのは控えるよ。ただ寺として、四人の身体を損壊から守り永久に保存するためにどうしても専門家の力が必要だと痛切に感じていたのは確かだと思う」

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経清「ともあれ、中尊寺は『遺体は現状のまま永久保存に堪えるよう適切な処置を講ずること』を絶対の条件として学術調査に応じた。 　『現状のまま』とは、調査のための採取も含めて、如何なる損傷も遺体に与えてはならないってことで、調査団の学者たちもそれをよく理解し守ってくれたようだ」

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季春「『中尊寺と藤原四代』には「学術調査団の学術発表以前に遺体に関して種々の臆測が云々されることを深憂し、本坊（略）を調査のために提供すると共に、厳に外界と遮断した」ともありますね」

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経清「そうして調査のために組織された専門家集団は16名。内訳は理学博士５名、文学博士2名、医学博士３名、文部技官2名、作家1名、大学教授２名、医学部教授1名となっている」

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季春「さらに詳細に専門を見ると、歴史学３名、古美術学1名、仏教史学1名、人類学2名、法医学1名、放射線学1名、文化財保存学２名、化学１名、微生物学１名、昆虫学1名、植物学1名、作家1名で、まさしく歴史学と自然科学が協力して行った当時としては画期的な調査ですね」

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経清「10日間の調査で判明したのは以下の点だ。 ・藤原一族はアイヌ民族ではない ・四人の死因、推定死亡年齢、身長、血液型 ・基衡と秀衡の棺の名前が逆 ・忠衡の首と伝えられてきたものは泰衡の首」 季春「逆に不明なまま終わったのはミイラは人工生成か自然生成か、ですね」

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経清「じゃ、今夜はここまで！　詳細は明日以降、順次話していきます。今夜は最後に『中尊寺』と『最終報告』の目次を紹介して終わりますね」

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『中尊寺と藤原四代』（目次）① ・藤原四代遺体の科学的研究の意義 ・遺体に関する諸問題 ・遺体の人類学的観察 ・藤原四代の血液型・指紋・歯 ・レントゲン学的にみた藤原四代 ・藤原四代の遺体と微生物 ・中尊寺のミイラとともにあった植物のタネ ・鼠害と虫害について

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『中尊寺と藤原四代』（目次）② ・遺体の保存処置についての一考察 ・金色堂の設計と遺体の安置 ・副葬品について ・平泉の文化と中尊寺 ・奥州藤原氏と蝦夷の文化 ・中尊寺遺体の文献的考証 ・北方の王者 ・調査日記 ・中尊寺学術調査団員名簿

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『中尊寺御遺体学術調査　最終報告』（目次）① ※『中尊寺』重複論文は割愛 ・公刊にあたって ・遺体に関する諸問題補考 ・藤原四代の血液型・指紋・足紋・毛髪・歯 ・藤原四代の微生物学的調査とその保存処理に就いて ・中尊寺藤原遺体のミイラの生成について

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『中尊寺御遺体学術調査　最終報告』（目次）② ・館内遺品及び基衡、秀衡の錯誤について ・中尊寺金棺内の二、三の染色品残欠の植物染料について ・藤原四代遺体の保存処置に就いて ・藤原四代の遺体 ・中尊寺のミイラについての諸問題

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『中尊寺御遺体学術調査　最終報告』（目次）③ ・中尊寺金色堂並びに御遺体調査日記 ・人類学からみた奥州藤原氏と蝦夷 ・解説　御遺体錯誤の問題、そして[最終報告]が公刊ならなかった事情 ・藤原四代遺体保存措置日記