…思えば、初めて山城としたあの日から…僕はずっとそれを求めていたのかもしれない。…山城は、あの時の事を覚えていない。山城は夢だと思っている。僕も、夢だと言った。…でも、僕の心にはずっと、確かな現実として、残り続けていたんだ。
2015-04-12 02:43:23「…時雨」 山城の顔が、更に歪む。…とんでもないことを言ってしまったのはわかってる。でも…それで僕は、きっと。 「…山城」 …僕は山城の頬に手を伸ばした。
2015-04-12 02:50:10…それは春先だというのに冬に逆戻りしたかのような冷たい夜だった。風のない静かな夜だった。僕は静寂に包まれたこの夜、この部屋で…山城と、キスをした。…あの時のように、悲しい味がした。
2015-04-12 02:59:27…離れる唇。あの時とは違って…山城の綺麗な深紅の瞳には、僕が映っていた。…山城は、僕を見ていた。 「…山城、キミが許してくれるなら、」 もっと、キスをして。山城や龍鳳を悲しませてしまうこの気持ちが、跡形もなく消えてしまうくらい。
2015-04-12 03:05:10身体が、山城の腕に包まれる。僕もただ想いのままに山城に手を回した。…山城の濃い味を感じる、深い、深いキス。僕の舌を丁寧にすくい絡める山城のそれに。僕を抱き締める山城の腕に…とても深い、愛情を感じた。山城の、愛情を…。
2015-04-12 03:13:11…さっきまで感じていた悲しい気持ちが、山城とキスを重ねるたび、少しずつ癒えていった。…あぁ、やっぱり僕は、これが欲しかったんだ。 「…山城…。やましろ…」 僕が名前を呼ぶ度に山城は僕を抱き締め、口づけをしてくれた。…沢山の、涙と共に。
2015-04-12 03:21:26…視界が段々と白くなってきた。…もうすぐ、この時間も終わってしまうんだね。…でも、悔いはない、かな。 「…ぁ…山…城…」 抜けていく力を振り絞って、最後に僕から山城にキスをした。もう息も絶え絶えで、声はそれ以上出てこなかったけれど…言葉に負けない、気持ちを込めて。
2015-04-12 03:30:21「…時雨、……」 …消えゆく意識の中で見えた、山城の唇が綴った言葉。僕はそれを、記憶の奥底へと…大切に仕舞った――
2015-04-12 03:38:22時雨「山城」 山城「…何よ」 時雨「呼んだだけ」 山城「…叩いていい?」 時雨「痛いのはヤダな」 山城「…このっ」 時雨「あうっ。…ふふ、痛くない」 山城「…あんたって繊細なようで、時々図太いわよね」 時雨「そうかな」 山城「そうよ」
2015-04-12 13:46:19