「天に願いを」(3)~『千歳の真意-暴露編-』~
- mamiya_AFS
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廊下に足音を捉えて注意を向ける。覚えの無い足音の主はやはり部外者だったらしく、病室の前を立ち止まる事すらなく通り過ぎていく。 千代田は伊吹を連れて工廠に向かったし、何故か夕張と常盤もついて行った。提督も書類仕事がある以上、今千歳に会いにきそうな奴はまずいないだろうが。
2014-09-13 18:59:34「…お前もな」 必死なんかじゃなかったと言い返したい気持ちもあったが面倒なのでやめておく。何についての話だったのかは至極簡単だ。 先刻の会議でオレと千歳は『千代田が自ら作戦参加を辞退するように』あいつへと接した。 結果は完全に裏目に出てしまったが。
2014-09-13 19:03:00あそこまで冷たく千歳とオレに接せられれば、千代田の性格からすれば参加を全力で拒否すると踏んでいた。全部で7人いるこの艦隊では、必然的に1人が留守番となる。わざわざ轟沈しに行くようなものだからな。他のメンバーには悪いが、オレは千代田を連れて行きたくはなかった。
2014-09-13 19:06:58予想外なのは伊吹の根性か。 あの千代田を前向きな方向に動かすなんて、意識していないんだろうが凄い事だと素直に思う。 「このままだと置いていかれるのは、お前だな千歳。…それとも、それが『計画通り』なのか?」 目の事実はともかく、現在入渠しているのは千歳だけである。
2014-09-13 19:09:37今更何か企んでいる事を隠すつもりは無いらしかった。こっちには見破られないと思っているのか、はたまたバレたところでどうでもいいのか。 ただでさえ生存率の低い今回の作戦に参加なんかして何を実現できるというのか、悔しいが確かにオレには全く読めない。
2014-09-13 19:12:51「千代田は助けたいのか。お前の妹想いな部分だけは信じておいてやるよ」 千歳を全力で動けなくする。いや、潰す。その考えは昨晩の時点であった。そうすれば何を企んでいようとそれを看破の必要も無く封じる事ができる。 だが、サブ島出撃の話が決まってしまった以上、そうするわけにはいかない。
2014-09-13 19:16:35千歳をどうにかしてしまうと、必然的に千代田も出撃する事になってしまうからだ。 タイミングが良過ぎる。何もかもあいつの手の上で転がされている気がした。
2014-09-13 19:17:30@15tennryuu 千代田を助ける、ですか…。 …ふふ。否定はしませんが、大きく勘違いなさっていますよ天龍さんは。
2014-09-13 19:19:12「…どういう意味だ?」 顔を向ければ、普段の千歳ではなく、昨日初めて見た醜悪な悪魔が冷たく笑んでいた。何かふざけた事を言ったら今度こそ潰そう。もしも千代田を愛しているのがそもそも演技なんかであったのなら、後の事を考えるのをやめて、ぐちゃぐちゃにしてやると決める。
2014-09-13 19:22:43@15tennryuu さて、どこから話しましょうか。 まずは前提として、私は『世界で一番千代田を愛しています』。それは本心で真実で確実です。そこは信じて下さい。 …但し…。
2014-09-13 19:24:30……あぁ? 当然殺意は湧いたが、理解に努めている間に千歳が昔話を始めたので動く事はできなかった。 朗々と語られる千代田と千歳の過去の話に自然に引き込まれる。 千代田と共に父親を殺した事。 その事実を隠蔽し逃れている事。 千代田が、半分壊れている事を。
2014-09-13 19:29:40それらの話は全部ただ1点に収束される。つまりは、千代田が千歳の事を大好き過ぎる、という部分だ。 それはよくわかっていたつもりだったが、そこまでだとは思っていなかったのも事実だった。壊れ過ぎていて、嫉妬も湧きやしない。
2014-09-13 19:33:13笑顔のまま言い放たれた言葉に。 ついさっき何がどうなっても潰してやると決意したはずだったのに、ぴくりとも動けないのはどうしてなんだろうな。
2014-09-13 19:35:28正解したっていうのに、こんなに嬉しくないのも珍しい。 何が嫌だって、千代田にそう言われてみたい、なんて思ってしまった自分がいる事だ。 オレも壊れていると改めて自覚する。 この姉妹同様に。
2014-09-13 19:38:23@15tennryuu さて、私はどうあの子に復讐すればいいでしょう。 あの子は、私が直接何をしたとしても、復讐にならないのです。 どうしても受け入れられない場合には、現実から『逃避』しますしね。 私はあの子を愛している。けれども苦しめたいんです、苦しめたいのですよ。
2014-09-13 19:40:51千歳は何一つ嘘を言っていない事だけはわかった。 こいつは本当に姉として千代田を心から愛している。 そして、だからこそ妹を怖れている。 矛盾しているようで、していない。 龍田とオレのように、壊れている事を受け入れて形だけ取り繕って歪みながらも生きている。
2014-09-13 19:44:40@15tennryuu だから決めたのですよ。 私は愛しているあの子の理想を叶え、憎んでいるあの子の理想を滅茶苦茶にしてやろう、と。
2014-09-13 19:47:15