「天に願いを」(4)
- mamiya_AFS
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…やっと落ち着いてきたな。 空になったデザート皿をずらし、熱いコーヒーを冷まさないままに口に含む。 『悩んでいる時はとりあえず甘いもの食べな』。 いつだか天城に言われた言葉だ。そしてこう続く。 『悩んでようがそうでなかろうと、美味いもんは美味い。だったら悩むだけ損でしょ』。
2014-09-13 20:05:14別にその言葉に感銘を受けたわけではないつもりだったのに。 別に格言と言える程のもんでもなければ、ごく普通の事を言ってるだけで救ってくれる意味もたいして持ってはいない。 なんだかんだで『自力でどうにかしな』と遠回しに言ってるだけのような気もするし。
2014-09-13 20:09:31天城にも悩みなんかあったんだろうか。…見た事ないし、想像もつかないな。 天城ならどうするんだろうか。千代田と千歳の両方を救う方法を思い付くのだろうか。…思い付く上に平然と実行もするんだろうな。
2014-09-13 20:13:11「ん、ああ…。間宮か。悪いな、もらうよ。 …砂糖は4個頼む」 誰かが近寄ってくる事に気付けない程には悩んでいたらしい。やっぱりオレは天城にはなれない。
2014-09-13 20:15:07千代田を救う為ならば、千代田に嫌われても憎まれても構わない。…構わ、ない。いや、すっげぇ嫌だけど。絶対に嫌だけど。 でも千歳をどうにかしようとすれば、それは必然的に千代田を敵に回す事も意味する。『真相』や『真実』は、あいつにはたいして意味を持たないんだ。 千歳だけが、全て。
2014-09-13 20:17:58矛盾、とまでは言わないが、あの姉妹の相関図が何をどうやっても覆せないのはまず間違いない。 つまりは、両方を救う事が不可能だという事になる。今考えていた事は、結果として千歳も千代田も救われちゃいないし。 …なんなんだよ、あいつら。
2014-09-13 20:20:48角砂糖が黒い液体の中に放り込まれ、銀の匙がそれをかき混ぜる。 見た目はブラックコーヒーと変わりはしないが、もう完全に別物になった。 甘ったるい邪道とも言えるコーヒーが簡単に出来上がったわけだ。口にしなければ違いもわからない。 まるで…。
2014-09-13 20:23:06どちらかの理想を壊せばどちらかを救える。 そんな構図であるのならばどれだけ助かるだろうか。あの2人の壊れきった思想と理想は、対立するどころか根の部分は同じなくせに、完全に両立を拒んでいる。意味がわからない。 熱っ。 さっきの考えが早くも否定された。 口も付けられない。
2014-09-13 20:27:14…本当にどうかしてるな、今のオレは。 対面でたい焼きを頬張っている長門と、テーブルにあごを乗せてのべーっと見上げてくる祥鳳から目を逸らし、隣で新しくお茶を2つ用意している間宮を眺める。 「暇なのか? 長門ともあろう方が」 片方が「私は?」とでも言いたげにぱちくりと瞬く。
2014-09-13 20:36:10「へぇ…」 顔をぱたりとテーブルに伏せさせた空母娘の挙動がどことなく千代田に思えて腹が立った。長門。長門か。 「なぁ、長門。1つ聞いていいか」 間宮は姉妹がいないし、祥鳳は参考にならない気がした。なんとなく。
2014-09-13 20:43:25「妹がどうしようもないくらい姉の事が好きで、姉も妹を愛しているんだけれどそれを認めたくない場合、どっちの想いも両立させる方法があると思うか?」 なるべく普通の表現になるように言葉を選ぶ。千歳の考えとは一致していないが、何か参考になればいい。 長門が、ぶぼっ、と噴き出した。
2014-09-13 20:47:40