【大罪大戦WOS EX-Episode】紅の強欲と紅の傲慢の邂逅

罪は出会い、その無色を紅に染め上げる。 嗚呼、どうしようもなく『強欲』だ。 どうしようもなく『傲慢』だ。 紅の大罪が、集い始めた。
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紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

剣を素振りする、大柄の男。 鎧は中華風で、黒と金に彩られている。 剣は大ぶりなものだった。一般的には両手剣と呼ばれるもの。 そして、いずれ『傲慢』の記憶を込められる剣。 泉の沸き立つ森の中、『傲慢』は一人の女が近づいてくるのを感じた。 女だ、俺を殺せるのは、女だけだ。

2015-01-07 18:58:31
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

嫌だなと思った。 だが、会ってやろうという気にもなった。 女であるが、悪い気分を感じる気配ではない。 有能な女は、嫌いではない。苦手だが、嫌いではないのだ。 だから、一度くらいなら会ってやろうという気になった。

2015-01-07 18:58:48
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「道にでも迷ったか、小娘  この森はさほど深くないが、それでも危ういな  女一人で森の中など、あまりに自分を軽んじた愚行だぞ?」 刃物は怖いだろうと思い、剣を背中の鞘に仕舞った。そして、女の人影を見やる。

2015-01-07 18:58:54
紅の強欲 貪 @actTan7

「小娘かどうか、きちんとその眼で確かめると良いさ」 声は凛、と。木陰から姿を見せた緋袴に、艶やかな烏珠色の髪を頭頂部で括り一纏めに、女はうっそりと笑う。 「──私は獣。森は庭だ」 腕を組む姿勢がいやに様になっている女は、真っ直ぐにそちらを見据えた。片目の金が、男を見る。

2015-01-08 14:42:26
紅の強欲 貪 @actTan7

その女の腰には刀が一振り。表情に浮かぶは不遜な笑みか。 「成る程、狼の言う通り──かな」 片目が三日月のような弧を描く。友好的と言って差し支えのない態度。 「私は貴方を欲しに来た。『傲慢』たる貴方を、だ」 距離は互いの刃が交わらない程度の。

2015-01-08 14:42:38
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

笑いかけ、まったく友好的でない、怒りの眼差しで見つめ返す。 「狼には負けたな。だが、いずれ勝つさ  それで、俺と対等になれたと思うのか?  威容も、見目も、言葉の使い方も。確かに俺に相応しい獣だ  だが、獣と同じ目線まで降りてやるつもりはない」

2015-01-08 15:20:53
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「……欲していると云ったか。どこまで『傲慢(おれ)』をお前の高さまで歩んで貰えるか、試してみるか?」 顎を、少し上げた。

2015-01-08 15:20:58
紅の強欲 貪 @actTan7

「名乗り方を、変えようか」 眇められた金色は逸らされず、ただ真っ直ぐに『傲慢』を見据え。 「私は貪。何をも欲す──強欲だ」 告げて、笑う。 「ふふ……嗚呼、失礼。此れが、私の求める、──欲する、『傲慢(アオマン)』たる者かと、嬉しくなってしまってね」 咳払い一つ。

2015-01-09 17:33:18
紅の強欲 貪 @actTan7

「私の『嫉妬』に、貴方が敗したから此処に来た訳では無いと云う事は、理解っておいて欲しいのだが」 「──貴方は高み(そこ)に居てくれて構わない」 「降りて来て貰っては、意味が無い。──私が高み(そこ)に至ってこそ、強欲(つみ)として貴方を得られる」

2015-01-09 17:33:26
紅の強欲 貪 @actTan7

「私は強欲」 金色の奥、潜む獣が唸りを上げた。 「一度、欲したら手中に収めるまで、決して諦めはしない」 それは喉笛を狙う狼の如く。 「──貴方を欲するには、まだ足りないだろうか」 笑い、首を傾けた。

2015-01-09 17:33:30
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「もし俺が要ると云うなら  俺に、何をくれる?  それこそ、命と金銀宝玉を預け、俺に全てを委ね、生殺与奪をも与えるか?  あるいはそれが出来ぬなら、ここで『傲慢』に殺されてしまえ」 にたりと口を歪める。歪んだ男だった。 二つに、一つ。それを、択べと、言ったのだ。

2015-03-21 14:10:30
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「俺に肩を並べるなどと"強欲極まる"願いを言ったのだ」 喉をくつりと鳴らした。 「たった一つの命を、今この場で、断末魔の天秤にかける度胸があるのだろう?」 上に居るから登って来いと、『傲慢』の瞳が、貪に、怒りではなく『試す』。そういう目の光を向けた。

2015-03-21 14:10:59
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「『強欲』よ。お前は、女である前に、”戦う者”だ」 空を、ゆったりと仰ぎ見た。 貪がいま、『傲慢』を殺そうと思えば間違いなく殺せるだけの隙を、『傲慢』は晒してみせた。

2015-03-21 14:11:13
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

お前を怖れてすらいないと語り、 『傲慢』となった俺は、戦士相手には、負けぬと示し、 それだけの誇りを抱いた、これまでの生き方を、どうしても枉げれないと。 空を見た、森深く、泉の傍で、『傲慢』は空を見ることで、語った。

2015-03-21 14:11:29
紅の強欲 貪 @actTan7

「おや」 片眉をあげる。してから、可笑しそうにくつくつと喉を鳴らし笑い。 「私の物はあげられないよ、それは私が『私(強欲)』である限り絶対だ」 けれどね、と言葉は続く。 「其れ以外なら、『傲慢』、貴方の好きにすると良い。というより、私の許可なんて要らないだろうし、」

2015-03-21 14:24:35
紅の強欲 貪 @actTan7

「私に言われなくたって、『傲慢』たる貴方は、そうする。──でしょう?」 わらう。笑みは静かに、ゆるりと浮かべられ。 「貴方が私との死合を望むというのなら、私は私が信じる『唯一』の為、命を賭けて高み(そこ)へ至ってみせようじゃないか」 音無く抜かれる、刀。刃に刻まれた意匠が煌めく。

2015-03-21 14:24:37
紅の強欲 貪 @actTan7

切っ先を向けたところで、『強欲』の獣に殺意など無く、ただ、ただ楽しげに笑うのみ。 「──ああ、本当に……それでこそ、私の求める『傲慢』だよ」 その余裕。その傲り。実力から至る全てを今、この眼にして、改めて言葉にせずにはいられなかった。 「他にどんな『傲慢』があろうと、」

2015-03-21 14:24:39
紅の強欲 貪 @actTan7

「『私』は『貴方』だけを欲するのさ。」 優美さとは掛け離れた、獣の如き眼光。浮かぶ笑みは、野生と違わず。その余裕すらも欲しいと言わんばかりに、赤き唇はゆうるりと弧を描いた。

2015-03-21 14:24:42
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

「おれ(アオマン)以外は要らぬか  では、お前は『傲慢(おれ)』の、『強欲(タン)』なのだな」 ずんと足を踏み出し、『強欲』の持つ刀身を握った。滴る血。 「俺は、お前がいい。あの狼がいい  俺は、お前たちと、歩む。この世に再び這い出た、『傲慢』さを、お前にくれてやる」

2015-03-21 20:02:32
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

刀身をさらに握る。指と手の平の、骨まで達した所で、鋼にぶつかったように、止まった。 「お前が俺の『強欲』足り得ぬ時が、一度でもくれば、お前の全てを傲慢に奪い、打ち捨ててやる」

2015-03-21 20:02:56
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

手を開いて離し、膝を折って、泉の中に血塗れの手を浸した。 「ハ、よい刀だな。お前が俺を飽きさせなければ、その刀はお前のものだ」 血が染み入る泉の水面。 「俺の紅き血に、お前たちの盟友である事を誓う」

2015-03-21 20:03:14
紅の強欲 貪 @actTan7

「ふふ、そういう事になるね」 刃を掴まれようとも、笑みは崩れる事なく。 「『傲慢』たる貴方の思うように。  ──まあ、私は『強欲』でしか無い。きっと、足り得ぬ事など、無いだろうけどね」 そう括れば、満足げに笑って。刃を伝う紅に指を這わせる。

2015-03-22 08:41:34
紅の強欲 貪 @actTan7

「私も、私の血に誓う──という事が出来れば良かったのだが、私の血は其れ自体が得物のようなものだからね」 人差し指に付いた血を化粧のように、目元に塗って。 「傲慢たる貴方の血に、私はずっと、そうであると誓おうか」 凄惨なまでの笑みは、果たしてどう映るか。

2015-03-22 08:41:39
紅の傲慢(アオマン) @nigayuki_sin_k

目を細める 「ああ、いいな。本当に、いい」 自分の血に誓われたのだ。それは、信じると決めた自己責任で、裏切られても仕方ないということだ 本来なら、そうだ ――だが、この者なら。裏切らない。信じていい 傲慢の血が、そう告げている。そして、己の傲慢さが、足場(くれない)を見つけたのだ

2015-03-22 13:33:29
紅の強欲 貪 @actTan7

「ふふ、そう言って貰えて何よりだよ、──『傲慢(アオマン)』」 刃に刻まれた意匠の中を、紅は滑り落ち滴る。 「では──共に在らん事を」 羽織った紅(きもの)を翻し、艶黒が棚引く。 「まだ拠点、なんて言えるような立派なものがある訳じゃあないんだけれどね、」

2015-03-24 02:36:59