スガシカオは如何にして10年選手のミュージシャンとなったか

@tricken が、スガシカオの職業的に尊敬できる部分についてクローズアップし、「自分のコアとなる強みを一貫して売り続けつつ、数年単位で新しい課題の為の行動を始める」という多重的スタンスを再評価してみました。  ちなみにtrickenは、この観点をもってスガシカオを「第1期」から「第4期(現在)」に区分しています。第5期はFUNK三部作終了後かなあ。
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そうて出来たのが、R&Bの系譜でも最もライトに受容されたはずのディスコ・ミュージックをフィーチャーした「午後のパレード」である。http://www.youtube.com/watch?v=xzPfu2VnKXw 明らかに、これはそれまでの「密室ファンク」スガシカオとは異なる。

2010-12-22 02:21:59
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しかしこれはある意味で、第三弾の課題が達成された瞬間でもあった。「スガシカオはわからないが、午後のパレードは聞きやすい」という評判を、僕は数人から聴いた。そして、確かにスガシカオはこのキラーチューン以降、「夜空ノムコウ」のスガシカオとはさほど言われなくなった。

2010-12-22 02:23:38
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そして、Shikao & The Family Sugar——森俊之(kb.)をバンドマスターとする、スガシカオ(vo. & g.)間宮巧(g.)松原秀樹(b.)沼澤尚(dr.)で構成されたファンクバンド——により、2007年02月、十周年記念武道館ライヴが敢行された。

2010-12-22 02:25:57
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この武道館によって、『TIME』ごろの反省から続いた第三の課題、「開かれたスガシカオ」は、一応の解決をみた。

2010-12-22 02:27:08
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まとめよう。スガシカオはまずデビュー前から、(1)アコースティック・ギターでウタモノのファンクを演る という課題を持ち、それを『Clover』『FAMILY』『Sweet』で見事に達成した。

2010-12-22 02:28:10
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しかし、それで飽き足らないスガシカオとその周囲は、(2)スガシカオの音楽性を活かしたバンドサウンドを構築し、スガの「密室アコギファンク」をより開かれたものにしようという課題を発見した。それは『4Flusher』では不十分だったものの、『SMILE』『TIME』で成功した。

2010-12-22 02:29:22
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ところがその完成されたバンドサウンドでは、スガシカオは「自分の音楽(特に、〈ファンク〉へのこだわり)」が、多くの人には届かないことを自覚した。そこで (3)10周年に向けて、スガシカオのファンクにあるある種の「マニアックさ」の殻を破り、より開かれたものにする という課題に挑んだ。

2010-12-22 02:31:46
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こうして、1997年から2007年までのスガシカオの3つの挑戦は整理されるだろう。つまり、スガシカオにとって「10年続く」とは、単に同じことを10年続けたことではない。3-4年ごとに何らかの中間的達成を得、だがその一方で新しい風景・障害に出くわし、次の課題を立ち上げてきたのだ。

2010-12-22 02:33:20
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そして第三の課題の裏でも、第四の課題はすでに始まっていた:スガシカオは、Family Sugarというバックバンドの重厚さに、ある意味で依存していた。自分より年上ばかりの、実力派バンド。間宮・森・沼澤・松原は、独りでブルーノートの演奏も張れるほどの実力派だ。

2010-12-22 02:34:44
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そんな彼らが、「日本でファンクをガチでやっている30代の青年・スガシカオ」のために、集まっていた。しかし、10周年武道館ライヴより前から、彼らがそれぞれ偉く成りすぎていた。スガシカオのためのライヴのスケジュール調整は、年を経る毎に困難を極めていた。

2010-12-22 02:36:19
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そこでスガシカオは、「Hitori Sugar Tour」というライヴを、文字通り「独り」で始めていた。武道館ライヴDVDのおまけとして、その一部始終を観ることができる。ベテラン・バンドの力を借りず、ハコをどうやって独りで涌かせられるか。それは初心に戻るための再訓練だった。

2010-12-22 02:38:07
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つまり、10周年を達成するという第三の課題を実現しようというまさにその時、スガシカオは「バンドが変わっても新たにライヴ・パフォーマンスを立ち上げる地力をつける」という、第四の課題を見つけていたのだ!

2010-12-22 02:39:05
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その課題の延長戦上にあったのが、10周年を迎えてほどなく結成された新たなスガシカオ・バンド「FUNK FIRE」だった。彼らはまず、ホールのようなツアーコンサートではなく、オールスタンディングのライヴハウスで、スガシカオのファンクサウンドを徐々に練り上げていった。

2010-12-22 02:40:21
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Hitori Sugar と FUNK FIRE は、ある意味で共通した課題を抱えている。ウェルメイドなスガシカオ・ファンクを聴きたければ、もはやShikao & The Family Sugarの武道館ライヴDVDを聴けばこと足りてしまうのだ。それを、どう別の面で超えるか。

2010-12-22 02:41:30
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2007年前後を境に、スガシカオは以前よりさらに積極的にロックフェスや夏フェスへと出向いていった。一時期はRSRなどでも唄っている。これは、iPodやデータ音源などが主流になりつつある中で、アルバム・アーティストとしての自分の位置づけを変革しようとする現れだろうか。

2010-12-22 02:43:36
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音楽業界では既に「中堅」になってしまった自分を、どこまでも初心のどさ回りミュージシャンのアイデンティティに引き戻すために、10周年後のスガシカオは様々な手を打っている。これはファミシュガ時代からの数年がかりの離陸を意味するだろう。

2010-12-22 02:45:12
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そして、FUNK FIREがライヴパフォーマンスを練って三年経った頃、スガシカオは同時に二つの課題を動かし始めた。(5) 明確に「ファンク」を謳ったアルバムを売る (6)英国ロンドンで「日本のミュージシャンとしてファンク音楽を演ってくる」。

2010-12-22 02:46:34
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(5)については、『FUNKAHOLiC』で一度中間成功(大成功ではない)。その後、『FUNKASTiC』で突破したと思われる。これは Mummy-Dとのコラボが非常に大きい。また、C.C.Kingと共演した「91時91分」や、「サヨナラホームラン」「兆し」などは、スガの新境地。

2010-12-22 02:49:20
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(6)については、『TIME』制作後の長期休暇の中ですでにハワイ・ロンドンでの武者修行を行っていた延長として位置づけられるだろう。「スガの音楽はwestでやっていける」と以前誰かに言われたこともあるというスガの音楽は、2年連続でロンドンのライヴ会場を沸かせ、新聞記事にもなった。

2010-12-22 02:50:48
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これら(5)(6)の課題も、実のところ2006年ごろから撒いていた種が、いくつかの努力と幸運の掛け合わせにより2010年段階で芽吹いているに過ぎない。毎年、全力で動いていても、こうした数年単位での視座が常にスガシカオとその周辺のプロジェクト・メンバーの側になければ、無理だ。

2010-12-22 02:52:09
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さて、こうして長々とスガシカオについて語ってきたのは、理由がある。「なにがしかのプロとして一発屋でありたくないとして、何をすべきか」という課題について、スガシカオという一音楽家の動きから何かを学べないかということを論じたかったのだ。

2010-12-22 02:53:13
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まず第一に、「その業界において売り続ける〈幹線〉となる、間違いなく自分にしかできない(やろうとしてもマネしにくい)芸当を見つける」ということ。第二に、「それが一定度の達成をみる数年前には、次に取り組みうる3年単位の長期課題を見いだし、その達成へ向けて動き出しておくこと」。

2010-12-22 02:56:05
tricken(Tw以外の居場所は固定参照) @tricken

自分の成し得ることの範囲で、数年越しのバトンを繋ぐ。それは、数年ごとに「その道の担い手としての自己を生まれ変わらせること」に近いかもしれない。誰かには「変節した」と罵倒されるかもしれない。しかし、我々はあくまで「実を生らせる木」であって、「たまたま旨かった実」であってはならない。

2010-12-22 02:58:41
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最後に、スガシカオ自身の引用で締めくくりたい。

2010-12-22 03:02:03
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「俺は長い間音楽をやってて、どのアルバムもその経過点の1個でしかないんですよ。だから『ここが良かったね』って言われても、そこに戻る気もないし、おんなじのを作る気もないんだよね。……

2010-12-22 03:02:26