死ぬのがこわくなくなる話 その2 「タイムトラベルする方法・肉体編」
そして一生懸命ナノロボットを作る必要なんてあるのかという根本的な疑問が出てくる。長大な月日と膨大な費用をかけて夢のマシンが完成したとしても、それと同じ、いやきっとさらにずっと精巧で完成度の高いものが、実はもう、いたるところに存在しているのである。僕らの体の中に、だ。
2011-08-23 00:09:08細胞だ。実のところ、そもそも細胞自体が究極のレベルに達しているナノテク・マシンなのだ。自分で自分を修復する機能を、壊れたところを分子単位で直していく仕組みを、もともと持っているのだから。
2011-08-23 00:09:27いちいち外側からちょっかいを出さなくても、ミクロの世界で、それは日々行われている普通の作業なのだ。ではなぜ我々は壊れていくのか。老化していくのか。
2011-08-23 00:09:52体を構成する細胞に寿命があるからだ。それは物理的に仕方のない限界というわけではない。ある回数、分裂すると自殺するようにあらかじめセットされているだけのことだ。
2011-08-23 00:10:09生物は、死ぬ能力をあえて獲得したのだと前に書いた。細胞のテロメアと呼ばれる部分にあえて時限を設定している、と。テロメアは細胞内の染色体末端部に存在する。これが細胞分裂をするたびに短くなっていき、ある長さ以下になると細胞分裂を停止させる。回数券の役割だ。
2011-08-23 00:10:272009年のノーベル医学生理学賞を獲得したのは、このテロメアの仕組み、さらにはその修復を行うテロメラーゼ酵素の役割を解き明かしたアメリカ人科学者チームだった。
2011-08-23 00:11:15テロメアの仕組みが判明した以上、それが短縮しないようにする、もしくは再延長させる技術は手の届くところにあると言える。それができれば、細胞をいつまでも生き続けさせることが可能になる。
2011-08-23 00:11:50そこで、あなたが死ななくなる、その2番めの方法がはっきりした。修理する、という考えではなく、修理機能を永久化する、という考えである。
2011-08-23 00:12:05細胞の中に仕込まれている自殺機能を取り除く技術。自殺機能が「あえて」セットされているのなら、それを作動しなくすればいい。それは困難なことではないはずだ。
2011-08-23 00:13:02自然の摂理を超えたところまで個体を長続きさせる。それは生命という概念自体を崩してしまいかねない技術だ。その領域に、人類は今踏み込み始めているのである。不老不死を手に入れようとしているあなたは、そのことを、知っておくべきだろう。
2011-08-23 00:13:56@kozysan 不老不死が現実になれば、まったく新しい倫理や社会が構築されていくんでしょうね。僕がおもしろそうだなー、と思うのは、いったいみんなは「何歳」の時点で「不老」を選択するかということ。一生「ようじょ」を選ぶ人がいたりしたら熱いですねw
2011-08-23 00:20:17@FAUST_editor_J 同意です。新しい技術の開発よりも新しい倫理や社会の構築の方がずっと大変で、実は今はこれを真剣にやっておかなくてはならない時なんですね。
2011-08-23 00:28:58@FAUST_editor_J 「ようじょ」問題も重要ですね。生殖という戦略が必要なければ、苦しくも悩ましい成長期に入る必要はないのです(が、ここから大橋のぞみ論に入ることを自重します)。
2011-08-23 00:30:41@kozysan 逆にテロメアの操作により、生産能力のピークを過ぎると死なせるようなシステムが敷かれることもあり得そうですね。
2011-08-23 00:28:18@rokugentanto 明らかになんらかの意図でそうなっていることは間違いないですね。しかし、それをすんなりと受け入れることはできない自分がいます。
2011-08-23 00:36:18(昨日書いたあの方法……)それが大自然の摂理に反しているかどうかはひとまずおこう。どうだろう。この方法でいつまでも生きていられるとしたら。これなら、納得していただけるのではないだろうか。
2011-08-24 00:22:01この技術は、SFではない。タイムマシンや超能力と違い、科学的な裏付けは済んでいる。遠い未来のものではない。具体的な細部でいまだ困難な部分はあるが、全て手間と試行錯誤だけで乗り越えられると目されている。現在行われている研究の延長で必ず実現するのである。
2011-08-24 00:22:23ただし、あなたが不老不死の術を受ける日がいつになるのかは、わからない。技術が実用レベルに達しても、あなたがその恩恵に浴するべき費用を貯めるのに、時間がかかるかもしれないから。
2011-08-24 00:22:35その技術が、庶民に手の届くほど一般的になるまでなんとか長生きするか。技術が進んでも、倫理の問題がある。簡単な道のりではないだろう。10年では無理だろう。20年、いやまだだ。30年なら、もしかして。
2011-08-24 00:23:16