死ぬのがこわくなくなる話 その2 「タイムトラベルする方法・肉体編」

渡辺浩弐さん(@kozysan)のTwitter連載『死ぬのがこわくなくなる話』のまとめ。その10で完結します。 まとめのまとめ: http://togetter.com/li/821514 『死ぬのがこわくなくなる話』は書籍化もされています。本ならではの見せ方がされており、おすすめです。 続きを読む
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渡辺浩弐 @kozysan

90年代中盤に、カリフォルニアからアリゾナに移転してきたそうだ。理由は地震などの自然災害が皆無に近いからだという。同じ理由で、宇宙開発の拠点としてかつては有名だったらしい。この土地からロケットの発射が盛んに行われていた時期があったのだ。

2011-08-26 02:01:11
渡辺浩弐 @kozysan

ステファン・ブリッジ氏は、派手なブレザーを身につけ、髪はブロンドのアフロで、70年代のロック・ミュージシャンのように見えた。悟り、超自然、不老不死。

2011-08-26 02:01:31
渡辺浩弐 @kozysan

そんな話がどれもぶっとんでいて面白い。このフェニックス=不死鳥という名の地域のことも、あたかも不思議なめぐりあわせのように延々と語る。不死鳥の神話的イメージを科学技術によって実証する、というのだ。

2011-08-26 02:04:00
渡辺浩弐 @kozysan

今日はこのへんで。明日、いよいよアルコア内部へ。

2011-08-26 02:04:34
渡辺浩弐 @kozysan

@noisemaze そうです僕が行ったのはここです。僕はアルコアと書いていますが「アルコー」という表記も多いようですね。『人体冷凍/不死販売財団の恐怖(原題:FROZEN)』については改めてレビューしますが、非常に面白く読めますし、密度も濃いです。

2011-08-26 23:59:34
渡辺浩弐 @kozysan

アルコアに敵対する立場の人が書いた暴露本だということ、そしてかなりセンセーショナルな売り方を狙った商品だということは前提にして読むべきではありますが。

2011-08-26 23:59:56
渡辺浩弐 @kozysan

この本、星海社の太田さんに「面白い本が出ていますよ」と薦めてもらって読んだのですが、読み終わるまで、実際自分が90年代の後半に何度もその現場に行っていたことを、すっかり忘れていたのですね。

2011-08-27 00:01:12
渡辺浩弐 @kozysan

というか現実感のない記憶で、なんだか夢みたいでした。それで自宅倉庫を調べてみると、当時の取材テープ、写真、資料などがごっそり出てきました。そうだ写真もここで公開しますね。

2011-08-27 00:01:32

渡辺浩弐 @kozysan

さて。『死ぬこ話』 (しぬこわと読みます/ソースは松原真琴先生)第15話、始めます。

2011-08-27 00:24:23
渡辺浩弐 @kozysan

人工冬眠サービスのアルコア社のリポートの続き。長い観念的な話の後、ブリッジ氏は我々を連れて施設の中を案内してくれた。最初に一番奥の、暗い倉庫に導いた。そこに3メートルくらいの銀色の、小型ロケットのようなカプセルが、何十個も立ち並んでいた。 http://t.co/xWsAJBh

2011-08-27 00:28:02
渡辺浩弐 @kozysan

この中に実際に人体が保管されているのです、と平然とそう言った。彼は体(ボディー)もしくは患者(ペイシェント)と呼び、死体という言葉を一度も使わなかった。ステンレス製の円筒形カプセルの脇には、2人で登れる大きさのはしごが掛けられていた。促され、その一つに、ブリッジ氏と一緒に登った。

2011-08-27 00:29:59
渡辺浩弐 @kozysan

はしごの最上部に立つと、カプセルを真上から覗き込む姿勢となった。氏は手を伸ばし、バルブのいくつかを素早く回転させていた。そしてカプセルの蓋を取ってしまったのだ。ほら、ここに人が眠っている。氏は指さした。

2011-08-27 00:30:16
渡辺浩弐 @kozysan

白い湯気がふわっと立ち上った。その奥は暗く、死体いや人体は見えない。氏は手に持ったコップでおもむろにその表面をすくってみせた。それでカプセル内部は液体で満たされていることがわかった。コップからも白い煙がたなびいた。唖然としている僕の顔をめがけて、その液体を、ばっと浴びせかけた。

2011-08-27 00:33:16
渡辺浩弐 @kozysan

もう少しではしごから転がり落ちるところだった。液体は僕の顔や服にかかったが、その瞬間に、手品のように消えた。氏はげらげら笑ってから、これは-186℃の液体窒素です、と説明した。 http://t.co/A3SrcqR

2011-08-27 00:34:59
渡辺浩弐 @kozysan

液体窒素はじかに触っても、危険なものではないのか。霜の付いた頬に手を当てて呆然としている僕に、ブリッジ氏は笑顔で解説を続けた。実はこのカプセルにはまだ人間は入っていません。準備ないしチェックのために液体窒素だけを入れたものです。

2011-08-27 00:37:31
渡辺浩弐 @kozysan

人体が入ってからは内部に強い圧力がかけられた状態で完全密封される。液体窒素は圧力によって低温を維持する。このシステムならば、電気を供給し続ける必要がない。たまに液体窒素を補給するだけでいい。

2011-08-27 00:38:23
渡辺浩弐 @kozysan

この中で、人間は逆立ちの姿勢で眠っています。と、ブリッジ氏は言った。万一の事故で液体の供給が止まったとしても、あるいは漏れだしたとしても、液体がなくなっていくのはカプセルの上の方から、少しずつ、ということになります。

2011-08-27 00:39:03
渡辺浩弐 @kozysan

足、腰、腹、の順で解凍されていったとしても、最も大事な脳がやられるまで、1週間から10日の時間がかせげるという。

2011-08-27 00:39:21
渡辺浩弐 @kozysan

同じ場所に、一回り小さなカプセルもあった。子供用か、と考えていると、ブリッジ氏が教えてくれた。それは、頭部だけを保管するためのものです。1つに4人分の頭が入ります。

2011-08-27 00:39:43
渡辺浩弐 @kozysan

眠りについた人間の首を切って頭だけを冷凍する作業を想像していると、「冷凍のプロセスを見て頂けたらよかったんですが」そう言いながら氏はカプセルの蓋を閉じた。「いつまで滞在されますか、その間にもし患者を冷凍する機会があれば連絡しますよ」

2011-08-27 00:40:40
渡辺浩弐 @kozysan

冷凍という特殊な作業が、取材者とはいえ第三者にまで公開されうるものだということを知った。そうだ、ここには死という概念が存在しない。そして敬虔さという概念も。          続きます。

2011-08-27 00:41:09
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