『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之)を批判する --- その6

その5はこちら。 http://togetter.com/li/817229 以下も合わせて読んでいただくとうれしいです。 続きを読む
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It happens sometimes @ElementaryGard

『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之)を批判する --- その5 - Togetterまとめ togetter.com/li/817229 続きいきます。

2015-05-16 13:19:31
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「第六章 大衆か実験か」を批判的に論じてみます。

2015-05-16 13:21:37
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例の『鉄腕アトム』がもたらしたものは三つと著者はあげています。 ①ANIMEを発明した ②漫画を活力源にした ③人材を育てた

2015-05-16 13:23:45
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『アニメビジネスがわかる』で経営者目線からのアニメ産業論を展開した増田弘道も、津堅と重なる見解を述べています。anime.typepad.jp/blog/2009/03/8…

2015-05-16 13:27:45
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アニメスタジオ社長経験もあるせいか、増田のほうが金稼ぎ的視点からの手塚評価をしていますが、中核にあるものは津堅と同じと思われます。「手塚が『アトム』を始めたからこそ今の日本のアニメ界はある」と。

2015-05-16 13:29:44
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①ANIMEを発明した について。作画の省略化とともにマーチャンダイジングなどの新手法を編み出したとは津堅の弁です。実はここで彼は少々ねじれた論じ方をしている。杉井ギサブローによる「映像娯楽の新種を生み出した」論を引きながら、

2015-05-16 13:34:28
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一方では >「東映動画系=動き重視」、「虫プロ系=ストーリー重視」という二律背反的な論調には、慎重であらねばならない。(p203) と奇妙なブレーキを踏んでくるのです。ちなみにこういう論じ方はこの本の特徴ですね。ツッコミが来るのをみこして「むろん~ではあるのだが」と予防線。

2015-05-16 13:37:26
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この葛藤を弁証法的に昇華するものとして ②漫画を活力源にした という主張がでてきます。いわゆる大河ドラマの方法論が漫画から持ち込まれた。

2015-05-16 13:41:53
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さらには漫画の読者を視聴者に取り込み、また同時にアニメ版の視聴者を漫画読者に取り込むという双方向的市場開拓が行われたとしています。

2015-05-16 13:43:19
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③人材を育てた この論が一番うさんくさい。 >個人集団であるという意識で成立した虫プロがそこにはあたわけで、だからこそ多くの個性的な人材を集め、そして送り出すことができたのだろう。

2015-05-16 13:46:54
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そしてこう強引な理屈をこねるのです。 >人材を育成するシステムが「なかった」ことが、人材を育成したともいえそうである。 (p210)

2015-05-16 13:47:58
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本居宣長の日本礼賛論と同じ理屈です。『古事記』や『源氏物語』を読み込んで、日本古来の美意識や心のありかたを抽出した偉い学者さんということになっていますが、実はそうではないのです。

2015-05-16 13:51:10
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日本ならではの感性として「さからしさがない」「○○がない」「◇◇がない」など、いろいろ列挙しているのですが、それは要するにシナ文明への劣等感です。シナ=さからしい(理屈っぽい)/日本=さからしくない。

2015-05-16 13:54:16
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これが明治になると、今度は欧米と比べて日本は××でない式の日本論が生まれてきます。しかも自然科学の装いでそういうのが登場。小松左京の代表作『日本沈没』(1973年)ラストの、田所博士と渡老人の問答はその末裔ですね。

2015-05-16 13:56:09
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シナ文明のエピゴーネンという劣等感が古来あって、その反動として江戸期に本居宣長のような理屈が生まれた。明治になると今度は欧米文明への劣等感が芽生え、その反動で今にいたる日本論が生まれたとみます。

2015-05-16 13:59:21
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『アニメ作家としての手塚治虫』に話を戻すと、これと同じ論法が ③人材を育てた にうかがえます。

2015-05-16 14:02:24
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手塚死去後、宮崎駿が「手塚アニメは素人の旦那芸。落語に出てくる長屋の大家の義太夫と同じ」と喝破。さらに同年夏に『魔女の宅急便』を大当てして、アニメの王者は手塚ではなく宮崎であると世に認めさせた。

2015-05-16 14:04:59
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実際、アニメ作家としての手塚は、宮崎もいうように作画の基本からしてアレだしテーマが破たんしてたり(宮崎はアニメの『ジャングル大帝』を酷評)「才能のあるひとは手塚さんを見限ってよそにいくから残ってるのはくそみたいな連中」とまで罵倒。

2015-05-16 14:08:17
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津堅が『アニメ作家~』の仮想敵として宮崎を想定しているのは明白です。アマデウス宮崎にアントニオ津堅はどう立ち向かったか?

2015-05-16 14:10:55
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「その後のアニメ界をしょって立つ逸材をいっぱい生み出したではないか虫プロは」と言い返したのです。

2015-05-16 14:11:59
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で、それを「育てた」と言い換えたわけです。ちなみに夏目房之介ゼミで手塚アニメ批判を私がしたとき、夏目教授から全く同じ反論をされたことは過去に何度も述べたとおりです。

2015-05-16 14:13:18
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「育てた」という日本語にトリックが潜んでいるとみます。例えば「数学者の岡潔は教育者としても一流で、人材を育てた」という場合、それは世の中にとって益となる方向にいろんなものを導いたと述べているわけです。が手塚はどうでしょう。

2015-05-16 14:15:50
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アニメに関して「益」に世を導いたといえるのか?一見、世界でも類をみない繁栄ぶりですが、先日の労働実態調査を眺めてもわかるように、実態はブラック業界です。ひとを食いつぶすことでまわっている。そんな業界になって久しいのに「益」なのでしょうか。

2015-05-16 14:17:50
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私たちが「益虫」「害虫」と呼び分けるのと同じ。テントウムシは作物を食い荒らすから「害虫」で、テントウムシはそういうけしからん虫を食べてくれるから「益虫」。つまり人間の勝手な都合で「いいもの」「わるもの」と分類されているにすぎない。自然科学のふりをして。

2015-05-16 14:20:26
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「手塚はアニメ界の人材を育てた」論もこれと同じ。現在の現状を「善」と前提して、その始祖なんだから手塚は「善」だひとを「育てた」んだと理屈をつけているに過ぎない。こういうのを同義反復といいます。tautology

2015-05-16 14:22:44