【未来の予兆】

闇は常に自分の中に潜む
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

…暑苦しい 汗が不快だ 季節は梅雨。だんだん湿度が高くなりジメジメしてくる時期だ 吹雪は普段、敬愛する上官である瑠奈花と一緒に寝る 二人はケッコンしているのだ。別段おかしなことではない

2015-05-13 20:11:04
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

今までは瑠奈花の背中に抱きついて寝ていた(身長の関係から抱きつくというより吹雪が瑠奈花を抱き締める形になることが多いのだが) だがこれからの季節は流石に暑い 最近は互いに背中合わせで寝るようになっていた それでも吹雪は十分満足していた

2015-05-13 20:12:44
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

時には身体を重ねることもある もちろんそうでなくとも、瑠奈花と共に過ごす夜は吹雪にとって何よりの幸せなのである だが今日は少し違った とにかく蒸し暑い。一応冷房はつけていたはずなのだが 布団ですら不快に感じる。頭がぐるぐるして気持ち悪い

2015-05-13 20:13:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…雪」 誰? 「…吹雪」 聞き覚えのある声…だけど何か変 あまりの蒸し暑さでおかしくなってしまったのか 「吹雪?」

2015-05-13 20:14:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「…ふぁ」 瑠奈花の声だ。私を起こしているのだろう。この人は朝に弱いから、普段は私の方が早く起きるのに 「…汗だくじゃないか。早く起きてシャワーでも浴びてこい」 吹雪「…はい」 …何かおかしい。瑠奈花の声が変だ。私の知る瑠奈花はもっと幼い声で… 吹雪「…ん?」

2015-05-13 20:16:26
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「えっ…え!?誰!?」 そこにいたのは髭面の男だった。瑠奈花をそのまま老化させたような男。「おじさま」という言葉がよく似合いそうだ 困惑する吹雪を見て瑠奈花は笑っている 瑠奈花「寝ぼけているのだな。早く身体を洗って目を覚ましてこい」 吹雪「アッハイ」

2015-05-13 20:17:42
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜シャワー室〜 あまりにも予想外の出来事に情けない返事をしてしまった 自分はあのおじさんと寝ていたのだろうか。端から見ると犯罪臭がする。なぜかそんなどうでもいいことを考えていた 吹雪「…あれ?」 鏡を見て吹雪は気づいた。そこにはロングヘアで高身長の女性が映っていた

2015-05-13 20:18:13
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

正確には同じ年代の人と比べれば低いかもしれない。だが昨日までの自分と比べると明らかに大きくなっている。そういえばここに来るまでも、妙に視点が高かったような 吹雪「これってもしかして…未来の私?」 吹雪はそっと自分の胸を見た。すぐに見なかったフリをした

2015-05-13 20:19:25
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

原因はわからないが、どうやらここは未来の世界のようだ。シャワー室を出て鎮守府の内装をよく見てみると、自分の記憶よりもだいぶボロボロになっている。相当時間が経過しているようだ 「あら、吹雪さん。御機嫌よう」 自分の名を呼ぶ声に振り向くと、一人の女性が立っていた

2015-05-13 20:20:00
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「…もしかして、暁ちゃん?」 暁「どうしたの?もうちゃん付けなんて似合わないわよ」 腰まで伸びた、軽くウェーブのかかった黒髪。間違いなく暁だ。自分の知る暁よりもだいぶ大人びているが 暁「吹雪さんはこれから執務室かしら?」

2015-05-13 20:20:40
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「え、あ、うん。そうだけど」 暁「司令官も素敵なおじさまになっちゃって、羨ましいわ。よろしく言っておいてね」 そういうと暁は歩いていった。柔らかな物腰で歩く後ろ姿はまさにレディの風格だ 吹雪「暁ちゃん…素敵な女性になってる…これって…」 吹雪(これは…夢…?)

2015-05-13 20:21:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

〜執務室〜 瑠奈花「夢?」 吹雪「そうなんですよ!私、昨日まではまだ…」 吹雪は拙い言葉で必死に説明した。この状況を理解してくれる人は恐らく、瑠奈花しかいない 瑠奈花「つまり、昨日までの君は少女で、目が覚めたら大人になっていたと?」

2015-05-13 20:22:03
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「はい。それも私だけじゃなくて、周りのみんなもそうで。なんか、心だけ未来に飛ばされたというか」 瑠奈花「ふむ」 瑠奈花は真剣に私の話を聞いてくれた。普通なら訳のわからない話の筈なのに。それだけでも安心できる

2015-05-13 20:23:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花「なかなか面白いことを言うな。私には長年君と過ごしてきた記憶があるが、今の君は10数年前の君そのものというわけか」 吹雪「うーん…」 瑠奈花「不思議なものだ。私からすれば何も変わらないというのに」

2015-05-13 20:23:39
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「どうすればいいんでしょう…」 瑠奈花「これが君にとって夢だというなら、夢はいつか覚める。すぐに君は元の自分に戻れるはずだ」 吹雪はほっとした。例え夢の中であろうと、瑠奈花の言うことは信頼できる 瑠奈花「さあ、行こうか」

2015-05-13 20:25:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「え、どこにですか?」 瑠奈花「朝食の時間だ。吹雪、夢には意味がある。これが夢だというなら、君にとって何か大切な意味があるはずだ」 吹雪「意味…」 瑠奈花「夢の鎮守府を色々歩き回ってみるといい。 きっと…何かが見つかるはずだ」

2015-05-13 20:26:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その後食堂で食事を取りつつ、吹雪は色々な話を聞いた 雪花は大きく変わっていた。多くの艦娘は引退し、赤城は給糧艦として雪花を支えていた 高雄は故郷の幼馴染みと結婚し、子供も産んでいた。長良は陸上選手となり、世界で戦っている

2015-05-13 20:27:54
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

他にも龍驤や比叡といった主力艦もいなくなっており、代わりに多くの新人が配属になったようだ 「隣、いいかしら?」 吹雪に話しかけてきたのは茶髪の女性。なかなか妙齢となっていたが、吹雪にはすぐに誰だかわかった 吹雪「大井さん!どうぞ!」

2015-05-13 20:28:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

大井ともいろんな話をした。大井は雪花に残り、練習艦として新人指導を担っているそうだ 大井「雷巡として暴れ回ったのも過去の話よ。今はどちらかというと、これまで培ってきた技を後輩達に伝える方が楽しいの」 木曾の話もしてくれた。木曾は今では女性司令官として、艦娘を指揮しているらしい

2015-05-13 20:29:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「私達の世代の艦娘も減ってきましたね…」 大井「そうね…。今でも残ってるのは子日ちゃんや曙ちゃん、暁ちゃん、他片手で数えられる程度かしらね」 子日も曙も「命の借りがある」と言って、断固として雪花を離れようとはしなかったそうだ。暁も自らの意思で転属を拒んでいるらしい

2015-05-13 20:30:18
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

大井「あとはそうね、清霜ちゃんがもう少ししたら出張から戻ってくるわ。あの子、戦艦の艤装を一部扱うことに成功したそうよ」 吹雪「ほんとですか!?すごいなぁ…」 二人はそのまま他愛ない世間話を続けていた。所属はバラバラになれど、「雪花」としては未だどこかで繋がっているそうだ

2015-05-13 20:31:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪は午後の哨戒にも参加した。面子は曙と新人、そしてなんと深海棲艦も一緒だった 人類は深界との和平を結ぶことに成功した。しかし未だ世界に蔓延るはぐれ深海棲艦や海賊の討伐のため、互いに力を合わせて戦っているのだそうだ 吹雪「深界は敵じゃなくなったのに戦わなきゃいけないのね」

2015-05-13 20:32:28
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

曙「和平を結んだことに反発する輩が人類からも深界からも少なからず出てきたのよ。奴らは連合軍となって各地で反乱を起こしてる。以前に比べれば断然平和ではあるんだけどね…」 輸送ラインも復旧し、かつての豊かな生活が戻ってきた。ただ、人間に武器を向けることも多くなり、精神的に辛いそうだ

2015-05-13 20:33:09