不知火に落ち度はない　38（川内）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「でもそれじゃ、彼女たちは戦争の犠牲に──」 「そこが我々が日々頭を悩ませ、課題としてるところです」 頷いて返す。 「生存させるための作戦を考え、整備を24時間体勢で行い、観測台を使って多くの情報を得ていく」 #不知火に落ち度はない

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「絶対に死なせないように、我々軍人も全力を注いでます。またもう一つ、ここが情けない話ですが──」 「はあ？」 「彼女たちはまだ年若い。同時にできる限りの自由を与えたくあります。例えば観光地だとすれば」 ちら、と先程の観光案内の人を見る。 #不知火に落ち度はない

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「当然観光もさせてやりたい。予算がなかなか許しちゃくれませんがね」 肩を竦めてみせる。 「ただ、そのタイミングがあれば出してやりたいというのが本音です」 本音？ 川内とかは出したくない。 あいつ観光地で野放しにしたくない。 #不知火に落ち度はない

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「また、日常を少しでも楽しもうと、非番の日にはここから、街へ出て行くのも少なくない」 ゲートの方に目をやって、話を続け。 「そこまでは我々でもできるのですが、『艦娘の未来を考える組合』の皆さん」 それぞれの顔を見ていく。 次は何を言うのかって顔だな？ #不知火に落ち度はない

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「そっから先の、自由の謳歌できる場所は貴方らが握ってるんですわ」 と、垂れ幕を見て言う。 「艦娘反対、という文字を見て、消沈するのもいるでしょう。当然気にせず寧ろやる気になるのもいますがね」 ちら、ちら、とその辺をちらつかせつつ言う。 #不知火に落ち度はない

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ではここで失礼、と言いつつ缶コーヒーを開ける。 「俺達にできるのは、護衛に整備に寝床の準備と、あとはいざって時の後ろ盾。あと励まし程度」 まあ、いざって時は来て欲しくねえけどなー。 「彼女らが日常を謳歌できるとこを用意するまで、至らないのが現状です」 #不知火に落ち度はない

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「艦娘の未来を考える、というのも立派だけど。今もどうか考えてやっちゃいただけませんか？」 「いや……でも、何やっていいか……」 ま、そうだろね。いきなり投げたんだし。 「ウチの艦娘や職員を見たら、がんばってるねと声かけてくれるだけでいいんすわ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それ以上となると──例えば、作戦で訪れたときにでも、ちょっといい場所教えてやるとか」 観光案内のを人を見る。 「コンビニで買い物するとき、ちょいっと余ったおまけ付けて貰えるとかね？」 コンビニ店員を見る。 「好かれてるってだけで、やる気は出る」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そうやって日常に参加させてやっちゃくれませんか？ ウチの連中、俺みたいなのに使われて日々不満あるでしょし」 くっと、酒でも飲む気で珈琲を一杯。 あーおいし。 ああどうぞ、と、周囲にも再度進めてみると、かしゅ、とプルタブの開く音がする。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「俺達で手は尽くしちゃ居るが、俺達で何でもできるってほど万能じゃないのも事実でしてね」 と、言うわけでさっと頭を下げて頼みましょ-。 司令官だからこそ、頭下げたほがいんすよ。 「どうか、ご協力をよろしくお願いします」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そしたらですね。ぱち、ぱち。 ぱちぱちぱちと、拍手飛んできましたよ。 お、おおう？ 予想外じゃないっすかこれ。 「わかりました。少なくともここの基地とは、良い関係を築いていきたいと思います」 「ああ、こいつはどうも」 握手求められちった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「できれば、他ンところも頼みます。かわいそう、って言うんじゃなくがんばったって、褒めてやってくださいな。磯波とかね」 「はい。それはもちろん。抗議ではなく、支援していく方向にします」 「どうか、よろしくお願いします」 さて、と。問題は解決した。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あと、うち基地祭もやってるんで、よかったら開催時ご来場ください。イメージ変わると思うんで」 「そんなにですか？」 「那珂ちゃんていうアイドルも居ますからね」 あれはあれで、真剣にやってるからねえ。 宣伝しておきたい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それじゃ、皆さん。こうして集まられると、非番の子がなんかあるのか、って心配になる」 「そうですね。では──解散します」 「はい。では、道中お気を付けて」 お見送り姿勢である。 ぱたぱた手を振ってまた今度ネー。 あー、話聞いてくれる子でよかった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『おつかれさまー。兵頭っちー』 「おう、北上もご苦労。思いの外素直な団体で安心したぜ」 『ま、兵頭っちの本音もあったんしょ？ 通じてよかったじゃん』 「まーな。じゃ、そっち帰るわ」 ああ、心が軽くなったわ。話通じる団体を味方に付けると嬉しい。 #不知火に落ち度はない

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『兵頭っち。ところがそうは行かないんだなー』 「は、何よ？」 『ひめゆりの会からメール来てる。そっち行くぞって』 「やだー！！！！」 言葉通じない方のもきたー！！ 「北上、ロケラン、ロケラン頼む」 『司令は忙しいから後で、とは送り返したけど』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そんなん聞くわけないじゃん。あの奥様コーラス会の気分で萎えソング歌う連中に！！！」 『いっそ後楽園ホール貸してリサイタルしてもらったら？』 「メガホンなくても周囲から苦情はいんだぞあれ」 『いっそ暴力に出て欲しいよねえ』 うん。しょっぴきたい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ああ、ひめゆりの会が実は資金提供されてるとか、利益目的の情報とかないの？」 『ないんだなあ、これが。あったらそっから潰すでしょ。あれ純粋な八つ当たりだからね』 「世界滅べって思うよなあ」 『だよねー。あ、ちな30分ぐらいで来るそうだから網はっといて』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「俺、昼飯まだなんすけど」 『ご愁傷様ー』 「俺の分のパン買ってきて？」 『高いよ？』 もうそれでいいですからお願いします。 御飯なしであいつらと戦えない。 そうして、俺の真の戦いが幕を開けたのである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「づ…がれた……」 ひめゆりの会は宣言通り到着。 守衛プラス俺プラス整備班で延々来る文句を説明で返すプレイ。 2時間はそれで残りは奥様コーラスソング30分リサイタル後ご近所に謝る会。 座り込みしないように段ボールは即撤去。 俺のライフはもうゼロよ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

計４時間に及ぶ対処活動のち、奥様が捨ててったゴミをかたすお仕事。 あいつら、ランチパック食べながら抗議すんだもん。あとお弁当とかローテで食べるんだもん。 ゴミ箱用意しない方が悪いって、お前らに用意するゴミ箱はねえ。 持って帰ってよせめて、ねえ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ご近所の方々のご理解があり、ゴミの回収とかは手伝って貰えたんだけどね。 そろそろタイヤとかパンクして行動不能になんねえかな。 この危機下で早くブーム去ってくれと祈るばかりであり。 そんなの人類ある限り無くならないってのが定説である。 滅べ人類。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「と、言うわけなんだよ。もう俺今日仕事したくねえ」 「そうなの？ あ、カップ麺貰うねー」 ばりばりー。 あんまりにもあんまりな精神なので、自室こと工廠課の旧宿直室に逃げ込んだ俺なのですが。 そこで対処に困る奴が屋根裏から出てきました。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

Q,だれですか？ A,お昼寝戦隊センダインです。 なんでお前ンなとこから出てくるんだよ！お前の巣じゃなくってさあ！ 「いやあ。昼間だと寝心地いいんだよ。誰も居ないし」 「どこで寝てんの？」 「屋根裏だけど」 #不知火に落ち度はない