「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・フィクション」 #5

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待てイ!待てイ、ニンジャスレイヤー=サン!」高揚し叫び声をあげながら、ビーハイヴは危険なオジギ姿勢のままで薄暗い路地裏を突き進んだ。ここはマルノウチのサラリマン向けレストラン区域であり、路地裏には汚いポリバケツやトーフ屑、ユバ等が散乱している。

2010-12-24 16:58:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガトリング・ガンを背負ったビーハイヴが機関車めいた勢いで駆け抜けると、ラーメン・レーションの廃棄物をかじるバイオハツカネズミが小さく鳴きながら建物の隙間へてんでに逃げ込んだ。

2010-12-24 17:02:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこだーッ!」ビーハイヴは叫んだ。オフィス街とはうってかわった薄暗さ・薄汚さは、見える場所だけ綺麗にすれば良いというマッポー的価値観の産物のようでもあった。表ではサラリマンたちがスシやトーフ、スブタなどに舌鼓を打っているのであろう。ビーハイヴの胸中になぜか憎しみが湧き上がる。

2010-12-24 17:11:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「臆病者ーッ!蜂の巣にしてくれるぞーッ!」ビーハイヴは逆上して叫んだ。自慢のオジギ・ガトリングがシンジケートの査定機構に「礼儀を知らぬ」と断じられてしまったが為に、ビーハイヴはソウカイ・シックスゲイツのアンダーニンジャに甘んじている。彼はその評価を不当と感じていた。

2010-12-24 17:55:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

体面や礼儀ばかり重んじる偽善者どもめ。ビーハイヴは毎夜乱暴にマイコを抱きながら、己の不遇を嘆き、憎しんだ。ニンジャスレイヤーを殺し、有無を言わせず成り上がってやる!……このマルノウチの路地裏と表通りの対比は彼の憎むタテマエ社会を連想させ、彼のトラウマ的な怒りを喚起するのだった。

2010-12-24 18:01:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこだーッ!」ビーハイヴが叫び、ガトリング・ガンを建物の背中に向けて無益に撃ち散らす。バイオコウモリがポリバケツから複数飛び立った。ブキミ!「どこだーッ、ニンジャス……」「イヤーッ!」「グワーッ!?」背後に打撃を受け、ビーハイヴはよろめいた。巨大な武器のせいで背後が死角なのだ!

2010-12-24 19:00:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「う、うしろキサマ……」「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに背中に打撃を受ける!慌てて振り返るも、敵の姿は既に無い。ビーハイヴはうろたえた。気に食わぬ相手を自慢のオジギ・ガトリングの初見殺しで葬ってきた彼は、いざ戦端が開かれると経験不足を露呈させてしまったのである。

2010-12-24 19:12:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこにいるーッ!」パニックに陥ったビーハイヴは、オジギ姿勢で背中のガトリングを無駄撃ちしながら回転した。弾丸はエアパイプに着弾し、そこから水蒸気が勢いよく噴き出す。ニンジャスレイヤーは見当たらぬ!「クソーッ!卑怯だぞ!姿を見せいーッ!」

2010-12-24 19:15:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「卑怯てか!語るに落ちたな、ビーハイヴ=サン!」路地裏に笑い声が反響する!「インガオホー!礼儀を知らぬニンジャなど、所詮はサンシタ。オヌシの乱れたカラテがそれを証明しているのだ!」「どこだーッ!」ビーハイヴがガトリングを乱射する!ニンジャスレイヤーの姿は現れぬ!

2010-12-24 19:20:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがてガトリング・ガンの弾薬が切れる。ヒュンヒュンとむなしい音を立ててガトリング・ドラムは回転するばかりだった。「リ、リロードだ……」「イヤーッ!」うろたえたビーハイヴの前に、バク転しながらニンジャスレイヤーがエントリーした。「ドーモ、ビーハイヴ=サン。ニンジャスレイヤーです」

2010-12-24 19:31:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはアイサツした。弾薬カートリッジの交換に手間取るビーハイヴを弄ぶかの様な、ゆっくりとしたオジギであった。「お、おのれ!くらえーッ!」リロードが成った。ビーハイヴはガトリングを意気揚々とニンジャスレイヤーへ、「イヤーッ!」「グワーッ!」

2010-12-24 19:45:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガトリング乱射のためにオジギ姿勢を取る事は、敵のもっとも蹴りやすい位置へ自分の頭を持っていく行為に他ならない。ニンジャスレイヤーは待ち構えたかのようなサマーソルト・キックをビーハイヴのオジギに合わせて繰り出したのだ!したたか蹴り上げられたビーハイヴは顎先を複雑骨折しつつ転倒した!

2010-12-24 19:52:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グ、グワーッ!」ビーハイヴは血を吐き、手足をバタつかせてもがいた。「う、動けない!?」いかにも!仰向けに倒れたビーハイヴは、背中のガトリング・ガンが重過ぎるが故に、ひっくり返されたウミガメめいて独力では起き上がる事ができないのである!「グワーッ!グワーッ!」

2010-12-24 21:09:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さあ、まずは一人だ」ニンジャスレイヤーは冷酷に、もがくビーハイヴの周りを歩き回る。「た……助けてくれーッ!テンカウント=サン!ワイアード=サン!」助けは来ない!インガオホー!功を焦るがあまり、独力先行したビーハイヴは他の暗殺ニンジャを大きく引き離してしまったのだ。

2010-12-24 21:13:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オヌシにさほど恨みは無いが、ソウカイヤのニンジャである以上、殺す以外の選択肢など無い」ニンジャスレイヤーは言い放った。「礼儀を軽んじたオヌシの愚が、このような恥の中での死を招いたのだ。後悔しながら地獄へ落ちるがいい」「ア、アイエエエ……」

2010-12-24 21:18:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはおもむろに右足を振り上げ、仰向けのビーハイヴを強烈に踏み付けた!「イヤーッ!」「グワーッ!」一度ではない。繰り返される激しいストンピングは、あまりにも容赦なくビーハイヴの肉体を貫き、破壊してゆく。

2010-12-24 21:21:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!グワーッ!グワーッグワーッグ、グワーッ!グワーッ!グワーッワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワ、グワーッ!」

2010-12-24 21:24:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ……。……」やがて、ガトリング・ガンの残骸まじりのもの言わぬ死となったビーハイヴを見下ろしたニンジャスレイヤーは、接近しつつある複数の足音をニンジャ聴力で聞き取った。

2010-12-24 21:28:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の目は苦悩に細まる。なぜ暗殺計画はラオモトにツツヌケであったのか。追跡中に別れた二台の車両。次第に不自然となっていったナンシーからのIRCメッセージは何を意味するのか。彼女が裏切ったか?

2010-12-24 21:30:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

馬鹿な!己を恥じよフジキド!彼女は高潔で決断的な戦士である。互いに幾度も死線をくぐり抜けてきた彼女が裏切るなど、万に一つも無い。……となれば……「無事でいてくれ、ナンシー=サン」ニンジャスレイヤーはうつむき、喉から絞り出すように呟いた。

2010-12-24 21:33:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

追跡の足跡はいよいよ近い。ニンジャスレイヤーは闇の中に溶け込み、彼らの襲撃を待ち構える。真のニンジャの戦さを……見せる時だ。

2010-12-24 21:35:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・フィクション」#5 おわり。#6へ続く

2010-12-24 21:37:20