浦賀ドック写真の「公表禁止」と所有権に関する考察──浦賀船渠ノ航跡中止事件

住友重機械工業株式会社が所有する旧・浦賀艦船工場 敷地内にある「1号ドック」(通称 レンガドック)の見学会では、「公表禁止」を条件として写真撮影が許可されています。ドック見学会での「 ■撮影した写真の公表はご遠慮願います 」という告知の法的拘束力について、@kotyi3 さんによる検討をまとめます。 →▼浦賀ドック見学会で撮影した写真の「利用条件」について - Togetter https://togetter.com/li/826052 →▼所有権と著作権と浦賀船渠ノ航跡と - Togetter https://togetter.com/li/845280
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コティ@色々準備中 @kotyi3

となると、民法206条で写真の無断使用は法的にアウトになっちゃいますかねぇ? 数多のレンガドック写真のWEB掲載も住重さんが内心どう思われてるのか・・・。 twitter.com/nysalor/status…

2015-05-30 21:52:36
ないさろーる @nysalor

先日、浦賀船渠の名前を使った某イベント中止絡みで「住重が写真のパンフ利用を問題視することはないのでは?」という推測がありましたが、はっきり問題視していると言われました。イベント中止の経緯については何も知りませんが、写真の利用については実際に禁止になっているとここに記しておきます

2015-05-23 20:17:24

 ※引用リンク先は @nysalor さんによる次のツイート。

  • 「先日、浦賀船渠の名前を使った某イベント中止絡みで 「住重が写真のパンフ利用を問題視することはないのでは?」 という推測がありましたが、はっきり問題視していると言われました。イベント〔同人誌即売会「浦賀船渠ノ航跡」〕中止の経緯については何も知りませんが、写真の利用については実際に禁止になっていると ここに記しておきます」(2015/05/23 20:17) http://twitter.com/nysalor/status/602070821797044224

 ※「民法206条」は次の条文。

  • 第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
     
コティ@色々準備中 @kotyi3

浦賀船渠のロゴの無断使用も実際かなりやばい。今回たまたま住重さんが商標権持ってなかったけど、もし持ってたら・・・と思うと、ね。ああいうのって使う前に問題ないか確認とるべきなんだけど、主催の小川さんは確認してなかった様だし。そりゃコンプライアンス違反って言われてしまいますよ。

2015-05-30 21:58:47
コティ@色々準備中 @kotyi3

中間レポートは「著作権法46条で浦賀ドック写真の無断使用可能」という前提で後乗りメンバー糾弾してるので、そこだけは要修正だと思ってます。読む人もそこらへん気をつけて読まないといけないんじゃないかな?

2015-05-30 22:05:07
コティ@色々準備中 @kotyi3

それと当時の運営メンバーは「レンガドックの写真をどのように調達したか」ってことも知らなかったと思いますよ。小川さんは「許可は取ってない」としか返信しなかったので。

2015-05-30 22:08:09

 ※「某中間レポート」は次のブログ記事を指す。

 

 

(参考)

  • 日本国憲法 | e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION

    第29条 財産権は、これを侵してはならない。
     ○2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
     ○3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

  • 民法 | e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

    第三章 所有権
        第一節 所有権の限界
        第一款 所有権の内容及び範囲
     (所有権の内容)
    第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
     (土地所有権の範囲)
    第207条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

 

 

 (展示権)
第25条 著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。

 (美術の著作物等の原作品の所有者による展示)
第45条 美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
 2 前項の規定は、美術の著作物の原作品を街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合には、適用しない。

 (公開の美術の著作物等の利用)
第46条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
 一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
 二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
 三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
 四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

 
 

(参考記事)

  • 先生!それは疑似著作権とは違うと思います。|花水木法律事務所 http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-6cd5.html

    建築物の写真について考えてみたい。
    確かに、敷地内での撮影が禁止されている建築物は多い。これは撮影を禁止する権利がないのに禁止しているのだろうか。
    そうではない。建物の所有者は、所有権の一内容である施設管理権の効果として、入場者の写真撮影を禁止することができる。
    レストランで料理の撮影を禁止できるのも、貸店舗内で菓子の撮影を禁止できるのも、施設管理権の効果だ。もちろん、禁止に反して撮影した画像の公開を差し止めることもできるだろう。
    これらは立派な法的根拠があるから、疑似著作権ではない。権利者が間違って著作権と主張する場合もあるだろう。だが権利は確かにあるのだから、目くじらを立てるほどのことではない。

     もちろん、撮影者が敷地に入らなければ、敷地管理権に従う義務はないし、その写真を公開することは、著作権法に違反しない。
    著作権法46条は、建物の写真を公開することは著作権の侵害にならないことを裏から認めている。菓子はもともと著作物でない(それ自体美術品と評価できるような菓子は除く)から、持って帰った菓子の撮影画像を公開しても著作権法に違反しない。

 

  • 著作権──撮影禁止の建物を合法的にブログ掲載するには|PRESIDENT Online - プレジデント https://president.jp/articles/-/2180

    知的財産権に精通する、竹田綜合法律事務所の木村耕太郎弁護士は 『撮影禁止ルールを破って写真を撮る行為は、神社仏閣の『敷地管理権の侵害として、問題が処理されうる』 と話す。
    写真撮影を制限する対応は、その神社や寺院などが持つ敷地の管理権(「所有物の使用、収益」)を根拠に許されるわけだ。

     民法206条は、一般論として 『所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する』 と定めている。
    地主が自分の土地を使ってトクをしようとする行為は、原則として他の誰にも差し止められない。これは「私的所有権絶対の原則」と呼ばれ、国家にも干渉されない神聖な権利だとされている。
     〔※中略〕
    宗教団体が利益を追求しない存在であったとしても、あるいはその建造物が文化や歴史と結びついた公共財であったとしても、敷地を所有していれば、その所有権は絶対であり、敷地内でルールに反して撮影すれば、不法行為として、損害賠償を求められる可能性がある。

     『ただ、撮影禁止の施設であっても、〔私有地でない〕公道からの撮影であれば、プライバシー侵害など別の問題が生じない限り、法律上許される。撮影料を請求されても支払うかどうかは自由』(木村弁護士)

     なお、敷地内から撮影する場合、『不法行為の成否は、敷地管理者が看板などを立てて、撮影禁止のルールを明示しているかどうかが分かれ目になる』(同)。

 

  • 業務のご案内 〜知的財産権・知的資産|東京都行政書士会 http://www.tokyo-gyosei.or.jp/business/copyright/faq1.html

    . 著作権が消滅しているはずの古美術や社寺などの古い建造物を写真に撮影する際、所蔵者や社寺等に許可を得るのはなぜですか?

    . 著作権ではなく、所有権に基づいて許可を要求しています。
    古美術や社寺などの古い建造物は「著作物」に該当します。しかし、これらは古い時代に創作されたものですから当然に著作物としての保護期間は経過しており、著作権は消滅しています。
    それにもかかわらずこれらを写真に撮影する際に許可を要求しているのは、所蔵者が自ら有する所有権を行使した結果と考えられます。
    所有権とは、人(所有者)が特定の物(所有物)を、法令の制限内において自由に使用、収益、処分することができる権利です。したがって、所蔵者が所有権に基づきその所蔵物の利用につき制限を加える、すなわち許可を得なければ写真撮影を許さないという制限を加えることができると考えられます。
     参考条文:民法第206条

 

  • 写真と法 その3 建築写真|artscoop https://web.archive.org/web/20150511025453/http://artscoop.jp/artlaw/picture03

    では、有名なお寺、神社や美術館において、「撮影禁止」とか「無断撮影はご遠慮ください」などという看板を見かけることがありますが、あれはどういうことなのでしょうか? このとき、注意書きを無視し、あるいはうっかり気づかず、建築物を撮影し、それをブログに掲載したり出版したりした場合、どのような法的問題が生じるのでしょうか?

     あれは、敷地の所有権に基づき、敷地内での撮影行為を制限しているのです。
    敷地での行動は、敷地の所有権に基づき、基本的には敷地の管理権者に従わなければなりません。従って、撮影禁止などの注意書きがある場合には、敷地内から建築物を撮影する場合には、敷地の管理権者からの許諾が必要です。

     一方、敷地外から建築物を撮影する場合には、敷地の管理者に行動を制限されるいわれはないので、プライバシーの侵害などの問題がない限り、敷地の管理権者からの許諾は不要で、問題なく撮影することができます。

     ただし、有名な建築物の写真を商用利用する場合には、ちょっとした配慮が必要です。有名な建築物には、その外観によって顧客を引きつける力、すなわち顧客誘引力がありますので、その経済的利益は法的に保護される場合があります。
     日本では、パブリシティ権は芸能人やスポーツ選手などの有名な「人物」についてのみ認められており、建築のような「物」のパブリシティ権(いわゆる「物パブ」とか言います)というのは最高裁判所の判例で明確に否定されています。しかし、地裁・高裁レベルでは、有名なプロダクトや建築物につき、民法の不法行為により損害賠償請求を認めたものがあります。

 

 

  • 建物や公園を無断撮影すると、著作権侵害になるの?/【漫画】僕と彼女と著作権・第9話|Web担当者Forum https://webtan.impress.co.jp/e/2014/08/19/17297

    〔山ノ内くん:〕 建物や施設などの所有者・管理者が、写真撮影を禁止したり、撮影許可を求めたりしているケースもありますね。
    〔有栖川さん:〕 そうね。
    〔山ノ内くん:〕 これは、著作権でないとすると、どういう根拠に基づくものですか?
    〔有栖川さん:〕 敷地内建物内に立ち入って写真撮影をする場合には、敷地・建物の所有権や管理権ね。正確にいうと、「そういう人は入るなと求める権利なんだけど。
    〔山ノ内くん:〕 敷地の外からの撮影だと、どうなりますか?
    〔有栖川さん:〕 敷地の外からの撮影の場合、所有者・管理権者には、所有権や管理権に基づいて、建物・敷地の撮影の禁止や許可、写真の利用の差止めや削除を求めたりする請求権は認められていないわ。

 

  • [知的財産] 神社・寺院内の写真使用について(回答: 國安耕太 弁護士)|弁護士ドットコム http://www.bengo4.com/c_1015/c_17/b_217979/

    . 神社・寺院内で「自分で」撮影した写真は、商業利用できるのでしょうか?

    .〔※略〕 また、寺社の敷地内で撮影した場合、寺社の敷地管理権の侵害として、不法行為責任を負う可能性があります。
    これは、所有者は、「〔(所有権の内容)〕 法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」(民法206条)とされており、自己の敷地内〔所有地内〕でどのような行為を許諾するかは所有者の自由と考えられているためです。
     
     したがって、美術の著作物にあたらない、美術の著作物にあたるとしても、保護期間を過ぎており、著作権法の保護を受けない場合であっても、寺社に無断で商業利用することにはリスクがあると思います。

 

  • 文章のための法律相談 ブログ編(5) 〜建築物の写り込み〜〔監修/宣伝会議 法務室〕|編集会議.com http://www.henshukaigi.com/faq/000564.html

    著作権法上では、シンデレラ城は「建築の著作物」ですから、原則的には敷地内から撮影したものでも自由に利用できます。
    しかし、敷地内で撮影した写真は、その敷地権利者の「施設の所有権・管理権」との関係がありますから、念のため掲載は差し控えた方がよいでしょう。
    「施設の所有権・管理権」では、敷地内における撮影が禁止されている際、それに従わなければなりません。
    この場合、撮影ができないだけではなく、撮影した写真などの自由利用が制限されることがありますので注意が必要です。
     〔※中略〕
    ただし、意図的または商業目的に利用するために、これらの著作物などの写真をブログや映像広告の中核的な背景(メインビジュアル)として利用すると、不正競争防止(有名なものに便乗している)などの面からクレームを受けるおそれがあります。
    そのような目的で利用する場合は、事前に所有者に照会するなどの手続きを踏むに越したことはありません。

 

 

  • インターネット上の発言と法的責任:物の写真の利用〔弁護士 石井邦尚〕|法律コラム|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] https://web.archive.org/web/20130121012432/http://j-net21.smrj.go.jp/well/law/column/post_153.html

     ただし、著作権や作品の所有権とは別に、美術館等の施設管理権などに基づいて、館内での写真撮影を禁止することはできるので、保護期間経過により著作権法上の問題がないからといって、安易に撮影をしないようにしてください。
     さらに、少し話がややこしくなりますが、美術品を撮影した写真(例えば、古い壺を撮影した写真)自体に著作権が発生している場合がありますので、被写体が保護期間経過後であっても、そうした写真の利用には、写真撮影者等から使用許諾を得る必要があります。

 

  • ネット動画の「生配信」 法律的に注意すべき3つのこと|弁護士ドットコムニュース http://www.bengo4.com/internet/n_420/

    ●撮影場所・肖像権・著作権の3点に注意が必要
     三平〔聡史〕弁護士によると、動画を配信サイトに投稿(アップロード)する時に、注意すべき点(法律・権利)は主に次の3つだという。
     (1)その場所が『撮影OK』かどうか
     (2)他人の『肖像権・プライバシー権』は大丈夫か
     (3)著作権に問題はないか

    それぞれ解説してもらおう。
     (1)場所
    『場所によっては、動画や写真の撮影自体が禁止されます。『施設管理権』(最判平成7年3月7日〔民集49・3・687〕)の一環として『撮影禁止』となっているお店、建物もあります。よく確認しましょう』〔三平弁護士〕

 

 

  • 写真撮影における著作権や権利関係|夜景撮影.com https://www.yakei-photo.jp/satsuei/chapter-08/contents-071.html

    (1)撮影する場所の権利

     夜景撮影は山や丘の高台、公園、ビルの展望室など様々な場所で楽しめるのが魅力。ただし、撮影時に気をつけないといけないのが、 私有地や施設管理者がいる場所での撮影。
    公道などでは基本的に場所を占有しない限り自由に撮影できると解されていますが、私有地などは施設管理者の定めたルールに従う必要があります。これを「施設管理権」と言い、民法206条の所有権が根拠になっているようです。

     一般的にビルの展望室などでは三脚や暗幕を禁止されているケースが目立ちますが、施設管理者は基本的人権に接触しない限り、自由にルールを決めることができるようです。

 

  • 著作権Q&A|著作権なるほど質問箱|文化庁 https://web.archive.org/web/20130105083101/http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000341

    .「美術館などで、「写真撮影禁止」の張り紙があったり、コンサートで「録音、録画禁止」(機器の持込み禁止)とされていることがありますが、これに従わないと著作権侵害になるのでしょうか。

     . 著作権侵害にはなりませんが、美術館やコンサートの主催者の了解がないと撮影等はできないと考えられます。
     美術作品の写真撮影や演奏会の録音録画は著作物や実演の複製に該当しますが、私的使用のための複製(第30条)は認められており、この規定の範囲内で行われる複製であれば著作権侵害にはなりません。
    しかし、この場合、主催者は、会場の混乱を避けるため、複製物が商業的な利用をされるのを防止するため、出演者から撮影等の禁止を求められたためなどの様々な理由により、会場管理者としての権限に基づき規制を設けていると考えられますので、一般的には参加者はその指示に従う必要があると考えられます。

 

  • 「写真撮影禁止」は法的拘束力のないローカルルールではない問題 by 山口あお | ShortNote https://www.shortnote.jp/view/notes/AARUCWrX

    . 自己の所有する土地への立入りを、どのような人間に対し、どのような制限を付加して認めるかは、所有者がその所有権の権能の一部(敷地管理権)として自由に定めることができます
     ※「私の土地で息をするな」といった制限は公序良俗に反し無効であって、民法上なんら意味を持ちませんが、「私の土地に入るなら写真撮影をするな」という制限は公序良俗には反しません。

    2. 敷地管理権による制限に反すると、所有権侵害に基づく損害賠償請求が可能となります。また、妨害排除請求として侵害物件の廃棄を求めることも可能となると考えられます。

    3. もっとも、敷地管理権による制限が明示されていなければ、撮影者側の過失なしとして損害賠償請求が認められない可能性はあります。なお、妨害排除請求は過失が要件とはなっておりませんので、侵害物件の廃棄はなお求められる可能性はあります。
     〔※中略〕
     
    追記: 顔真卿事件判決(最高裁昭和59年1月20日)から、建築物を写真に撮って使用収益する行為は所有権(有体物としての権利)ではなく著作権(無対物としての権利)の保護範囲に抵触されるとされていますので、建築物の写真を無断撮影して使用収益したことについて、所有権に基づいて何らかの請求をすることは難しそうです。著作権法でも不可能。私有地に立ち入っての撮影の場合に限り、私有地立入りに当たって口頭で「建物の撮影をしないこと」を条件とする契約を交わしたとして、契約違反に基づく債務不履行責任を追及するほかなさそうです。

 

 

 

(建築物と著作権法第46条)

 

  

(同人誌即売会「浦賀船渠ノ航跡」中止 関連リンク)