- sizuoka074
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放課後まどかの家に行くことになってるさやか。そこまではまあいつも通りなんだけど、「今日、パパとママ家にいないの……」って言われてしまい、鹿目家についてからもほとんど会話がない。昔こういう話をしたよね、みたいなことをぽつぽつ話ながら二人はお台所で夕飯の支度をし始めるのでした。
2015-05-24 19:27:31夕飯の支度もすっかり終わり、ぽつんと日も暮れた頃に会話がなくなり、なんとなく手持ちぶさたになった静かなキッチンで、まどかがちらちらっとさやかを見ながら、さやかが察するのを理解したまどかは「…する?」と問い、さやかは「…うん」と応えて、そっとまどかを腕の中に包み込む
2015-05-24 19:29:52そのまま言葉もなくちょっと抱き合ってるとまどかが「あのね、わたしさやかちゃんに喜んでほしくて、いっぱい勉強したんだけど…」「…うん」「…うまくできなかったら、ごめんね?わたしさやかちゃんのために頑張るから…」「…うん」さやかはまどかのつむじにそっとキスを落とす
2015-05-24 19:31:16「…じゃあ、はじめよっか」まどかはさやかの手に抱かれながら、そっと流し台の米びつに手を入れた。ひんやりと、もちもちとした手触り。まどかはその感触に甘い吐息をもらしながら、そっとその中に指をしずめた。酢の香りがふわりとひろがる。まどかはおずおずと、幼馴染みのために手を動かしはじめた
2015-05-24 19:34:11いつくしむような手つきで、本やビデオで勉強したとおりにそっとコメを握る。はじめてだったから、うまくできてるかわからない。だけどなるだけ早くするといいとは聞いていたから、すっ、すっと手を動かして、コメを俵型ににぎりこむ。酢の香りに刺激され、さやかの眉根が、きゅっと寄った。
2015-05-24 19:35:50(感じてるんだ)まどかは角砂糖のような甘いきもちに包まれた。もっとしてあげたくなり、先ほど用意して置いたマグロの切り身に手を伸ばす。昨日デパートの地下に行って、お魚屋さんのおじさんに聞きながら選んだマグロは、目の中でとてもつやつやとしていて、てらてらと光っていた。
2015-05-24 19:38:02指でそっとつまみあげて、コメの上に乗せる。さやかはもう我慢できなくなっているのか、まどかをきゅっと抱きしめたまま、もぞもぞと身じろぎしていた。やわらかなふとももとふとももがふれあい、まどかもため息をもらしかける。マグロと酢のにおいはまどかもひしひしと刺激してきて、たまらなかった。
2015-05-24 19:40:30だけど、今はさやかちゃんのためにしてあげたい。まどかは内股をぶるりと震わせて、最後にきゅっと力を込めて銀の皿の上のマグロを、さやかのためだけに存在する、まどかのはじめてを差しだした。
2015-05-24 19:42:41「わたしのはじめて、さやかちゃんが奪って」震える舌でそう告げると、ガチガチになったさやかがごくりと生唾を飲むのがわかった。先ほどまでまどかを抱きしめていた手がいつのまにかまどかの胸の前まで離れ、手持ちぶさたにわなわなと揺れていた。
2015-05-24 19:44:30まどかはそこに手を添え、おずおずとその場所へ導いていった。そのまま指先が、ふれる。さやかはぴくりと背筋を揺らし、そこでやっと指を開いて、まどかのはじめてに手を触れた。さやかの手の中で、まどかがはじめて握ったマグロはきゅっと小さくちぢこまっていた。
2015-05-24 19:47:10それはまるでさやかが今腕の中にかき抱いているまどかそのものだった。腰の下あたりが、ぴくん、と電気を受けたように震える。さやかは熱に浮かされたように、手の中でつやつやと光る国産クロマグロのスシを口に運んだ。
2015-05-24 19:48:44「ふ、ぁっ…」さやかがスシを頬張った瞬間、まどかは子犬のような声をあげた。さやかのほっそりとしたあごが上下に動き、まどかが握ったそのスシをぷちぷちと噛みほどいていくその様を、まどかは切なげに体を揺らし、甘やかな声を上げて見つめ続けた。
2015-05-24 19:51:11ごくり、とさやかの喉が動き、スシをいに送り込んだ瞬間、「……んっ」まどかは緊張の糸が切れ、くってりとさやかの体を預けた。息はたくさんの距離を走ったように荒くなり、頬はさくらんぼのような色。がくがくと膝を震わせていまにも倒れ込みそうなまどかを、さやかはしっかりと抱き留めた。
2015-05-24 19:53:17「さやか、ちゃん」まどかはとろんとした目でさやかの青い眼を見上げると、それはまどかの目と同じぐらい潤んで、きらきらと輝いていた。「……わたし、上手にできた?」うん、さやかがうなずくと、まどかは綿菓子のような笑みを浮かべた「えへへ…よかった…」
2015-05-24 19:55:32さやかの口の端についた、小さな、白い米粒を、まどかは甘やかな目で見上げた。台所には酢のにおいがいっぱいで、まな板の上に広がったスシネタは二人がこれまで過ごしてきた年数を合わせたよりもある。
2015-05-24 19:58:12「…しばらくこうしてて欲しいな」うん、とさやかがうなずくのを見てから、まどかは体の力を抜いて、さやかに自分のすべてをゆだねた。そしてまた米びつに手を差し入れて、ゆっくり、ゆっくりとスシを握りだす。
2015-05-24 19:59:57海ははい色のまきばです。白波はめんようの群であろう。カモメがABCを描いて飛んでいく海の中をいきいきと泳ぐマグロのように、それからしばらくまどかとさやかは互いにスシを握り合った。
2015-05-24 20:01:02