不知火に落ち度はない　39（神通）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「迷ってないなら手伝うけど、そこまで面倒みないねー」 「はいはい。哨戒情報どうなってる？」 「観測台からは指数変動マイナス１０。このまま帰していんじゃない？」 「いや、継続」 「球磨、今日見たいアニメがあるらしいよ」 「いくらで引き受けた」 #不知火に落ち度はない

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隊長は球磨である。立ち位置的に妹分のはずだが、対等な関係。 血縁じゃないからなあ、あいつらは。 「金だけが全てじゃないんだよねー」 「何が目当てだったんだ」 「石狩鍋」 食い物で懐柔されおって。 「で、根拠は？」 「天気図見てみ」 #不知火に落ち度はない

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天気図上の高気圧と低気圧の配置。 現在は晴れだが、このまま行けば指定海域は曇りになる。 そして海流のデータを参照。 「北上、潮の流れこっちに来てるだろ？」 「おや。そだね」 「襲撃するには格好のチャンスじゃねえか？」 「兵頭っちのカン信じましょー」 #不知火に落ち度はない

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『うぉーいすクマ。北上ー聞こえてる－？』 「あ、早速来たよ。撤退命令はまだクマー」 『真似すんなクマぁ－！！』 「妹分アピールしてみたクマー」 「はいはい。悪い、アンパンマンは後だ」 『違うクマ。プリキュア再放送クマよ』 ファンシーだな？！ #不知火に落ち度はない

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『そんなわけで雲行き怪しいし、さっさと帰りたいクマ。今日楽しみな回だし』 「悪い球磨。ちょっと偵察機飛ばして確認してみてくんね？」 『どっち方向クマー？』 「雲の出てる方」 かしょん、と無線の向こうで発進音がした。 #不知火に落ち度はない

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１、２、３、４。 『ずあー。ホントにいたクマー！！』 球磨から悲鳴が聞こえた。 「おっしゃ、北上戦闘配備」 「あいさぁー。データ送って球磨」 『重巡２、軽巡２、潜水艦１。うち軽巡が赤いやつ！』 「総員戦闘配置。エリートクラス2機いんぞ」 #不知火に落ち度はない

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『全員魚雷警戒！ 戦闘配置つけー！』 「潜水艦は逃がしてかまわん。単縦陣でエリートクラス逃がすな」 「センサーに他感あり。三連戦ぐらいになるよ、多分」 北上が他情報から読み上げる。 矢継ぎ早にデータが送られる。 「球磨、やっちまえ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『お前らなんかプリキュア放送までに仕留めてやるクマァー！！！！！』 そうして海戦が始まった。 うーむ。片桐の情報の見方参考にしたが、当たるモンだな、意外と。 俺だと４０％ぐらいだけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そそこから二連戦をこなしこちらの被害は、球磨が小破。 相手は壊滅し、三連戦目を前に、敵が撤退という顛末となった。 『うがー！！！ プリキュアOPにまにあわねえクマー！！』 本気を出した球磨に恐れをなしたとも言う。 大した暴れッぷりであったからな。 #不知火に落ち度はない

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そうそうたる戦果だよな。 あいつ一人でどんだけ沈めたんだ。 それから、無事に帰投を確認し哨戒任務はほぼ終了。 深海棲艦指数は右肩下がりで本日の出番もうなさそうである。 北上はとっくにタイムカード切って、録画のプリキュア見に行った。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

後は俺が残業するだけであるのだが。 「お疲れ様ー」 などと、天井から声がかかる。 とりあえず紙の手裏剣シュッシュシュ。 それをあっさりキャッチする川内が居た。 服装は──あれ私服？ 「よう川内。何用か」 「お命頂戴」 え、マジで。 #不知火に落ち度はない

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「待て待て、お命頂戴ってどういう訳だ」 「ああ、勢い勢い。別に提督の命はいいや」 「だよな。それで何そのかっこ」 「なにって……忘れてない？」 「何が」 「神通との約束」 あ、そういや。 明日非番だったな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「提督忘れっぽくない？ 大丈夫？」 「お前だけには言われたくなかった。いや、行くのは行くんだが時間がちとな」 北上帰っちゃったし。 ここ開けるわけに行かないし。 「あー。仕事で埋まってる？」 「おおむね」 どうするかと考えてたわけだが。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ふっふっふ。そうだと思って那珂ちゃん連れてきました」 「こーんばーんわー☆ なっかちゃんだよー☆」 天井裏からアイドル引きずり出してきた－！！ 「と、いうわけでぇ、那珂ちゃんがスペシャルお電話番するから大丈夫☆」 「うっわー」 不安しかねえ。 #不知火に落ち度はない

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「電話応対できんのお前？」 「だいじょーぶ☆ 那珂ちゃんがんばりまーす☆」 がんばりまーすじゃなく。 「提督が帰るまでは那珂ちゃんが凌いでくれるから、へーきへーき」 「いやそうじゃなくだな」 どうしよ。川内よりマシだけど。 #不知火に落ち度はない

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「もうカメラ回ってない？ だいじょーぶ？」 「おう、どこにも回ってないから平気だけどさ」 そう答えると、ふう、と那珂ちゃんはため息突いて、眼鏡をかける。 「普通に事務したことあるから。平気だし問題あったら電話そっちにかけるから行ってきて」 #不知火に落ち度はない

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うっわ。世話焼けんな風に言われたし。 しかも秘書艦の椅子に座ったし。 アイドルじゃなくて、マネージャーみたいな顔してるし。 「じゃ、オッケー！ 那珂ちゃんお土産は？」 「ミルクレープとシュークリームでいいから」 普段より2段階低いトーンで言われた。 #不知火に落ち度はない

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「いっくよー。日本酒バーで夜戦だー！」 「いや、夜戦だーじゃなくってだな！？」 お前もついてくんのかよ！！ と、まあ俺は引きずり出されてしまい、駐車所まで引っ張られていったわけで。 そこには──着物の神通が車の前で待っていた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こんばんわ……提督」 「お、おう。こんばん わ」 うわ。見覚えあると思ったらあれじゃん。 夏祭りんときのアレじゃん。 こんな状況でなきゃ、すげえ眼福なんだけどさー。 「じゃ、ほら乗った乗った」 川内、何故ついてきた。 しかも何故助手席に。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

しかもこの車いつものじゃない。 スズキの軽じゃねえか。喫煙不可のさ！ 「オートマだし、運転できるでしょ？」 「できねえわけじゃねえけどさ」 「神通は着物乱れるから、後ね」 「……」 ミラー越しに見ると、ごめんなさいって顔をしてる神通。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いろいろ言いたいことはあるが、川内」 「なに？」 こいつはサングラスを頭につけた微妙にロックなファッションだ。 スポーティな服装はともかくレイヤードの下の『妹ラブ』ってTシャツはどうにかしろ。 「なんでお前ついてくんの？」 「予約私の名前だし」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

何故お前の名前にしたし。 だがついてくるのはしょうがねえ。 「わかったわかった。場所の案内しろよ」 「まーかせて！！」 ガッツポーズでお返事川内。 威勢だけはいいのだが。 不安だけしか残らない出発となった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

心配して他のはつかのまのこと。 意外にも川内の誘導は的確で、俺は店近くの駐車場に止めた。 驚きなコトにこの店な、駐車場ねえの。 基本『送迎付き』以外は来ることないんだと。 あと、飲酒運転禁止だからだとか。 俺帰りどうすんの。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そうして、店の階段を下りて地下へ向かうと──」 「なんでモノローグ入れてんだお前」 「雰囲気出ない？」 「ない」 お前が居るから台無しだ。 階段が急なので、ひとまず神通の手を取り、支えながら降りていく。 こんな時に履き物が一人違うのはつらいよな。 #不知火に落ち度はない