ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #2
ヤモト・コキは壁の上に立った。呻くような音を立てながら、壁を覆う黒い鉄条網は彼女の着地点の周囲数十メートルにわたって萎縮してゆく。ヤモトはヤグラ773ビルディングを横目で見た。この措置は恐らく一時的なもの。アナイアレイターの負担も大きい筈。あのジツは本来こうした使い方ではない。1
2015-05-24 22:45:49彼女は素早くナンバン・カロウシの二刀を背中の鞘に戻し、幅の狭い壁の上で片膝をつく。オリガミがひらひらと舞い、ひとりでにツルやイカ、フクスケの形を取る。それは彼女の口元を覆うマフラーめいた輝きと同色の桜色だ。たちまち複数のハイタカが彼女の周囲に浮上し、機関銃を迫り出させた。 2
2015-05-24 22:50:03BRRRTTTT!マズル光閃かせ、銃弾の嵐がヤモトを襲った。フクスケが螺旋回転しながらヤモトの周囲に壁を作る。KBAM!KBAM!それらがリアクティブアーマーめいてジツの主を守る間に、ツル・オリガミは幻惑的な軌道を描いて飛び、ハイタカ達に衝突した。KBAM!KBAM! 3
2015-05-24 22:55:16「どこだ……どこだ!」ハイタカを迎撃しながら、ヤモトは壁の外のビル群、道路、交差点に視線を走らせる。そうするうちにも空中では新たな榴弾が炸裂し、ニチョームに斜めに降り注ぐ。「近隣区画住民通報ボーナス!一人当たり二倍のポイントがバックします」マグロツェッペリンが遠い空を横切る。 4
2015-05-24 23:01:01ヤモトは壁上を走り出した。シュイイイ……シュイイイ……あらたなハイタカが浮上する。「イヤーッ!」ヤモトはカロウシを振り抜き、目の前に飛び出した一機を斬って捨てた。「グワーッ!」ハイタカはバイオ脳漿を切断面から零しながら落下、爆発した。BRATATATA……足元に銃弾が撥ねる。 5
2015-05-24 23:06:24「行け!」ツルが旋回し、遠いハイタカを撃墜した。ヤモトはカロウシを鞘に戻しながら、ナンバンを振り抜く。「イヤーッ!」斬って捨てたのは飛来したスリケンだ。ヤモトのニンジャ視力は敵が攻撃してきた方向を知らせる。敵!ニンジャ!そして榴弾砲だ!ありったけのオリガミが舞い上がる! 6
2015-05-24 23:09:47「行……けッ!」ドウドウドウドウ!飛行機型のオリガミはヤモトの頭上で数秒滞空したのち、山なりの軌道を描いて、「電話王子様」のネオン看板を掲げたビルの屋上めがけ飛んでいった。しかし彼女にはその首尾を見届ける暇は与えられなかった。「イヤーッ!」下から垂直跳躍してきたニンジャあり! 7
2015-05-24 23:14:27「イヤーッ!」跳躍と共に繰り出された危険な一撃を、ヤモトはナンバンの柄頭で咄嗟に防いだ。ニンジャは霜めいた残像を残しながら回転して飛び離れ、タタミ数枚離れた壁上に着地。その時点で既にオジギしている!「ドーモ。シヴァーです」白いニンジャは頭を戻しながら両手を開く。長い氷の爪だ!8
2015-05-24 23:26:07「ドーモ。ヤモト・コキです」ヤモトはアイサツを返す。シヴァーは残忍な目を細めた。「ダメだろ……屑連中が檻の外に出ようとしちゃさァ」メンポの隙間から長い舌を出し、氷の爪を舐める。氷に関するジツの持ち主ゆえか、舌が張り付く事は無い。コワイ!「そんな権利を主張しちゃさァ!イヤーッ!」9
2015-05-24 23:30:08「イヤーッ!」ヤモトはカロウシで迎撃!「イィーヤヤヤ!」シヴァーは十本の氷爪で絶え間ない攻撃!新たなオリガミを飛ばす間を与えない。「イヤッ!イヤーッ!」ヤモトは打ち返す!そして打ち返す!「ハハァ、そこそこやる!流石ヨージンボ」シヴァーが挑発する。「だけど段々寒くなってくるぜ」10
2015-05-24 23:35:02「イヤーッ!」「イヤーッ!」互角の打ち合いだ。だがシヴァーはますます残忍な喜色をその叫びに込める!「ホラホラァ!そんなふうに足を止めると、寒くて寒くて……」「イヤーッ!」「イヤーッ!寒くて寒くて!ホラァ!足元注意ィー!」「!」ヤモトは目を見開く。軸足が壁から離れない!11
2015-05-24 23:39:24「イヤーッ!」ヤモトのイアイ斬撃をシヴァーは跳んでかわし、すれすれの攻撃範囲外に着地した。そして左手爪を翳す!「コリ・スリケン!イヤーッ!」ナムサン!五枚の爪が超自然射出され、ヤモトに襲い掛かる!「イヤーッ!」ヤモトはカタナでこれを弾くが、五枚同時スリケン攻撃を防ぎきれない!12
2015-05-24 23:43:28「どうした?かかって来いよ」シヴァーは右手をぶらぶらと振って挑発した。左手には新たな氷爪がすぐさま育ち始める。ヤモトの左肩にじわりと血が滲んだ。足元の壁は今や白い霜が覆い始めていた。シヴァーは笑った。「来ないのか?なら右ィ!イヤーッ!」右手のコリ・スリケン射出!「ンアーッ!」13
2015-05-24 23:47:34「オイオイ、来ないのか?死にに来ただけかァ?え?」シヴァーは挑発を続けた。しかし決して斬撃の範囲には入ろうとしない。彼は左手のスリケンの装填を待っているのだ。彼は己のジツを熟知している。周囲の気温を低下させるジツによってヤモトの動きを封じたうえで、着実に仕留めるつもりなのだ!14
2015-05-24 23:53:12ヤモトは歯を食いしばった。彼女はシヴァーを怒りと共に凝視した。シヴァーは嘲りの笑みで応えた。だがヤモトはカタナを鞘に戻した。「命乞いの準備か?」シヴァーは挑発を続ける。「自分を買いかぶりすぎだな。お前なんぞ、カス以下だ……我がクランは女王に絶対の忠誠を誓っているんでなァー!」15
2015-05-24 23:59:27「自己紹介が好きなんだね」ヤモトはカタナの柄を握り込んだまま答えた。シヴァーは眉根を寄せた。彼のニンジャ注意力は鞘と鍔の間から微かに漏れる桜色の光を見逃さなかった。「無駄なあがき……」「イヤーッ!」ヤモトはカロウシを再び振り抜いた!「馬鹿の一つ覚え!」シヴァーは間合いを取る!16
2015-05-25 00:05:39「そして左コリ・スリケン!イ……」シヴァーは左手を突き出し、新たな爪を射出しようとした。そこへカロウシが飛んだ!ヤモトの手を離れて!「グワーッ!?」刀身はサクラ・エンハンスメント・ジツのエネルギーが充填され、桜色に染まっている!オリガミ・ミサイルめいてカタナを飛ばしたのだ!17
2015-05-25 00:08:49腕の付け根を貫かれ、シヴァーは苦悶しながら後ずさった。「邪道な真似を!」「イヤーッ!」冷却のジツが弱まった瞬間、ヤモトはロケットスタートめいて足元を蹴り、シヴァーに斬りかかった!「グワーッ!」袈裟がけにナンバンで斬る!刺さったカロウシを掴み、蹴って引き抜く!「グワーッ!」18
2015-05-25 00:12:13「マッタ!」シヴァーは氷混じりの血を噴きながらマッタを乞うた。ヤモトは……「イヤーッ!」その時だ!ヤモトの背後に、垂直跳躍エントリーした新たなニンジャが着地し、アンブッシュを仕掛けたのである!「イヤーッ!」振り向きながらの斬撃で新手の攻撃にかろうじて対応するヤモト!アブナイ!19
2015-05-25 00:15:18「イヤーッ!」「イヤーッ!」新手ニンジャのふるう武器は氷を生成したかのような剣だ。打ち合うたび、ヤモトの髪に霜がまとわりついた。「今ので首を後ろから落とすつもりだったのによォー……」新手ニンジャは氷の剣で激しく打ち込みながら毒づいた。「もっと引きつけろや、シヴァー!」 20
2015-05-25 00:19:12「救援が遅せえぞ、チリングブレードよ!」シヴァーは傷口を凍らせて応急処置を済ませると、すぐさまヤモトに襲い掛かった。「イヤーッ!」ナムサン!前門のタイガー、後門のバッファローめいた挟撃である!しかも、見よ!ヤモトの身体を徐々に鈍らせる超自然の霜を!新手も冷却のジツを使う! 21
2015-05-25 00:23:18何たることか……チリングブレードと呼ばれた新手ニンジャの武器はコリ・ケンであり、やはり氷!つまり氷のジツ使いが二人いる事で冷却効果は二倍!その厄介さは百倍にもなろう!何故こうまで氷のジツ使いがアマクダリ・セクトに集まるのか?理由はホワイトドラゴンというニンジャにある!22
2015-05-25 00:26:41古代・平安時代においてコリ・クランに属したニンジャのソウルを宿す者は、夢の啓示に導かれ、氷の眠りの中にある彼女の元に集った。彼女を見出したのはアマクダリだ。ゆえに彼らは迷いなくセクトの戦士となった。いずれ目覚める「女王」に仕える為に!自我無きソウルが憑依者に何かを刻んだのだ!23
2015-05-25 00:38:42「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヤモトは一転、防戦一方!シヴァーの傷は重いが、氷のジツが彼に力を与えている。逆にヤモトは打ち合う程に追い込まれてゆく!「イヤーッ!」チリングブレードがコリ・ケンを振り上げる!「イヤーッ!」24
2015-05-25 00:41:16