ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #2
「仲間だと?」地面に落下したハイドラの上半身が下半身を再生し、バネのように地を蹴って跳んだ。「あんなガキどもを!イヤーッ!」ポリモーフの頭部を蹴り潰す!「グワーッ!」「イヤーッ!」そして天井を蹴り、ヴューに跳び蹴りで襲い掛かる!「イヤーッ!」ヴューはブリッジで回避!47
2015-05-26 23:53:46「イヤーッ!」スーサイドは目の前の肉の網を殴りつけるが、弾力によって返されてしまう。「こいつ……」彼は生命力を吸おうとするが、この網は肉体の末端部であり、致命部が遠い。うまくゆかぬ。「イヤーッ!」そこで横のルイナーが肉の網を掴み、ゆっくりと裂き開いた。二者は押し通る。48
2015-05-26 23:57:04「奴ら」スーサイドは走りながら振り返った。そして再び前を見たが、ブレーキをかけざるを得ない。仁王立ちで前方に立ちふさがっているのは、ポリモーフだ。「チョロチョロと……イクサをする覚悟も無い連中」ナムサン!ブンシン・ジツの類いであろうか?「逃がさんぞ」その両手が刃を形成する!49
2015-05-27 00:01:31「イヤーッ!」スーサイドは迷う事なく懐へ跳んだ。「イヤーッ!」鋭利な刃が横なぎに襲い掛かるのを潜って躱し、腰部に組み付く。「離さぬか」ポリモーフの頭部が上へ伸び、鉤めいて湾曲、スーサイドの脳天を狙おうとする。そこへルイナーが襲い掛かった。「イヤーッ!」掌がめり込み、押し潰す。50
2015-05-27 00:13:42「くッそ。殺ってねえ」スーサイドはポリモーフの残骸から身を離した。その上体が微かに白い光を帯びている。組み付いてポリモーフの動力を吸い、そこをルイナーに襲わせたのだ。しかし不定形ニンジャの残骸は彼らからタタミ数枚離れた地点に徐々に集まり、ニンジャの姿を再び形成する! 51
2015-05-27 00:17:29一方、やや後方のサワタリ達はどうか?「イヤーッ!」「イヤーッ!」こちらのポリモーフも手薄ではない。縦横に張り巡らされた触手から繰り返し刺突部が生じ、カラテをふるうハイドラとサワタリに全方位攻撃を仕掛けるのだ。ヴューの動きは非常に素早く、18の目が攻撃を全て読み取ってしまう。52
2015-05-27 00:20:32「大将、ジリー・プアー(徐々に不利)だぜ」ハイドラが触手をチョップで叩き斬りながら言った。フォレストが触手をマチェーテで叩き斬りながら答えた。「コマンダーをやれ」「無理かもだ」ヴューは水の上を三連続バック転して間合いを取る。それ以上は離れない。つかず離れず。侮れぬカラテだ。 53
2015-05-27 00:26:09「攻撃を絶やすな、あのコマンダーへの攻撃を!イヤーッ!」フォレストはナイフを投擲!「イヤーッ!」ヴューは側転回避!「イヤーッ!」ポリモーフがフォレストを襲う!「イヤーッ!」ハイドラが触手を蹴り飛ばし、トライアングル・リープでヴューを襲う!「イヤーッ!」ヴューは三連続バック転!54
2015-05-27 00:28:52「ジリー・プアー!」「黙れハイドラ!」「ジリー!プアー!」「黙れッ!」「イヤーッ!」全方位から襲い来る触手刺突攻撃!クルクルと飛び回るハイドラとフォレストだが、そのニンジャ持久力は底なしではない。特にハイドラはバイオインゴット無くば早晩活動停止状態となり、身体の再生もできぬ!55
2015-05-27 00:30:55「攻め続けろ!」ヴューにナイフ投擲!当たらない!「イヤーッ!」ハイドラが攻撃!当たらない!全方位触手刺突!「「イヤーッ!」」あやうく回避!「ジリー……」「イヤーッ!」SPLAAASH!その時、汚水を跳ねあげて、いま一人の新たなニンジャが高く跳びあがったのである! 56
2015-05-27 00:33:04ナムサン……そのニンジャはハイドラが飛び出した地点の水底にぴったりと這ったまま、じっと息を潜め続けていたのだ。ヴューはその潜伏を当初は悟っていた筈。しかしそのニンジャ野伏力はあまりに執拗であり、決して潜伏地点から動くことは無く、乱戦の中で石ころじみて地形に溶け込んでいた! 57
2015-05-27 00:37:31小柄なニンジャは空中で両手足をX字に伸ばして力強く叫んだ。「サヴァイヴァー!ドージョー!」その瞬間、虚空に巨大な蛙が出現した。否、正確には虚空ではない。小柄なニンジャの腰に臍の緒めいて繋がっていた拳大の蛙が瞬時に巨大化したのである!コワイ!小柄ニンジャは巨大蛙の背に着地!58
2015-05-27 00:40:40「かッ、かえる」ヴューは水路を塞ぐほどの巨大なバイオ蛙を畏怖した。「イヤーッ!」そこへマチェーテが油断なく飛来。「イヤーッ!」バック転で回避。こうも絶え間なく攻められては、ポリモーフへのプロトコル伝達も限定的となってしまう。巨大蛙は恐ろしく巨大な口を開いた。「ゲコーッ!」59
2015-05-27 00:44:27そして、食べた!張り巡らされた触手を!「見ろ、救援部隊だ!ハイドラ!」フォレストが叫んだ。「パットン戦車だ。これで地雷原などポピー畑に等しいぞ!勝利は間近だ!」「ゲコーッ!」巨大蛙はズシズシと重々しい足音を轟かせ、バクバクと巨大な口でポリモーフを食べながら前進を開始!60
2015-05-27 00:49:28ポリモーフの肉体末端部は体積が小さく、バイオ蛙の体内に呑み込まれるなり胃液で消化されてしまう!「ゲコーッ!ゲコーッ!」蛙の前進は着実だ。フォレストとハイドラは蛙の尻につかまり、後方を振り返る。立ち尽くすヴューが徐々に遠くなる。「取り逃がすが、作戦を優先だ」フォレストは言った。61
2015-05-27 00:56:16汚水を蹴立てるバイオ蛙の進軍はすぐにスーサイド達の戦闘地点に達した。「ゲコーッ!」「「イヤーッ!」」スーサイドとルイナーは壁際まで先を争うように飛び離れた。蛙の前方で、ポリモーフは何度目かの肉体再生シーケンスの最中であった。蛙は奇怪な舌を吐き、それを巻き取って呑み込んだ。 62
2015-05-27 01:02:50スーサイドとルイナーはおずおずと蛙を追う。後に残された僅かな残滓が震え、互いに集まり始める。(おのれ……おのれ……)湿った収束音は呪詛めいていた。ポリモーフは滅び去ってはいないのだろうか?だが、少なくとも今は、遠ざかるフォレスト・サワタリ一行をこれ以上足止めする事はできまい。63
2015-05-27 01:07:44……「おさらいだぞ。ガキどもも聞け」蛙乗りのニンジャ、フロッグマンは、一行を厳しい目で見渡した。「もうすぐ壁外のマンホールだ。ここからの作戦が肝要だ」「チッ」ハイドラは不機嫌そうだ。「作戦、作戦かよ。インゴットもロクに盗れねェのにディスカバリーの奴まで取られて、割に合わねえ」64
2015-05-27 01:15:38ズシン、ズシン、蛙の足音をBGMに、彼らのニンジャ・ブリーフィングはともすれば一触即発のアトモスフィアをはらんでいた。蛙の上のサヴァイヴァー・ドージョーと、蛙の両脇を並走するスーサイドとルイナーの精神的距離は物理的距離よりもはるかに隔たりがある。「そもそも、」「黙れハイドラ」65
2015-05-27 01:19:02フロッグマンが黙らせる。「決まった事は蒸し返すんじゃねえ」だがフォレストを睨みつける視線は剣呑である。「問題はあのサブジュゲイターだ」「そうだ」フォレストが暗く頷いた。「ドージョーのニンジャで奴にあたるのは戦術的に不利だ」「頑張りが足らなかったんだ!」ハイドラが言った。66
2015-05-27 01:23:09「逃げ腰かよ。てめェら情けねえよ。俺が三倍頑張ればよ!」「真っ先にフリーズされた奴は黙れよ」フロッグマンが手厳しく言った。「なにを!」「うるさい!」フォレストが睨みつけると、ハイドラは毒づきながら不平をやめた。「ゆえにドージョーにとっては不本意だが、混成部隊を作る必要がある」67
2015-05-27 01:27:31「それでセントールと長老のかわりにこいつらか」ハイドラは蛙の足元を行く二人を不満げに見る。スーサイドはやや挑発的に肩をすくめて見せた。「俺ら、いない方がいいか?」「……」「目標の一つは」フロッグマンは言った。「当然、ディスカバリーだ。ヨロシサンの救急車部隊のどこかに居る筈」 68
2015-05-27 01:33:10「生きてりゃいいがな」スーサイドが言った。フロッグマンはスーサイドを見た。「奴無しでこのあと戦い抜けると思うなよ。お前も奴の生存を祈れッてんだよ」「フン……」「まあいい。目標はもうひとつ。包囲車両のおそらく最前列。妨害電波を発生してる装甲車を叩くわけだが……」 69
2015-05-27 01:38:31アマクダリによる妨害電波が、現在、ニチョームを電子的に外界と隔絶する大きな要因になっている。大規模な榴弾やオナタカミのマシーンを用いた攻撃が白昼堂々行われるのも、この戦闘の様子を外界に伝える術を封じているからだ。この妨害を排する事で、敵は動きづらくなる。 70
2015-05-27 01:42:47そして希望的観測ではあるが、外界にも、おそらくこの包囲攻撃を快く思わない勢力がある筈なのだ。特にメガヘルツ解放戦線とコンタクトを持つ事が出来れば、大きな力となるだろう。「そっちは、じゃあ、ガキどもにやらせりゃいい」ハイドラが言った。「ドージョーが大事だぜ」「わからん奴だ!」71
2015-05-27 01:45:01