ミイラレ!第二話:幽霊のこと(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。引っ越して早々のトラブルです。 こちらは原文のみになります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/829549
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は苦笑いを浮かべ、幽霊の背後を見やる。怜が顔を引きつらせていた。「それでそのう、人間さん。あなたはなんというお名前で?」それに気づかぬ幽霊女の問いに、四季は一瞬だけ言葉に詰まった。しかし相手のあまりに屈託のない様子に、素直に答える。「四季だよ。日条四季」19 #4215tk

2015-06-02 22:00:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、あ、あー。う、う、うらめしやー、と」「なんでそこで恨まれなきゃならないのさ」発声練習らしきことを始めた幽霊に、四季はジト目で呟いた。幽霊は慌てたように手を振る。「あ、いえいえ!別にあなたに怨みはないですよ。どこかの退魔師とは違って。むしろ感謝してます」18 #4215tk

2015-06-03 20:38:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は苦笑いを浮かべ、幽霊の背後を見やる。怜が顔を引きつらせていた。「それでそのう、人間さん。あなたはなんというお名前で?」それに気づかぬ幽霊女の問いに、四季は一瞬だけ言葉に詰まった。しかし相手のあまりに屈託のない様子に、素直に答える。「四季だよ。日条四季」19 #4215tk

2015-06-03 20:40:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「四季さん、ですか!私、小夜子と申します。よろしくお願いしますね!」「あ、ああ、うん。どうも」四季の手を両手で握り、幽霊女はにこやかに名乗る。四季は少し引き気味に頷いた。幽霊と会うのはこれが初めてではない。しかし、こういう性格の幽霊は彼女が初めてだ。20 #4215tk

2015-06-03 20:42:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「助けてもらってありがとうございます〜!本当、難儀してたんですよ!」「い、いや、それほどでも」「いくら感謝してもしきれないくらいでグエェ」顔を近づけてきていた小夜子が不意に離れる。いや、離されたのだ。怜の腕から伸びた反物が、その首に巻きついている。21 #4215tk

2015-06-03 20:45:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜は仏頂面で幽霊を引き寄せると、その首根を掴みガンをつけるように顔を寄せた。「私は」静かな声に、小夜子がびくりと震える。退魔師は気にすることなく続けた。「草江 怜。一応は退魔師。早速で悪いんだけど、いくつか聞かせてもらいたいことがある。黙秘権はない。いい?」22 #4215tk

2015-06-03 20:48:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ま、また退魔師ですか!?」小夜子の悲鳴。「勘弁してください!私、善良な幽霊ですよ!?何もしてないし、しないです!」「……そのわりには、ずいぶん厳重な封印を受けてたみたいだけど」退魔師は取り合わずに四季の手元を見る。黒く焼け焦げた札の数々を。23 #4215tk

2015-06-03 20:51:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あれ、どう見ても精霊級の怪異を抑えるのに使うものだよね」「た、退魔師側の分類なんて知ったこっちゃないですよ!あのお札だって急に投げつけられたもので……!」弁明しつつも小夜子は必死の形相で四季を見る。彼は思わずたじろいだ。さすがにあの間に割って入る勇気はない。24 #4215tk

2015-06-03 20:54:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

とはいえ、このままにしておくのも忍びない。「あの、怜。悪意がないのは本当みたいだから、離してあげなよ」四季の言葉に、怜が鋭い一瞥をくれる。ややあってから彼女は溜息とともに幽霊を解放した。ただし反物は首に巻きつけたままで。「……妙なことしたら、締め落とすからね」25 #4215tk

2015-06-03 20:57:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「しませんってば!もう、わかりました。ここで問答してもきりがありません。立ち話もなんです、私の部屋で話し合いましょう!」「……俺の部屋だよ。今日からは」やぶれかぶれに怜を指差す幽霊の背後で、四季は静かに訂正を入れる。そして盛大に溜息をついた。26 #4215tk

2015-06-03 21:00:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

とはいえ、このままにしておくのも忍びない。「あの、怜。悪意がないのは本当みたいだから、離してあげなよ」四季の言葉に、怜が鋭い一瞥をくれる。ややあってから彼女は溜息とともに幽霊を解放した。ただし反物は首に巻きつけたままで。「……妙なことしたら、締め落とすからね」25 #4215tk

2015-06-04 20:40:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「しませんってば!もう、わかりました。ここで問答してもきりがありません。立ち話もなんです、私の部屋で話し合いましょう!」「……俺の部屋だよ。今日からは」やぶれかぶれに怜を指差す幽霊の背後で、四季は静かに訂正を入れる。そして盛大に溜息をついた。26 #4215tk

2015-06-04 20:42:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

部屋の中はがらんとしていた。これから引越しの荷物を受け取るところだったので、仕方ないだろう。玄関に入ってすぐのキッチン付きリビングの中央に四季たちは陣取り、腰を下ろしていた。「それで?」一番に口を開いたのは怜。「いつの間に四季の部屋へ入り込んだの」28 #4215tk

2015-06-04 20:45:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ええと……昨日の夜からですね」厳しい視線を受け、たじろぎながらも小夜子が答えた。どことなく四季に近いのは、やはり怜を警戒しているからか。「そんな最近だったのか……」幽霊の横顔を見ながら四季は呟く。それならば下見のときに気配すらなかったのも頷ける。29 #4215tk

2015-06-04 20:48:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

幽霊の対面に座る怜は、厳しい表情を崩さない。「なるほど。じゃあ次の質問。なんでこの部屋を選んだの?」その問いに小夜子が無言で首を傾げる。「……ここ、アパートなんだから他にも入り込む場所はあったでしょ?なのにこの部屋を選んだのはなぜ?」「なんでと言われましても」30 #4215tk

2015-06-04 20:51:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

小夜子が困ったように顔を歪める。「居心地のよさそうな部屋だったからとしか……」「他の部屋とそんな変わらないと思うんだけどな」四季は思わずぼやく。小夜子が意外そうに彼を見た。「そうですか?けっこう住み心地が違いますよ」「ええー?」遠慮なく疑問の声を上げる四季。31 #4215tk

2015-06-04 20:54:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……たぶん、ではあるんだけど」怜の声に二人は揃って彼女への向き直る。「部屋の霊気に惹かれたのかもね」自らの側頭部を指で軽く叩きながら、退魔師は続けた。「霊気?」「怪異が存在するために必要な……なんていえばいいかな、エネルギー?そんな感じのものなんだけど」32 #4215tk

2015-06-04 21:00:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「それがこの部屋に?」「というより、他の部屋よりそれが濃いのかも」「あー、言われてみればそうかもしれないです!」小夜子が得心したように手を打った。しかし四季は訝しむ。「なんでこの部屋だけそんなことに」「……一応それも説明できる」言いにくそうに彼女は口を開いた。33 #4215tk

2015-06-04 21:03:06
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