ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス #6

スーパーバイオレンスマグナムボール3号~熊野、宇宙へ!~
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劉度 @arther456

そこに大井が割って入った。「火力不足とは聞き捨てならないわね。私たちの酸素魚雷が、何のためにあると思ってるの!?」「いえ、不知火も魚雷は当てました。ですがあの戦艦はまだ動いて」「何本当てたの?」「はい?」「何本当てたかって聞いてるの!」「……2本ですが」 45

2015-06-03 22:56:30
劉度 @arther456

「北上さん!」「はーい。やるのー?」砲撃から逃げていた北上が戻ってきた。「やりましょう!私と北上さんの、二人で!」既に二人とも、魚雷発射管に装填済みである。「いえしかし、ですが……いや、お二人の魚雷火力なら……」二人の火力に賭ける価値はあるか。不知火の判断は一瞬だった。 46

2015-06-03 22:59:43
劉度 @arther456

「お願いします。不知火たちが左舷に回り込み囮になります。お二人はその隙に、右舷を」「任せなさい。あ、流れ魚雷には気をつけなさいよ?」「それじゃあ、行きますかー」こうして不知火たちと雷巡二人は分かれて、プリンス・オブ・ウェールズの側面に回り込んだ。 47

2015-06-03 23:03:02
劉度 @arther456

不知火は戦艦の艦首に向けて、高角砲を撃ちかけた。小口径砲弾は戦艦の装甲にたやすく弾き返される。しかし、注意を向けるには十分だった。主砲塔が旋回し、不知火たちに狙いを定める。装填までにはまだ時間がある。「総員散開しながら攻撃!敵の注意を引きつけて下さい!」 48

2015-06-03 23:06:24
劉度 @arther456

「任せよ!」「ダー!」利根とヴェールヌイが主砲を撃ちながら隊列から離脱する。「無理言ってくれるじゃない……!」五十鈴は爆雷を投擲!艦橋の前に水柱を吹き上げ、敵の視界を塞ぐ!不知火は再び魚雷を発射!しかし運悪く、盲撃ちの副砲が水面を打ち、酸素魚雷は爆発してしまう。 49

2015-06-03 23:09:39
劉度 @arther456

『忌々しい、日本海軍どもめ……!』前方の戦艦から、呟き声が漏れてくる。中の戦艦棲姫は相当に焦っているようだ。「ここで仕留めるわ」『させん!我々はここで因縁を断ち切る!』「一度負けた船に乗って、そんなことができるとでも?」『負けたからこそだ!新たな運命を切り開くために!』 50

2015-06-03 23:12:58
劉度 @arther456

不知火たちに新たな主砲が浴びせられる中、大井と北上は予定通りプリンス・オブ・ウェールズの反対側に到着していた。「さあ、やるわよ北上さん!」「大井っち、やる気満々だねえ」「当たり前でしょう!これだけの大物が相手よ、私たちのために出てきたようなものじゃない!」 51

2015-06-03 23:16:14
劉度 @arther456

「……まー、そんな考え方もあるよねー。それじゃあ元祖ハイパー雷巡ペア、木曽には悪いけど大暴れしちゃいましょうか!」北上が五連装酸素魚雷を構えた。「五連装2つで十連装の魚雷管!」「やっちゃってよ!」十本の航跡が海に流れ、一瞬消え、そして側舷で炸裂した。 52

2015-06-03 23:19:26
劉度 @arther456

「っしゃおらぁ!」全弾命中に大井はガッツポーズをとる。だが、プリンス・オブ・ウェールズは傾かない。「え、ひょっとして、効いてない……?」「いいえ、効いてるわ!」大井の目には、凹んだ船体が見えていた。「あの場所を狙って一点集中雷撃よ!」 53

2015-06-03 23:22:47
劉度 @arther456

「できるかなあ……」魚雷とはそもそも狙って撃つものではない。彼女たち重雷装巡洋艦が過剰な魚雷を積んでいるのは、扇状の一斉射により敵の回避進路を面制圧するためだ。だが、大井は迷いなく言い切った。「できます!この艦隊を支え続けてきた、私と北上さんなら!」 54

2015-06-03 23:26:05
劉度 @arther456

大井の声を聞いて、北上はにっかり笑った。「……じゃあ、やっちゃいましょうか!」かつては使い物にならないと言われた重雷装巡洋艦が、頼られて全てを託されるというのは悪くない気分だ。そう思いながら、北上は魚雷を放った。それに続いて大井も魚雷を放つ。 55

2015-06-03 23:29:19
劉度 @arther456

先程の直撃箇所に、再び魚雷が命中!今度は北上の目にも分かるぐらい、はっきりと凹んでいた。「もう一丁!」3セット目の五連装酸素魚雷を発射!吸い込まれるように同一箇所に命中する。伊達に何千回と魚雷を撃ち続けてはいない。これだけ大きな目標なら、目をつぶってでも当てていられる。 56

2015-06-03 23:32:34
劉度 @arther456

だが、ここで敵戦艦が大井たちに気付いた。残っていた副砲が一斉に撃ちかけてくる。「くうっ!防御力は無いんだよー!」「ざっけんじゃないわよ!北上さんが怪我したらどうするの!?」二人は慌てて回避。雷巡は火力こそあるものの、装甲は巡洋艦そのものである。一撃が致命傷だ。 57

2015-06-03 23:35:45
劉度 @arther456

砲撃で海は荒れ、足場は不安定になる。回避のために更に満足な雷撃姿勢も取れない。「だけどねぇ……っ!」その中で大井は魚雷を構えた。「こちとら雷撃のプロなのよぉっ!」大井が吼え、放った魚雷はプリンス・オブ・ウェールズの装甲をえぐり取った。内部の隔壁が露わになる。 58

2015-06-03 23:39:09
劉度 @arther456

「あと一発!」「大井っち、主砲!」最後の魚雷を放とうとした大井だが、北上に言われ主砲がこちらを向いていることに気付いた。「ぬううぅぅっ!」機関を逆回転させ、強引に急停止!直後、偏差射撃を狙った砲弾が大井の目の前に落ちる!「きゃあああっ!?」空中に投げ出される大井! 59

2015-06-03 23:42:29
劉度 @arther456

「大井っちーっ!」北上が空中の大井に手を伸ばした。「北上さん!」大井が北上の手を掴む。「このまま行きます!」「やっちゃいましょー!」北上は大井の手を掴み、彼女の体を大きく振り回す!あらぬ方向に吹き飛ばされようとしていた大井の体は軌道修正され、空中で大きく円を描く! 60

2015-06-03 23:45:45
劉度 @arther456

そして振り回される大井の最も外側には、五連装魚雷が括りつけられた右足がある!「海の藻屑となりなさいな!」スイングバイ魚雷発射!遠心力によって更なる安定を得た魚雷は、波を突っ切り戦艦側面の破孔に吸い込まれた。一瞬の後、今までとは比べ物にならない爆発が起きる! 61

2015-06-03 23:48:59
劉度 @arther456

爆発は艦全体に波及し、更に弾薬庫に誘爆!主砲の一つが内部から吹き飛ばされる!「ちょ、危ないじゃない!?」「逃げるよ、大井っち!」雷撃に夢中になって近づきすぎていた二人は、爆発するプリンス・オブ・ウェールズから慌てて離れていった。 62

2015-06-03 23:52:14
劉度 @arther456

【ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス】#6おわり#7へ続く

2015-06-03 23:52:50