ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス #7(完結)

とってつけたようにSOLGを落とされるオマーン
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劉度 @arther456

《貴艦がエチオピアよりアーク……契約の箱を持ち出したことは既に把握している。当該遺物はアメリカ合衆国・イスラエル・エチオピアの三国で管理する特定保護文化財である。すぐに引き返し、あるべき場所に返還せよ。警告に従わない場合、我々は直接攻撃も辞さない》 47

2015-06-05 23:04:44
劉度 @arther456

カメラが一瞬、ケルプの姿をはっきりと映し出した。輝く白い翼を持った、飛んでいるのが信じられないぐらい大きな飛行機だった。「先程のレーザーは、あの飛行機が発射したようです」大鯨が言う。どうやら聖櫃にはとんでもない守護天使がついていたらしい。 48

2015-06-05 23:07:58
劉度 @arther456

「だけど……!」ローマは諦めきれない様子である。すると提督が言った。「艦長さん。先に引き返しちゃって。この子はこっちで抑えとく」《分かった。ワイヤーを外せ!エチオピアまで戻るぞー!》「大将さん?」ローマは提督の肩を掴んだ。その顔には、隠しようもない怒りと焦りが表れている。 49

2015-06-05 23:11:10
劉度 @arther456

「いや、諦めなさいって」「嫌よ。アレを持ち帰って、神を信じてるって認めて貰うんだから」「……誰に?」提督の目が細められる。ローマは目を逸らしながら言った。「誰だっていいじゃないの、別に」「誰かに認めて貰わないと、神様、信じられない?」 50

2015-06-05 23:14:30
劉度 @arther456

「うるさいわね!日本人には想像つかないでしょ!深海棲艦が神を信じるマネをしてるって陰口を言われるなんて!」本気で神を信じていなければ、ローマという名前は名乗らない。それだけに、信じていることを信じてもらえないのは、彼女にとって本当に苦痛だった。 51

2015-06-05 23:17:43
劉度 @arther456

「まあ、その辺は、うん。分からんでもない」ワイヤーを切り離し、『セント・エフレム』は進路を反転する。「だけど、よーく考えなさい。君が信じてるのは神様?それとも神様を信じてる人たち?」提督はローマをまっすぐ見つめた。「もし神様を信じてるなら、すぐにアレを返して謝ってきなさい」 52

2015-06-05 23:20:59
劉度 @arther456

《提督。残存衛星は全て撃破しました。これより帰投します》「ん、お疲れ様、不知火」不知火の報告を皮切りに、次々と艦娘や僚艦たちから通信が入ってくる。ローマはしばらく立ち尽くしていたが、やがて我に返ると慌ててCICを出て行った。その気配を感じ取った提督は、何も言わずに微笑んだ。 53

2015-06-05 23:24:13
劉度 @arther456

「……さて」次々と報告が上がってくる。『セント・エフレム』は一度離脱する。横須賀への航行計画は大きく変わるだろう。東洋艦隊との戦いで消耗した装甲空母姫も心配だ。いきなり衛星が降ってきたオマーンへの言い訳も考えなければならない。アメリカの方に落ちていった熊野も探す必要がある。 54

2015-06-05 23:27:29
劉度 @arther456

頭上の航空機部隊もこれからどう動くか分からない。仕事は山積みだ。幸い聖櫃は返されるから、これ以上ハチャメチャな奇跡は起こらないだろう。「一つづつ片付けていくしか無いか」天井を仰ぎ見ながら、提督は呟いた。最初の仕事はもちろん、艦娘たちを労うことだ。 55

2015-06-05 23:30:42
劉度 @arther456

【ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス】おわり

2015-06-05 23:31:42