5月1日 夕から夜 ハイジと天雄と狭間

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ーーー @HaKo_723

【五月一日 昼下がり】

2015-06-08 16:54:01
ーーー @HaKo_723

ハイジ】少しずつ夏が近づく風を感じる夕刻も近い午後。今日の授業も終わり暖かい日差しの中、二人で暮らすアパートに荷物を取りに寄った。今はシュンの提案を聞き、孝行のために実家である祖母の元を行き来している。

2015-06-08 17:02:31
ーーー @HaKo_723

ハイジ】アパートの部屋、鍵を差し込みがちゃりと開く。最近、同居人の彼は仕事で忙しいらしく日中はあまり顔を見ない。自分も夜は実家に戻ることも多いため会わない日が時々ある。「たでぇまー」いないだろうとは思っていても癖になった声をしんとした部屋に響かせる。

2015-06-08 17:07:13
ーーー @HaKo_723

ハイジ】(…っていねえか)靴を脱ぎ、鞄を隅に放りながらリビングへ向かう。部屋へまっすぐ進んで必要なものを持ち、そのまま家を出るつもりだった。

2015-06-08 17:09:43
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「…、……?」横を通ったテーブルに置かれた箱が目に留まる。昨日は無かったはずのものだと瞬きの瞬間に思う。普段住んでいる家だからだろうか、些細な変化が妙に気になる。菓子箱かと思って興味を惹いたがそこにはメモが乗っていた。

2015-06-08 17:15:43
ーーー @HaKo_723

ーーー『シゴトで使う仕掛けがあるから5月3日まで開けないで!それまでに俺が戻ってなかったら開けてみて。途中で開けると俺がピンチになるから、絶対5月3日までは開けたらダメな!』

2015-06-08 17:17:10
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「ぉう?」一通り読んで首をかしげる。体を向けて覗き込み、指先でメモに触れてみる。(…あんだ?シュンか?………開けんなってぇか…)開けるな、と書かれていると開けたくなる欲にくすぐられる。開けて欲しくないならこんなところに置かなければ良いのに、と思いながらそれを眺める。

2015-06-08 17:22:45
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「…どっきり?」むしろ開けるべきだろうか、とその箱の前にどかんと座り、手をその箱にかけた状態できょろきょろと狭い部屋の中、辺りを見渡す。「…開けちめぇぞぉ?シューン?」響くように声を上げる。

2015-06-08 17:26:26
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「……」けれど当たり前に返事はない。自分以外の気配は感じられず、口を閉じれば世界から切り離されたみたいにシンとしている。窓も閉めているせいだろうか。「…シュン?」いねえの?と見回しながら箱から手を離し、携帯電話をポケットから取り出す。

2015-06-08 17:31:10
ーーー @HaKo_723

ハイジ】彼がどこにいるか、知る術を自分は持っている。GPS機能を呼び出せば相手の持つ発信機でその居場所がわかるのだ。ここ最近ちょこちょこと確認していたせいで操作は手慣れている。けれどその指は画面を確認するや否やピタリと止まってしまった。

2015-06-08 17:34:28
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「…?ぇれ?」彼の居場所を示すポイントが今自分がいる部屋を指している。やはりどこかに隠れているのだろうか、と立ち上がり、ベッドや窓の外、物陰や押入れなど、隠れられそうな場所を全て覗き込んだがやはりそこに探すシュンの姿は見えない。

2015-06-08 17:36:54
ーーー @HaKo_723

ハイジ】ただそれだけのことでゾッとする。箱の文面を思い出してふざけて良いと言う気持ちが遠くへ吹き飛んでしまう。ただ、発信機を忘れていってしまったのかも知れないが、今、身の回りを警戒する身として相手の居場所がわからないという事が恐怖のトリガーにさえなる。

2015-06-08 17:40:41
ーーー @HaKo_723

ハイジ】携帯の画面を切り替える。電話の履歴から『シュン』を選び出し電話の発信画面へ。そのまま電話をかける。 @c_yu_n 出てくれたら今どこにいるかを訊ねようと携帯を耳に当て口をもごもごと歪める。落ち着きなく部屋の中をゆっくり歩く。

2015-06-08 17:46:06
ーーー @HaKo_723

ハイジ】「……」コール音を耳にする。仕事中かもしれない。繋がらず留守番サービスに移行すれば一度切り、また再び掛け直す。

2015-06-08 20:30:38
ーーー @HaKo_723

ハイジ】ウロウロと歩き回る足が一つの方向に向かう。コール音を聞きながら入ってきた玄関へ、荷物も持たずに向かい、扉を開けて鍵をかける。何でもないならそれでいいし、と思いながら電話を切り、街の方向へ歩き出しながらまた別の連絡先に電話をする。

2015-06-08 20:36:50
ーーー @HaKo_723

ハイジ】次に連絡をしたのは星子だった。彼女ならシュンを見ていてくれている可能性もあったため電話をしてみたものの彼女は別の仕事に出ていると言い、現在彼の所在は分からないという。探してみるけれど手がかりなしに見つけ出すのは無理よ、と言われてしまった。

2015-06-08 20:51:44
ーーー @HaKo_723

ハイジ】その言葉に途方にくれるも街を歩く足は止まることはない。人並みと同じ高さできょろきょろと視線を動かしてみる。もちろんそう簡単に見つけられるなんて思っていない。携帯電話が繋がるのをこうやって動いて待っている、というのが正しいかもしれない。

2015-06-08 20:53:45
ーーー @HaKo_723

ハイジ】家に帰る者、遊びに向かう人々で溢れかえり大きな波が通りにできている。傾いてきた陽に建物の間から照らされる街を縫う姿は黒い学ランを着崩し、手には荷物もない軽装。おかげで少し早歩きでも人波をすり抜けることが出来る。

2015-06-08 21:01:39
チョロ松 @_choro_m_

天雄】春の終わり、夏の初めである今の頃は、ふと気付くと日がのびている。少し前まではビルに覆われた地平線の向こう側に夕陽が追いやられていたけれど、狭い空に茜色の円がぽっかり浮かんでいる。空気がひんやりと首筋を撫でた。

2015-06-08 20:50:07
チョロ松 @_choro_m_

天雄】授業終わり、画材を買いながら町をぶらついていた。いつもは持っていないトートバックは行きつけの画材屋でおまけとして貰った物、今日は肩からさげている。行く宛てもないただの散歩。季節の変わり目の匂いがする。

2015-06-08 20:56:14
チョロ松 @_choro_m_

天雄】「……」 つい先日、狭間少年に見せられた折鶴。あれを見てからというもの、微かながらに自分に匂いが移ったように感じている。しかし”以前”ほどはっきりとはしておらず、顔を近付けたから匂いが鼻についただけかもしれない。身体に異変もなく、気にし過ぎか、と人の隙間を抜けて行く。

2015-06-08 21:03:56
ーーー @HaKo_723

ハイジ】ふと、見知った色を見た気がしてそちらに注意が行く。

2015-06-08 21:02:47
ーーー @HaKo_723

@TIS_lam ハイジ】(ん…)するするすり抜けていた人波の中でそれを認識した瞬間足が止まる。どん、と後ろから歩いてきた人が肩ぶつかり舌打ちを聞くが、振り返る気も起きず水色の髪とその中にある猫目を睨むように見つめる。

2015-06-08 21:08:02
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