艦これ二次創作SS【バーニング・コオリヤマ】#4

世界全土を深海棲艦が分断し、海上交通が途絶した未来。人々は原始的共同社会に回帰し、そこに馴染めぬアウトローは洋上のフロンティアへと掃き捨てられた。ヤクザ同士の抗争を大企業群の非合法技術開発試験が加速する。ここはチバシティ。世界に見捨てられ、国土再編を強いられた日本の番外地だ。
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けろきゃ @k6ky

(これから艦これSSを投下します。本編25ツイートを約5分おきに投下し、2時間ほどの予定です。気になる方はお手数ですがミュート、リムーブなどお願いします。感想・実況などは #ss_k6ky を使用していただくと小躍りして喜びます。それでは、よろしくお願いします)

2015-06-13 10:22:21
けろきゃ @k6ky

これまでのあらすじ: 水上都市チバシティのカウボーイ・ナカムラは、艦娘用装備の試作品を巡りコオリヤマ・ヤクザクランと対立する。同じくコオリヤマに追われる艦娘・不知火と共にセーフハウスに逃れ反撃を開始するが、偶然から"ニンジャ"川内と遭遇。からくもその猛攻を凌いだ。

2015-06-13 10:22:43
けろきゃ @k6ky

(「バーニング・コオリヤマ」#3 / togetter.com/li/801078 「バーニング・コオリヤマ」#2 / togetter.com/li/780280 「バーニング・コオリヤマ」#1 / togetter.com/li/760992 )

2015-06-13 10:24:49
けろきゃ @k6ky

【バーニング・コオリヤマ】#4

2015-06-13 10:25:12
けろきゃ @k6ky

コオリヤマの艦娘が行動を始めるまでの時間潰しにと開いたマキノ研究所の試作品は、2つ一組の指輪だった。しばらくナカムラと顔を見合わせたあと、不知火は箱の底にメモ書きを見つけて目を通す。「妖精を扱うハードルを下げるための補助装置のようです」 1

2015-06-13 10:25:26
けろきゃ @k6ky

艦娘は艤装の制御に妖精と呼ばれる人型ロボットを使い、妖精は自身を制御する計算資源として艦娘の脳を利用する。「十分な数の妖精を扱えるかどうかは、今のところ先天的な資質の問題とされています。そのため艦娘になれる人間は限られていて、常に人手不足です」 2

2015-06-13 10:30:19
けろきゃ @k6ky

「この指輪を身につけた二人の脳をリンクし、妖精のための領域を共有することで、扱える妖精の数を増やすことができるようです」「単純に言えば、必要な妖精の半分しか動かせない、文字通り半人前の二人がいれば、この指輪で一人前の艦娘ができあがるってわけか」 3

2015-06-13 10:35:29
けろきゃ @k6ky

「そこまで都合よくはないでしょうが、イメージとしてはそういったものかと。なんにせよ、既に十分妖精を扱えている不知火には不要なものです」興味を失った様子の不知火に、ナカムラは指輪の片方を差し出す。「お前に役立たなくても、このアイデアと技術には十分価値がある。つまり、カネになる」 4

2015-06-13 10:40:37
けろきゃ @k6ky

「今俺の手持ちはこれだけだ。契約の手付金代わりに半分持っていってくれ」不知火は指輪を受け取ると、手袋のまま無造作に右手に嵌めた。「頂いておきます」 5

2015-06-13 10:45:35
けろきゃ @k6ky

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2015-06-13 10:48:30
けろきゃ @k6ky

川内との遭遇をなんとかやり過ごし、マキノ研手前の水路まで来た。曲がり角の影から様子を窺うと、事前の情報通りマキノ研入口前には6隻の艦娘が展開している。何やら指示を出し合っているようだが、具体的には聞きとれない。「司令、ポイントに到達しました。やはりこのままでは突破は困難です」 7

2015-06-13 10:50:13
けろきゃ @k6ky

『了解した。手筈通り、こちらで誘導する』ナカムラはコオリヤマの通信を完全に掌握している。通信を遮断することも偽の指示を出すこともいつでも出来た。これまで傍受に徹してきたから、ここでコオリヤマ本部を騙り防衛艦隊に指示を出しても怪しまれることはないはずだ。 8

2015-06-13 10:55:06
けろきゃ @k6ky

ナカムラは防衛艦隊の半分に、別のポイントを確認するよう指示を出す。6隻全艦は現場の判断で怪しまれるかもしれないが、半分なら騙し通せるだろう。本部が動きに気付いて問い合わせたら、その通信を遮断する。ここで通信傍受に気付かれても、動き出した艦娘に追い付いて呼び戻すことは不可能だ。 9

2015-06-13 11:00:18
けろきゃ @k6ky

不知火がしばらく様子を見ていると、計画通り3隻が動き出し、別の水路へ消えた。彼女達が十分離れただろう頃合いを見計らって、残り3隻になった防衛艦隊の前に飛び出す。駆逐艦磯波が旗艦、昨日損傷させた綾波と敷波はまだ万全の状態ではないようだ。容易に突破可能。 10

2015-06-13 11:05:15
けろきゃ @k6ky

迎撃態勢をとる3隻に最大戦速で迫り、発砲しようとしたところで背後の気配に気付く。とっさに右に逸れると、直前までいた場所を砲弾がかすめた。振り返ると、先程移動したはずの吹雪、初雪、白雪が戻ってきていた。相手を分断したはずが、挟撃されている。 11

2015-06-13 11:10:13
けろきゃ @k6ky

撃ち返そうにも、両側からの砲撃を回避しながらでは命中は覚束ない。回避のためには相手の砲撃体勢を確認せねばならず、それは基本的に不知火自身の視覚頼みだ。前後を確認し弾幕の隙間に飛び込む回避運動の連続の最中に、妖精による火器管制はあまりに頼りない。 12

2015-06-13 11:15:12
けろきゃ @k6ky

艦娘が砲撃を意識すれば、妖精は自身の観測機器の情報から適宜判断して火器を操作してくれる。目の前のものを取ろうとするときに、腕を伸ばし指を開いて、と意識しないように、艦娘の脳にとって体の一部である妖精の具体的な動作もまた艦娘の意識にはのぼらない。 13

2015-06-13 11:20:06
けろきゃ @k6ky

一方で後付けの器官である妖精と他の体の操作を協調させることは難しい。不知火が回避運動を取れば、それと協調できない妖精の砲撃は大きく外れることになる。回避の判断に余裕があれば、移動を考慮した砲撃目標を妖精に指示できるだろうが、6隻に挟撃されている状態では難しい。 14

2015-06-13 11:25:19
けろきゃ @k6ky

回避に専念しながら、不知火は状況確認のため通信を開く。「司令、離れたはずの3隻が戻ってきました。突破も離脱も困難です」『なんだと!? 通信では全く怪しまれた様子はなかったが…』「騙されたふりでは。そこまでするということは、通信の掌握に気付かれたと考えるべきでしょう」 15

2015-06-13 11:30:23
けろきゃ @k6ky

コオリヤマは一昨日のナカムラの標的。楽な仕事だった。マキノ研にいたってはそのコオリヤマに襲われ泣きついてきたのだから、その機材や人材を加えても、ものの数にもなるまい。電子的な面から直接気付かれたとは考えられない。秘密を口止めし合った川内が不知火の出現を報告したとも思えない。 16

2015-06-13 11:35:21
けろきゃ @k6ky

『あとこちらのアクションは、神通襲撃部隊周辺の水素プラント爆破だけだ』「それです」不知火がUターンしながら答える。不知火と彼女を囲む6隻は広い水路を行ったり来たりしている。同士打ちを恐れてか包囲を狭めてこないのがせめてもの幸いだが、このままでは直撃を受けるのも時間の問題だ。 17

2015-06-13 11:40:36
けろきゃ @k6ky

「囮部隊の旗艦は元マキノ研所属の陽炎でした。彼女ならあの爆発だけで、我々のようにコオリヤマを狙う存在にも、それが神通襲撃計画を知るために通信を掌握していることにも気付きかねません」『そんな子がいるのか。艦娘ってのは戦力以上におっかねえもんだな』「生き残るのが仕事ですので」 18

2015-06-13 11:45:19
けろきゃ @k6ky

『"ニンジャ"に無線封鎖させるくらい情報に気を使う連中だ。ネットワークを経由しない無線通信機器くらい用意しててもおかしくない。それで本部に連絡して、我々を嵌めたってわけか』「まんまと嵌められました。不知火はやれるだけ粘りますが、司令は逃げ支度を始めることをお勧めします」 19

2015-06-13 11:50:13
けろきゃ @k6ky

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2015-06-13 11:52:52
けろきゃ @k6ky

不知火は健気なことを言うが、艦娘なりの社交辞令だろう。今更逃げたところでヤクザから逃げきれるものではない。あくまでナカムラは不知火と一蓮托生だ。不知火がこの状況を抜け出せなければ、ナカムラにも明日はない。自分が生き残るためにも、出来ることを探さなければならない。 21

2015-06-13 11:55:25