再処理原子力発電の現状についてのわかりやすい解説
- MichiToyama
- 14478
- 19
- 26
- 32
ガラス固化体の処分地でも核セキュリティ対策が必要なのは当然だが、直接処分の場合はそのリスクが遙かに高くなってしまうことは意識しておきたい。非常に大切なポイントのはずだが、日本国内の報道その他でこの点に触れられているのは見たことがない。
2015-06-14 23:59:08なお、海外ではフランス、英国、ドイツ、スイス、ベルギーなどは再処理を選択し、米国、スウェーデン、フィンランド、カナダ、韓国などは直接処分を選択している。再処理を行うには再処理技術が必要で、技術的ハードルはかなり高いので選択できる国はそれほど多くない。
2015-06-15 00:00:27米国やロシアはかつての核軍備競争とその後の核軍縮によって大量の余剰プルトニウムを抱えていて、今のところ再処理のメリットは少ない。ロシアは高速中性子炉も運転しているが、現在の実証炉では増殖も行っていない。ただ、次世代の商用炉では増殖を行う計画としている。
2015-06-15 00:02:17最終処分地の選定ではどの国も苦労しているが、決めてさえしまえば広さの制約は少ないような国土に恵まれている国だと、直接処分を選択するハードルが低い。処分地の選定に制約が多い場合は再処理が有利となるが、韓国などは再処理技術を持たないため必然的に直接処分しか選べない。
2015-06-15 00:04:34以下は私の個人的意見だが、非核兵器保有国でありながら高い再処理技術を持ち、一方最終処分場の選定には制約の大きな我が国にとっては、再処理を選択するのが合理的だと思う。使用済MOXについては、あくまでも高速炉の実用化を目指すべきだと私は考える。
2015-06-15 00:06:32現在のウラン供給状況を考えれば、高速炉でも必ずしも増殖に拘る必要はなく、プルトニウムの消費とマイナーアクチニドの消滅に専念してもよいだろう。いずれにせよ、私たちの世代で責任を持って決めるべきことを決めるというのが大切だと思う。
2015-06-15 00:08:06海外でも最近、地層処分について将来取り出せる可能性を残すようにしようという議論がある。リスクの上では全く非合理的な間違った方向性だと思うが、社会がとにかく「後戻りのできない選択」を嫌い、できればその責任から逃れようとするのは日本に限ったことではない。
2015-06-15 00:10:41私の意見は私個人のものでしかなくて、原子力の是非も含めて全く正反対の意見があってもいいし、どちらかが絶対的に正しいということはない。一番悪いのは、「考える」こと自体を放棄して安直に次世代に「決定の責任」を押しつけることだ。
2015-06-15 00:13:01今既にある使用済燃料については今後原子力をどうするにせよ何とかしなければならない問題だが、とりあえずサイト内で「貯蔵」しておいて将来の世代の判断に委ねるというのは、一見思慮深いようでいて実は問題を大きくしてから次世代に丸投げしているだけで、極めて無責任だと思う。
2015-06-15 00:15:19なお、以上についての技術面は主に原子力学会で進められている「使用済燃料直接処分に関わる社会環境等」研究専門委員会の中間報告書を参考にした。Webで公開されているので、興味のある方は目を通してもらいたい。 aesj.or.jp/special/report…
2015-06-15 00:16:44●ナトリウム冷却材に関する補足●
水やガスなどを冷却材に使用した場合と、液体金属を冷却材に使用した場合との利点と欠点について比較解説
ゆうべ使用済核燃料の処分について言及した時、核燃料サイクルに触れたついでに高速増殖炉の成立性についても少し言及した。いくつかコメントを頂いたが、やはりナトリウムを熱媒(冷却剤)に使う事に対する誤解が多いようだ。この際なので少し補足しておこう。
2015-06-15 12:37:33発電用や船舶動力用の原子炉というのは核分裂による熱エネルギーから機械的な運動エネルギー、発電炉の場合さらにそれを発電機に投入して電気エネルギーを得る装置だ。機械エネルギーの部分はどのタイプも蒸気タービンの回転という形で得ている。
2015-06-15 12:38:27つまり、炉心で発生した熱は最終的には「湯を沸かす」ことに使われている。沸騰水形軽水炉(BWR)は炉心で熱せられた水がそのまま沸騰してタービンを回すが、それ以外の炉型では何かの形で炉心の熱を蒸気発生器と呼ばれる一種のボイラーに移動させる必要がある。
2015-06-15 12:39:23この、炉心の熱を取りだして別のものに移す際に使う媒介が1次冷却剤と呼ばれる熱媒だ。軽水、重水、液体金属、ガスなどが使われる。熱媒の仕事は熱を運ぶことなので、単位体積あたりどれだけの熱を運べるのかという「熱容量」が重要な性能となる。
2015-06-15 12:41:01熱容量を比較するとナトリウムなどの液体金属が最も大きく、水は液体状態ならまあまあで、ガスが最も小さい。水やガスの場合は熱容量を補うため(水の場合はさらに沸騰を抑えるため)に加圧したり流量を増やしたりする必要があるが、液体金属は常圧で使用できる。
2015-06-15 12:42:16この、加圧する必要がないというのは安全上非常に大きなメリットとなる。配管などに僅かなき裂が発生して内部流体が漏れた時、加圧されていなければ滲み出るかポタポタ落ちる程度だが、高圧の系統では勢いよく「噴出」してしまう場合が多い。
2015-06-15 12:43:38最初は小さなき裂でも、勢いよく流出する流体が傷を広げるためある時点で一気に拡大して突然大規模な噴出に至る。圧力の低い系統では腐食の進展などで傷が拡大するにしてもその進行は緩やかで、ポタポタ漏れているのを巡視点検で見つけてから対処しても十分に間に合うことも多い。
2015-06-15 12:44:54水の場合、液体でも加圧されていれば300℃以上になるし、蒸気は更に高温だ。こうした高温・高圧の流体がいきなり噴出した場合、近くに生身の人間がいれば高い確率で命を奪われる。圧力容器や圧力配管というのはとても危険なので、扱うには銭湯のボイラー程度でも国家資格が必要となる。
2015-06-15 12:46:36一方、ナトリウムには反応性の高さという特徴がある。水と激しく反応する様子は見た目にも派手で、いかにも危なそうに見える。ただし、実際には見た目のイメージほど扱いにくいわけではない。もんじゅの場合、主要なナトリウム系統は不活性ガスでパージされており、燃えることはない。
2015-06-15 12:47:54実際に起きたように小口径の計装筒などからパージされていない区画で漏洩があると漏れたナトリウムは当然燃えるが、これも見た目ほどのダメージはない。漏れた分が燃えるだけで、それによって傷口が拡大したり、広い範囲にアクセスできなくなったりするわけではないのだ。
2015-06-15 12:49:38実は、ナトリウムを含む液体金属には冷却剤として非常に扱いにくい側面があるのだが、反応性の高さというのはその主要な理由ではない。では何かと言うと、「透明でない」ことだ。可視光だけでなく超音波やX線もほとんど通さないので、中の様子を窺い知るのがとにかく難しい。
2015-06-15 12:50:45そうした扱いにくさはありながらも、常圧で液体であり、熱容量が大きいことから外部電源が断たれても自然対流だけで十分な除熱が可能というメリットは大きく、原理的に過酷事故が起きにくいことから第4世代の原子炉設計の中にもナトリウム冷却高速炉の設計が多くある。
2015-06-15 12:52:25ナトリウム冷却に扱いにくさがあるのは事実だが、一方で大きなメリットもあり、もんじゅのナトリウム火災での見た目の派手さだけで判断すると判断を誤る。報道などから正しい情報を得るのは、残念ながら現状では非常に難しいが。当事者のプレスリリースも非常に分かりにくい。悩ましいところだ。
2015-06-15 12:53:18●関連資料
わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性—地層処分研究開発第2次取りまとめ—
http://www.jaea.go.jp/04/tisou/houkokusyo/dai2jitoimatome.html