技術・能力があったり、民間資格があっても無免許医行為は許されません。

無免許眼科医のニュースがあったので。 私がまとめるからには医業類似行為の視点からです。 眼科医が医療系国家資格を持たない従業員Aに、コンタクトレンズの処方のための検眼、テスト用コンタクトレンズの着脱をさせたとして医師法第17条違反(無免許医行為)に問われた事件。 続きを読む
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成り行きを東京高裁の判決文から


 1 被告人は、昭和三六年に医籍に登録し、昭和四五年に東京都港区内のaビルb階において「H眼科医院」を開設するとともに、そのころ「株式会社Eクリニック」を設立し、H眼科と同一の場所に本店を置いて、コンタクトレンズの処方、販売等を開始した。

そして、老後は一般眼科診療をやめ、体力的に楽なコンタクトレンズの処方、販売を専門とする眼科医として過ごそうと考え、その準備として東京都大田区内にEの本店を移転するとともに同所にH眼科医院とは別にF眼科医院を開設し、昭和五五年二月にはEの本店を原判示記載のcビルd階に移転し、次いで昭和五九年一〇月F眼科医院を同所に移転開設した。

 2 被告人は、Eをcビルに開設した当初はコンタクトレンズ会社からの派遣従業員にその業務一切をまかせていたが、やがてこれに満足できなくなって自らコンタクトレンズの販売等の経験豊富な従業員を雇って業務運営に当たった。そして、F眼科医院を併設した後の昭和六三年二月ころ、右従業員が退職することとなったためその後任を募集し、これに応募してきた原判示の共犯者Aを面接のうえ採用した。

同人は、それまで家具販売会社やレンタカー会社などに勤務した経験があるものの、医師資格はもとより看護婦、視能訓練士等の資格を有せず、コンタクトレンズに関する知識も皆無であったことから、被告人は、雇用当初の約三箇月間、自らcビルに赴いてAの指導に当たったほか、同人にOMAの講習を受けるように勧め、同人においてもEでの業務の傍ら眼科関係の知識の修得に励んだ結果、平成元年六月ころ講習終了の試験にも合格し、同人単独でF眼科医院及びEの受付事務、問診、検眼、レンズの着脱、処方、装用指導、販売事務、投薬、カルテの記載等をすることができるまでになった。

 3 一方、被告人は、そのころH眼科医院の患者が増えた結果、その診療に追われるようになり、営業時間中にEを訪れることが困難になったことから、Aに「F相談室室長」という肩書を与えてEの業務の大部分を任せることとし、さらに平成三年ころになると、cビルに赴いても、被告人は集金やコンタクトレンズ業者との打合せ、広告の発注等の指示に当たるだけで、Aの処方したコンタクトレンズに問題があって患者から苦情が出た場合などに限って例外的に直接患者の診療に当たるだけの状態となった。

 4 このような状況下で被告人らは、本件一連の犯行に及んだのであるが、コンタクトレンズの購入のためEを訪れた原判示別表3記載のIが、医師資格のないAが単独でコンタクトレンズの処方をしていることに疑問を抱き、Aに対し、違法行為をやめるよう忠告したものの、数週間後においても、あまり診療態勢を改めた形跡が見られなかったところから、Iが警察に申告し、本件が発覚した。


びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

ニセ医者…実は「タクシー運転手」 無免許で眼科医 5.tvasahi.jp/000053160?a=ne… コンタクトレンズに関する医師法第17条違反事件 最高裁:courts.go.jp/app/hanrei_jp/… 東京高裁 courts.go.jp/app/hanrei_jp/…

2015-06-22 19:19:20
リンク テレビ朝日 | テレ朝news ニセ医者…実は「タクシー運転手」 無免許で眼科医 眼鏡メーカーで働いていた知識を使って、眼科医になりすましていたということです。 タクシー運転手の大賀達夫容疑者(51)は1月、医師免許がないにもかかわらず、茨城県ひたちなか市の眼科診療所で、患者5人に医療行為をした疑いが持たれています。警察によりますと、大賀容疑者は実在する眼科医の免許を手に入れ、その医師になりすましていました。以前、眼鏡メーカーに勤務していて、その知識でできる簡単な治療だけをしていました。これまでに全国23府県、37カ所の診療所で1万人以上の患者を診療し、2000万円を稼いでいたというこ
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

コンタクトレンズの医師法違反事件は眼科医が雇っていた従業員(無免許)にコンタクトレンズの検査・処方まで一人でやらせていた事件。眼科医は別の診療所を設けて忙しくなったらしい。それまではその従業員に指導していたようだが。

2015-06-22 19:21:14

被告眼科医の弁護士の主張


びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

で、その被告人である眼科医の弁護士の主張。 Aが従業員。 " まず、所論は、原判決は、医師法一七条において医師資格を有しないものが業として行うことを禁じられている医行為について、これを「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と解し、

2015-06-22 19:23:07
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

被告人と共謀したAの行った検眼、コンタクトレンズ着脱、コンタクトレンズ処方等の各行為をこの意味における医行為に該当するとしたが、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為などというものは世の中に存在せず、

2015-06-22 19:23:58
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

ある行為から右危害を生ずるか否かはその行為に関する技能に習熟しているかどうかによって決まるのであって医師資格の有無に関係しないとして、医師法に関する原判決の前記のような解釈は社会の実態を無視した恣意的な解釈である、と主張する。"

2015-06-22 19:24:42

弁護士の主張追加


次に所論は、国民には職業選択の自由(憲法二二条一項)が保障されているのであるから、職業の制限は公共の利益のために必要かつ合理的なものでなければならず、

特に医師法による制限は業務によってはその全般に及ぶ広範な規制であるから、その必要性、合理性は厳格に主張、立証されなければならないところ

本件において医師法違反に該当するとされた検眼、コンタクトレンズの着脱の各行為については、人体に対し何らの危険性も認められない行為であり、

これを規制する必要性、合理性が全く立証されていないのに、

これを医師法違反として処罰するのは憲法二二条一項に違反する、

と主張する。


上記の弁護士の主張に対する東京高裁の判断


びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

東京高裁の判断 "そこで検討するに、医師法は、医師について厚生大臣の免許制度をとること及び医師国家試験の目的・内容・受験資格等について詳細な規定を置いたうえ、その一七条において「医師でなければ医業をしてはならない」と定めているところからすれば、

2015-06-22 19:27:09
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

同法は、医学の専門的知識、技能を習得して国家試験に合格し厚生大臣の免許を得た医師のみが医業を行うことができるとの基本的立場に立っているものと考えられる。 そうすると、同条の医業の内容をなす医行為とは、原判決が説示するように

2015-06-22 19:28:25
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」 と理解するのが正当というべきであって、これと異なる見解に立つ所論は、独自の主張であって、採用の限りでない。

2015-06-22 19:29:30
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

所論はまた、このような解釈に従うと、医師であっても危険を伴う治療行為を行 う場合は医業といえなくなるなどと主張するが、本条は、その文理に照らし、医行 為を業として行う場合の規制であって個々の医療行為の適否を判断しこれを取り締 まることを目的としたものではないのであるから、

2015-06-22 19:30:14

弁護士の主張の追加部分などに対する東京高裁の判断


 なお、所論は、本件で医師法に違反するとされた検眼、コンタクトレンズの着脱の各行為は、人体に対し何らの危険性も認められないと主張するので、この点についてさらに考察するに、

医師法一七条がその取締りの根拠としている無資格者の行う医業における危険は、抽象的危険で足り、
被診療者の生命、健康が現実に危険にさらされることまでは必要としないと解するのが相当であり、所論の当否もこの観点から決すべきである。


ところで、コンタクトレンズが普及しだしたころ、厚生省における行政解釈として、コンタクトレンズ使用のための検眼、装用の指導等は医行為に当たる(昭三三・八・二八医発六八六)との見解が示され、以来今日に至るまで右解釈に添った行政指導等がなされてきたものであることが認められる。

そして、右行政解釈をも参考にして考えるに、記録によれば、それが発せられた当時からみると現在では医療機器等の格段の進歩が認められ、検眼機を用いての検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱自体による人体への危険は相当程度減少しているということができるが、

なお担当者の医学的知識が不十分であることに起因し、検眼機の操作、データの分析を誤り、またテスト用コンタクトレンズ着脱の際に眼球損傷、細菌感染を招くとかコンタクトレンズの適合性の判断を誤る等の事態が皆無とはいえないうえ、
特に最終的にコンタクトレンズの処方をすることを目的としてこれらの行為が行われる本件のような事案においては、検眼またはテスト用コンタクトレンズ着脱時の判断の誤りがひいてコンタクトレンズの処方の誤りと結び付くことにより、コンタクトレンズを装着した者に頭痛、吐き気、充血、眼痛、視力の低下等の結果をもたらし、最悪の場合は失明に至る危険性もないとはいえないことが認められる。

そうすると、少なくとも処方のために行われる検眼及びコンタクトレンズの着脱の各行為については、原判決のようにこれをコンタクトレンズの処方の一部というかどうかはともかくとしても、実際に各患者に対してコンタクトレンズを処方した場合はもとより、原判決別表番号7、8及び10の事案のようにたまたま
事情があって診療当日処方するまでに至らなかった場合を含め、行為の性質上すべて医行為に当たるというべきである。
論旨は採用できない。


民間資格OMAについて東京高裁の判断


次に、所論は、本件検眼等の行為を行ったAには医師等の資格はないにしてもOMAの資格があり、コンタクトレンズの取扱いには習熟していたのであるから、同人が行った検眼等の行為に保健衛生上の危険性はなく、同人の行為を医師法違反とした原判決は同法及び憲法に違反する、と主張する。

 記録によれば、社団法人D会においては、眼科医療に従事する者全般の資質を向上せしめる目的で各都道府県の支部単位で年一回、合計約四〇時間程度の講習会を実施し、講習終了者に対しては試験を行い、これに合格した者に対し合格証を交付しており、所論指摘のOMA(オフサルミック・メディカル・アシスタント)は、眼科関係者の間で、右講習終了後所定の試験に合格して合格証を取得した者をさす呼称として広く用いられていること、そしてAが右合格証を取得していることが認められる。

しかし、右講習は、その内容、単位数等にかんがみ、講習終了者が眼科医院における受付業務、保険請求事務、視力検査(裸眼及び所持眼鏡による視力)、色覚検査(検査表の判読)等の行為を円滑に行える程度のことをねらいとしたものに過ぎず、この講習を受講し所定の試験に合格したからといって、形式的にも実質的にも医師資格や看護婦資格等に代替しうるものでないことはいうまでもないのであるから、Aの本件行為を医師法に違反するとした原判決に所論の法令適用の誤りは認められない。
論旨は理由がない。


びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

さっきのコンタクトレンズの従業員A,OMAという日本眼科医会の民間資格は持っていたが、日本眼科医会のサイトに資格の説明が書いてない。lo003.com/oma/post_3.html

2015-06-22 20:29:57

上告棄却


 弁護人山口紀洋の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例は本件とは事案を異にして適切でなく、その余は違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、コンタクトレンズの処方のために行われる検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱の各行為が、いずれも医師法一七条にいう「医業」の内容となる医行為に当たるとした原判決の判断は、正当である。

 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。


引用判例はHS式無熱高周波療法の裁判であろうか?

まとめ HS式無熱高周波療法の裁判:最高裁差し戻しまで。 医療系国家資格を持たず、HS式無熱高周波療法を業としていた者があん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法第12条違反(医業類似行為の禁止)に問われた裁判。 最高裁はこの事件で医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼす虞のある行為」に限局する旨を判示。 そのため整体師やカイロプラクターなど、医療系国家資格を持たない者が業務を行う上で、自らの合法性の根拠とする判例である。 どのようにHS式無熱高周波療法が「人の健康に害を及ぼす虞のある行為」と認定され、有罪と判断されたかを検証し、現在の整体やカイロプラクティックといった無免許施術が本当に合法なのかを検討する。 この事件は 平簡裁:昭和28年4月16日 仙台高裁:昭和29年6月29日、昭和28年(う)375号 最高裁:昭和35年1月27日、昭和29年.. 5371 pv 8 1 user 5
まとめ HS式無熱高周波療法裁判:差し戻し控訴審ー裁判所はどのようにして「人の健康に害を及ぼす虞」を判断したかー 医療系国家資格を持たず、HS式無熱高周波療法を業としていた者があん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法第12条違反(医業類似行為の禁止)に問われた裁判。 最高裁はこの事件で医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼす虞のある行為」に限局する旨を判示。 そのため整体師やカイロプラクターなど、医療系国家資格を持たない者が業務を行う上で、自らの合法性の根拠とする判例である。 どのようにHS式無熱高周波療法が「人の健康に害を及ぼす虞のある行為」と認定され、有罪と判断されたかを検証し、現在の整体やカイロプラクティックといった無免許施術が本当に合法なのかを検討する。 前回のまとめ( http://togetter.com/li/835309 )では最高裁の差し戻し判決まで解説しました。 最高裁の差し戻し判.. 13725 pv 19 1 user 1
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

つまり免許制度で一般人が禁止されている行為は、どんなに技術があろうとも無免許では行えない、ということ。 その認定を医師免許を持っている眼科医が行っていたとしてもな。 だから民間資格と称しているものをいくら持っていても免許が必要な行為はなんら許可されない

2015-06-22 19:33:41
びんぼっちゃま@インディーズ医療法学者 @binbo_cb1300st

いずれ解説しようと思っていたのだが、無免許眼科医のニュースのついでに書いた。

2015-06-22 19:34:21