山本七平botまとめ/【十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動②】日本の革新勢力が保守よりも保守的な理由/「保守のための革新」が明治以降の日本人の生き方

山本七平『1990年代の日本』/十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動/昭和の転換は十五年周期/191頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【昭和の変換は15年周期】だがこの点はひとまず措き、昭和におけるさまざまな転換期は、およそ15年ごとに起っていることに注目しよう。 この「15年周期説」を、大分前に「ダイヤモンド」に書き、このごろ採用される方も多くなった。<『1990年代の日本』

2015-06-19 19:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

②もちろんこれは仮説だが、こういう仮説を立ててみると、ある程度の予測は可能ではないかと思われる。 まず昭和5年だが、6年が満州事変で、大正民主主義が消え、人びとの意識が転換して、軍国主義が始まる。 これがちょうど15年続き、昭和20年に一転期が来ている。

2015-06-19 20:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

③この一転期が戦後民主主義という形で意識の変化を起し、だいたい35年まで続く。 いわば20年から35、6年まで、すなわち60年安保までである。 そこでまた一転期が起り、経済成長時代が約15年続き、だいたい50年、1975年に一転期が来る。

2015-06-19 20:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

④15年ごとの意識の転換は、明治以来たいへん面白い形で出ている。 明治では、15年でとるのはちょっとむずかしいが、三十年でとっていくと、ほぼ完全な転期になっている。 もしも、これがそのまま続くと仮定すると、意識の何らかの大きな転換は90年に起ることになる。

2015-06-19 21:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤いわば75年から90年までは成長より安定の「休養・休止願望」の時代だが、いままでの例でいくと90年には、何らかの意識の転換があると考えられる。 80年代は、むしろ75年からの意識の継続で、そのうちの十年を過ごすことになろう。

2015-06-19 21:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥…15年転期とは一つの仮説であって、よく見ていくとその前後にある程度の意識の変換は見える。 ただそれは顕在化せず潜在し、ある時に顕在化する。 その前から徴候が見えるが、見え出すのは85年以降で、それまでは大体75年の意識の継続でいくだろう。 そう見ていいのではないかと思う。

2015-06-19 22:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦では一体何によって15年ごとの転換が起るのか――。 色々な面が考えられるが、大きい要素は経済的要因と人口構成の変化、および人口における年齢構成の変化であろう。 これはいや応なく起る一原因である。 今では高齢者問題が論じられているが、60年代にはこれが意識にのぼっていない。

2015-06-19 22:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧人口学者、統計学者などが統計的に20年ぐらい先にはこういう問題があると言っても、人々がそれを自分の問題として意識していない。 こういう時は意識に影響はない。そしてそれに気づいた時に人々の意識は変わる。 意識の転換に一番大きく作用しているのが人口増加と人口構成の変化ではないか。

2015-06-19 23:12:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨つまり日本は、明治の初めにおよそ3千5百万で出発し、21世紀に入る時に1億3千5百万になり、そこから横ばいになる。 これが統計学者のほぼ一致した見方である。 人口が横ばいになると社会構造も意識も、ある程度変わってくるだろう。

2015-06-19 23:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩人口がふえないという事は、人口の圧力がなくなる事だから、大体ヨーロッパのような型になっていく。 それまでの二十年間は今までの型がある程度続くが、その末期90年代になると、この圧力が衰えてくるので徐々なる意識の変化が起って、それが90年代に一転機を来たすのではないかと思う。

2015-06-20 08:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

①なぜ、人口の増加が人間の意識に変化を与えるか。 それはつまり人間とは元来保守的なもので、自分の生活水準とか生活状態を変えたくない、特に下げたくないという意識が強い。 これは強くて当然である。<『1990年代の日本』

2015-06-20 08:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

②ところが3千5百万の人口が1億3千5百万になると、もし全てがそのままなら、各人の生活水準は三分の一に切り下げねばならない。 各人の生活水準をそのまま保存しようとすれば、いや応なく社会は変化せざるを得ない。

2015-06-20 09:09:27
山本七平bot @yamamoto7hei

③ところがそうなると各人の生活もまたそれによって変化せざるを得ないという現象が起る。 いわば各人が、自己の生活水準を崩すまいとして、あらゆる奮闘をする。 このことが逆に社会を変え、各人の生活も意識も変えていく結果になる。 大体これが明治以降の日本人の生き方である。

2015-06-20 09:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

④従ってこれは保守のための革新という形であり、そこで日本の社会への何らかの革新という動機は、常に存在するけれども、それは保守のための革新だから、これを誤解して本当に「革新のための革新」をやろうとすると、人びとはそっぽを向いて支持しなくなる。

2015-06-20 10:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤これは人口増加がとまった社会における、社会そのものを変えようという形の革新ではなく、 今の自分の生活状態を変えたくない、ないしはこの状態のままで向上させたい という大変保守的な考え方が基本であり、その保守的な考え方が逆に社会を変えていく、という形の変革になるわけである。

2015-06-20 10:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥世界において、これほど急激に人口が増加しながら逆に生活水準を上げていったという国は、まず例外的で、それは大変な変革を要請して不思議でないが、その基本はあくまでも保守ないし保守的向上なのである。

2015-06-20 11:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦私はこれを「維持のための革新」または「保守のための革新」―― いわば各人が自己の現状を維持しなければならないために、人口増に対応して醸成された革新、 つまり社会に基本的な革新を求めるのではなくて、その逆のために要請される革新と見ている。

2015-06-20 11:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧日本の革新勢力の主張が保守よりも保守的であることはしばしば指摘されるが、以上の観点からすればこうなって当然であろう。 こういう形は、速度をゆるめながらも20世紀じゅうは続く。 そして21世紀からは別な型になる。

2015-06-20 12:09:16
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨しかし以上のような形がつづく限り、意識の保守化は、社会の保守化にならず、保守のため変革を要請するという逆作用が出てくる。 何によってこの要請に対応してきたかといえば、今までは産業構造の変化、大量生産方式の採用によって対応できた。

2015-06-20 12:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩従って、大量生産ができないものは、対応はできない。 典型的なものは土地である。 人口増に対応しうるだけの土地開発をしろといっても限度があり、車をつくるというような形で、宅地需要に対応していけない。 これは土地の高騰を生む。

2015-06-20 13:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪しかしこれも明治から見ると、住むことができる土地は倍以上にふえている。 明治以前なら絶対住めないと思われるようなところを埋め立て、また造成し、水がなくて住めないようなところを、水道の普及、道路の普及その他によって、住める状態にしてきた。

2015-06-20 13:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫それによって相当にふえているが、車を作るような形では対応できない。 その為に価格騰貴が起る。 これは防ぎようがない、その意味で前記のアンケートの判断は大変正しいと見ていいと思う。 だが21世紀にはこれもとまる。 そして意識がそれに先行する状態は90年代に出てくると思う。

2015-06-20 14:09:05