小説【HARD MIRACLE ~私が彼の3日間~】

増田貴久メイン。 三文小説みたいな、あり得ない奇跡が運んだもの―それは…?! 2015.6.29~2015.7.4 続きを読む
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はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#HM3D 025/162 「…鼻血なんか出すなよ。」 シゲさんが耳元で呟く。 否、興奮するなって方が無理…っ! シゲさんの大袈裟な咳払いで、 私ははっと我に返る。 「あ、あーちゃん!」 近くにいたスーツ姿の女性を呼ぶ。 「お、俺、コンビニ寄ってくんの忘れちゃった♡」

2015-06-29 19:56:54
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#HM3D 026/162 「いつもの雑誌と…あ、あと唐揚げ、食べたいな。」 「ちょっと、あっこさん使うなよ。」 ソファーで資料に目を通していた増田さんが、 きっ、と鋭い視線を送るから、 やっぱいいや、と言い掛けた時。 「あ、じゃあ俺も。  近くのカフェでコーヒーお願い。」

2015-06-29 19:57:15
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#HM3D 027/162 「目覚ましに、濃いめのやつがいいなー。」 「シゲまで。自分で行きゃいいじゃん!」 「大丈夫。まだ時間あるんで行きますよ。」 “あーちゃん”はふんわり微笑むと、 控室を出て行った。 「さ…正味10分程度で、  お2人には、状況理解して頂きます。」

2015-06-29 19:57:27
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#HM3D 028/162 控室に入ったらまずマネージャーを追い出す、 と、作戦を考えたのはシゲさんだった。 「状況?」 小山さんがぼふっ、と目の前のソファに座る。 シゲさんは私の赤い顔を一瞥して、 小山さんにTシャツを被せた。 増田さんは、少し不機嫌な顔で私を見ている。

2015-06-29 19:57:36
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#HM3D 029/162 「つまり、シゲが言いたいのは…」 暑そうにTシャツにバサバサ風を送りながら、 小山さんがじっとこっちを見る。 「この手越は、女子大生だと。」 「そう。」 「…シゲ、最近そんな忙しいの?」 「は?」 「新作書き出したの?…次はメルヘン?」 「っ違!!」

2015-06-30 07:51:01
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#HM3D 030/162 「シゲさんの言う通りなんですっ!」 「シゲ…さん?」 増田さんが私の隣、 ソファの肘置きに腰掛ける。 「私、応文学院大学3年、村瀬七菜です!」 そうだ! 近くにあった書類の裏に、名前を書く。 書道4段の文字―、 多分手越さんには書けない、私の名前。

2015-06-30 07:51:09
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#HM3D 031/162 「…確かに、手越の字じゃねーな。」 増田さんが、書類を蛍光灯に透かすみたいに、 見上げて眺める。 「どれどれ?…ななな?」 小山さんも文字を見上げた侭呟く。 「違っ、“なな”ですっ。」 と。 増田さんがキッと私を見る。 視線に思わず身体が固まる。

2015-06-30 07:51:16
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#HM3D 032/162 次の瞬間―。 増田さんの顔がぐっと急に近く… え?! 身体は緊張で1mmも動かない。 …キスされる?! 思わずギュッと目を瞑る。 「…分かった、これ、手越じゃない。」 目を開けると、顔を離した増田さんが、 少し笑ってこちらを見ていた。

2015-06-30 07:51:24
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#HM3D 033/162 「手越はもっと、俊敏に拒否る。」 増田さんの掌が、私の銀色の前髪を上げて、 じっと瞳を見つめた。 …こ、怖い。 「何赤くなってんだよ、ばか。」 シゲさんがニヤニヤ笑いながら私を見る。 「キスされると思ったでしょ♪」 小山さんは既に爆笑している。

2015-06-30 07:53:22
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#HM3D 034/162 「俺の唇、そんな安くねーし。」 私の前髪をくしゃくしゃ乱すと、 増田さんは背伸びをしながら立ち上がる。 またキッと、鋭い視線。 「あ、まっすーお腹空いてて不機嫌だから、  気にしないであげて?」 小山さんが、私の顔を覗き込んで微笑む。

2015-06-30 07:53:29
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#HM3D 035/162 「馬鹿野郎、人をガキみたいに言うな。」 膨れた侭、増田さんは、 私の正面に座り直す。 「シゲが言ってることが本当だとして…」 「や、本当だろこれ!」 「七菜ちゃん…“チュムチュム”は踊れるかな?」 「…へ?」 「あと30分で、リハだけど。」

2015-06-30 07:53:37
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#HM3D 036/162 「NEWSさん入られまーす。」 スタジオに、ぱらぱらと拍手が起こる。 「よろしくお願いしまーす!」 私は、3人から少し遅れて歩く。 「よ、よろしくお願いしますっ!」 …と、周囲のスタッフさんが、 不思議そうに私を見る。 ええっ、私もうトチった?!

2015-06-30 12:29:41
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#HM3D 037/162 「…DVDどーりやれ。」 シゲさんが耳打ち。 そか、“手越さんっぽくない”んだ…。 えっ、手越さん…ぽく?! “ハニー♡”とか“愛してる♡”とか、 あのテンションを…やれと?! 「手越、キツくなったら言えよ?」 突然、肩をぽんと叩かれる。

2015-06-30 12:29:53
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#HM3D 038/162 振り向くと、増田さんが立っていた。 「えっ」 「熱、下がったばっかでしょ?」 近くにいたスタッフさんが、 そうなんですか?!と慌てる。 「あ、大丈夫です。  こいつ本番はスイッチ入るんで。」 増田さんの視線が刺さる。 「…だよな?」 「う、ん…」

2015-06-30 12:30:01
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#HM3D 039/162 幸い、DVDも歌番組も追いかけてたお陰で、 何となくの振りは覚えてたし、 何より、自分の体よりも数百倍しなやかな、 手越さんの身体能力のお陰で、 何とか振りを30分で叩き込んだ。 …けど。 「じゃ、通しでお願いしまーす。」 ぱっと照明が変わる。

2015-06-30 12:30:07
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#HM3D 040/162 心臓が千切れそうになる。 聴き覚えのあるイントロ。 4人の一番前で、くっと膝を屈める。 「七菜ちゃん笑って」 耳の近くで鳴る、低い囁き―増田さんの声。 ちらり横目で見ると、 増田さんは視線も合わさず踊る。 『俺、仕事に穴開けたくないし。』

2015-06-30 14:32:32
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#HM3D 041/162 混乱の中で手越さんが言ったこと。 『ダメ、1回挑むって決めたことから逃げちゃ。』 私の中にいた彼の強い眼差し。 今までコンサートやDVDで見てきた、 手越さんの熱い“プロ意識”。 この身体に染み付いてるんだ。 私の魂なんかで汚しちゃダメだ!

2015-06-30 14:32:39
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#HM3D 042/162 私、やるって決めたじゃないか。 挑むって決めたじゃないか。 カメラが私の側に近付く。 視界の隅、モニターには手越さんのアップ。 私はチラッと舌を出し、 “チュ厶”の指先にキスをした。 …一番カワイく映ってやる! 小山さんの歌パートが終わる。

2015-06-30 14:32:49
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#HM3D 043/162 『ガンジスのほとりで君を見た』 喉は鈴のような音を鳴らす。 凄い。こんな風に歌ってるんだ。 心地よい振動、スポットライト。 私はいつもテレビで見る、 手越さんの綺麗でセクシーな仕草の幾つかを、 カメラに向かって、堂々と模した。 …気持ちいい。

2015-06-30 14:32:55
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#HM3D 044/162 息が切れてるのを見せないように、 最後のポーズまで、全力で笑顔。 「OKでーす!この後本番お願いしまーす!」 「だから言ったでしょ?  手越はスイッチ入るから大丈夫だって☆」 小山さんが、私の髪をわしゃわしゃ撫でる。 「よく頑張りました、手越。」

2015-06-30 14:33:02
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#HM3D 045/162 「甘いよ小山は。」 控室に戻ると直ぐに、増田さんが言う。 「ダンスはまぁまぁ見れたけど、  歌!ハモり全然だったじゃん!」 「えっ、ハモリパートなんて練習…」 「言い訳しない!いい?  本番までに、全部覚えろ!」 「ぜ、全部?!」 厳しい…!

2015-06-30 16:29:28
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#HM3D 046/162 「まっすーのスイッチ入っちゃったよ。」 シゲさんはニヤけながらこっちを見てる。 「無理しない程度にね。」 小山さんが、笑顔で増田さんに抱き付く。 「七菜ちゃんには悪いけど、頑張って貰わないと。」 増田さんは、すっと小山さんの腕を避けた。

2015-06-30 16:29:34
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#HM3D 047/162 「アイドル手越祐也の劣化なんて、有り得ない。」 手際良く腕のアクセサリーを外すと、 「分かったら、キーボード前に集合!」 増田さんは、私の襟を引っ張って、 キーボードの前に座らせた。 「簡単だよ?覚えるんじゃなくて、  思い出す作業だから。」

2015-06-30 16:29:40
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#HM3D 048/162 増田さんに合わせて歌ううち、 その“思い出す作業”の意味が分かる。 身体中に、歌が染み付いている。 ダンスの時も感じた自然な感触。 まるで最初から知ってるみたいに、 身体が勝手に、軽やかに旋律を奏でる。 それは私の力じゃない、手越さんの能力。

2015-06-30 18:52:54
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#HM3D 049/162 増田さんのスパルタのお陰で、 何とか収録を終えた。 「…皆さんっ!」 控室を出る直前、意を決して声を出す。 「ご迷惑おかけしました!  そして、ありがとうございました!!」 私が何とか手越さんやり切れたのは、 皆さんのお陰で… 「は?」

2015-06-30 18:53:01
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