日本海沿いの安宿で死んだ友人に会った8

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アドリア海 @keizi80

「『会社の登録地にするという目的がある以上、その住所は半永久的に所有できるものでなくてはならない。そこで誰も見向きもしないようなその土地を調達したのです。TSUTAYAに拒絶されたのは、僕が一介の個人で、僕の映画が会社組織により創造されたものではないという理由によるものでした』」

2015-07-01 14:04:29
アドリア海 @keizi80

「『ですが、これで僕も晴れて映画会社の代表ですからね。列記とした業界人であるわけです。もうTSUTAYAに侮らせたりはしません。同時に僕はその土地に映画館を建てますよ』」

2015-07-01 14:09:30
アドリア海 @keizi80

「『テントの中で、手製の白布に映像を投影する、日本一小さな映画館をね。映画館で上映される、会社作成の映像作品、それはもはや世間一般に言われるところの【映画】以外の何者でもありません。然るに僕は確かに映画監督であり、かねてからの夢を達成できたに違いないのです』」

2015-07-01 14:10:53
アドリア海 @keizi80

「そう屁理屈をゴネて自己満足に浸る彼相手に、私はしまいには殺意さえ抱くようになりました。彼はあまりにも世の中を、そして人生を安易に考えていました。ですが、あえて私が無意味な凶行に及ぶ必要はありませんでした」

2015-07-01 14:13:43
アドリア海 @keizi80

「ある日彼はこれまで以上にやつれ、もはや死体のような土気色になった顔をスカイプ越しに覗かせました。『警察の厄介になってきました』と、彼は言いました。聞けば、彼はかねてより住宅地のど真ん中にテントをはり、近所迷惑を考えぬ大音量の『映画祭』を一人で開催していたため」

2015-07-01 14:16:54
アドリア海 @keizi80

「たびたび警察から叱責を受けていたらしいのですが、つい先日、彼のテントが全焼する小火騒ぎがあり、結果連行されて、次あの土地にテントを建てれば務所にぶち込むと、散々脅されながらようやく出てきたそうです。警察はあくまで発火元は、テント内にある彼の映写装置であると見ていたようです」

2015-07-01 14:19:28
アドリア海 @keizi80

「その話を聞いた私は愉快でたまりませんでした。愉快であるあまり、つい心の奥で渦巻いていたある疑念を、包み隠すことなく彼にぶつけてみることとしました。 『君、それは出火元は君の機材じゃないよ』 私はあくまで彼に同情しているそぶりを装いながらそう語り掛けました」

2015-07-01 14:21:51
アドリア海 @keizi80

「僕はその火事は、彼を強制排除しようと目論んだ近所住民の放火によるものとにらんでいたわけです。その推測を教え聞かせ、彼の動揺と一層の憔悴を引き出し観察してやろうとしたわけです。しかしながら以外にも彼は瞬きひとつせず 『分かってます』 と応じました」

2015-07-01 14:26:10
アドリア海 @keizi80

「『完成まであと一歩に迫った、僕のあるドキュメンタリー映画の公開を恐れた勢力が、僕の存在をこの世から消し去ろうと目論んでいるのです』 動揺したのは私のほうでした。 ですがすぐに、やつめきっと度重なる災厄に統失でも発症させたのであろうと思い直し」

2015-07-01 14:31:59
アドリア海 @keizi80

「『へえ、誰なのその勢力っていうのは?おじさん力になってあげるから、教えて御覧なさい』 と問いかけました。 すると彼は大真面目な顔で 『巨人の子孫達です』 と、こういうわけです」

2015-07-01 14:33:01