ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モシモシ。スーサイドだ……俺だ。スーサイドだ。誰かいるか。応答が遅れた。ずっと立て込んでてよ……」『スーサイド=サン?無事だったの?どこ?』ノイズ混じりの音声が返る。ネザークイーンだ。スーサイドは言った。「今どうなってる!」『ディスカバリー=サンを行かせた。精一杯』「何?」45

2015-07-05 16:38:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『アタシ達も引き払う……まず先にディスカバリー=サンを行かせ……』KRAAAASH!破壊音が通信機と耳とでユニゾンした。『グワーッ!』KRAAASH!『グワーッ!』スーサイドは己を強いて意識を保つ。イクサを離れてニンジャアドレナリン分泌が止まり、負傷の重さが際立ち始めた。46

2015-07-05 16:46:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちょこまかと忌々しい虫めが」クリスタライズドは呟いた。周囲の建物を殴りつけながら足元の敵を探す。彼のジツは氷の鎧に己を覆う事。"鎧"とは比喩的な物言いだ。事前に十分な生成時間を与えられれば、彼は己を中心にした人型の氷像を、数階建ての建物に比するサイズにまで育てる事ができる。48

2015-07-05 16:53:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニチョームの壁の中、主要な大通りは自治会の者達によってバリケードやマキビシの類いをあらかじめ張り巡らされ、封鎖されていたが、クリスタライズドはそれらをものともせずに粉砕、叩き潰し、踏みつぶし、道路沿いの建物をスナック感覚で破砕しながら、ヤグラ337に突き進んだ。 49

2015-07-05 16:58:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

迎撃に出たのはセントールとファーリーマンだ。クリスタライズドの巨大なパンチはファーリーマンを一撃したが、爆発四散せしめてはいない。身軽な毛の塊はバック転を繰り返して路地裏に消え、セントールはヒット・アンド・アウェイ戦術を繰り返したのち、何らかの合図を受けて離れていった。50

2015-07-05 17:00:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クリスタライズドはヤグラ337に十数度のパンチを繰り出した。崩壊は時間の問題だが、その都度、ニンジャが攻撃を仕掛けにくる。「負けイクサを引き延ばす屑どもめ」クリスタライズドは氷像内で呟く。氷像内は空気が極めて少ない。しかし彼はニンジャであり、肺活量は度外れている。 51

2015-07-05 17:03:28
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「イヤーッ!」雑居ビルの屋上を渡ってきた影が再び攻撃をしかけた。「イヤーッ!」クリスタライズドは裏拳で払いのけんとす!「ハイーッ!」影は裏拳にボーを突き立て、体操選手めいた勢いで回転、飛び離れた。ファーリーマン!「オノレ!」クリスタライズドは氷像越しに声を放つ。「無駄ダゾ!」52

2015-07-05 17:07:49
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「イヤーッ!」ビルの壁を蹴ったファーリーマンが再び飛びかかった。「イヤーッ!」クリスタライズドは殴りつけようとした。ファーリーマンの跳躍速度は速く、狙いをそれた拳が雑居ビルの三階ベランダを粉砕した。KRAAASH!「イヤーッ!」苛立ち紛れの蹴り!KRAAASH!53

2015-07-05 17:11:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「ヌウーッ」ボーの打擲衝撃が氷像を伝わり、クリスタライズドは呻いた。「小虫め……あきらめが悪い」彼は後方に思いを馳せる。「スターゲイザー=サンの到達はどうなっている?」「ハイーッ!」ファーリーマンは更に壁を蹴り、間髪入れず襲い掛かる!「イヤーッ!」 54

2015-07-05 17:13:53
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「イヤーッ!」クリスタライズドは殴りつける!再びファーリーマンはボーで回避を試みるが、その動きが不意に鈍くなった。クリスタライズドは敵の思いがけぬファンブルを逃しはしない。大質量の拳がファーリーマンを捉える。「グワーッ!」クリスタライズドは殴り抜けた。 55

2015-07-05 17:15:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

毛むくじゃらのバイオニンジャは大の字に叩きつけられ、アスファルトに小クレーターを作った。『こちらはサブジュゲイター。ヨロシ・ジツの焦点を拡大し、広域に展開』「成る程。十分に役に立つ」クリスタライズドは答えた。「あわれな実験モルモットの群れだ」彼はヤグラ337に向き直った。56

2015-07-05 17:17:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あらためて、ビルの破壊に取り掛かる」クリスタライズドは通信し、氷の巨大拳を振り上げた。そして叩きつけた。「イヤーッ!」KRAAASH!既に亀裂を生じていた壁面がついに粉砕!「ンンー……どこをやったかな?」残忍な笑みを浮かべ、クリスタライズドは拳を引き抜く。 57

2015-07-05 17:21:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ!」彼の手は犠牲者を一人掴んでいた。「アイエエエ!」逃れようともがくが、氷に衣類が張り付いてしまう。クリスタライズドは笑った。この者はニンジャではない。ハッカーか。「非ニンジャノ屑」氷像は嘲笑った。「アイエエエ」拳をビルに叩きつける。KRAAASH!「アバーッ!」58

2015-07-05 17:24:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クリスタライズドは多少満足し、次の拳を振り上げた。破砕した壁ごしにフロアが見て取れる。中にまだ何人かいるかもしれない。「イヤーッ!」「ゲコーッ!」その腕に長い舌が巻き付き、止めた。クリスタライズドはそちらを見た。ヤグラ337の隣接ビルの屋上に巨大蛙が出現し、舌を放ったのだ。59

2015-07-05 17:29:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クリスタライズドの氷腕はシュウシュウと煙を噴いている。舌がなんらかの粘液を分泌し、氷着を防いでいるのか。「イヤーッ!」構わずクリスタライズドは腕を振った。「ゲコーッ!」バイオ蛙の拘束力はいかにも弱い。クリスタライズドは通りを挟んだ建物にフロッグマンを叩きつけた。「グワーッ!」60

2015-07-05 17:31:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ははは、成る程ヨロシ・ジツ。これは実際やりやすい。感動的だ」クリスタライズドは笑った。「バナナの皮をつるりと剥いたような爽快感だ」フロッグマンは蛙を収縮させながら落下する。そこへクリスタライズドはケリ・キックを見舞った。「おや?」目を見開く。「グワーッ!」バランスを崩す!61

2015-07-05 17:35:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン、何が!クリスタライズドはゆっくりと氷像ごと転倒しながら、インターラプトの内容を理解した。ケリを繰り出さんとした脚部に邪魔な何かが突き刺さっていた……ハープーンだ!隣接ビルのベランダに設置されたロープ付きハープーン発射装置!フォレスト・サワタリがそれを操作していた!62

2015-07-05 17:37:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サワタリはハープーン射出装置の車輪型ハンドルを力任せに回す。脂汗が滴り落ちる。彼とてもヨロシ・ジツの一定の影響を受けているのだ。キリキリと音を立てて、ワイヤーが巻き取られる。ZZZDOOOM……クリスタライズドは付近のビル壁を剥がし、アスファルトに手をつく。63

2015-07-05 17:41:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「小癪な」クリスタライズドは氷の脚に力を込め、フットボールのタックルめいてロケットスタート前進した。ハープーン射出機はワイヤーに引っ張られ、ベランダを引き裂く!サワタリは転落、猫めいて空中で回転したのち着地した。クリスタライズドは勢い余って通りを挟んだ正面の建物に突っ込んだ。64

2015-07-05 17:48:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAAASH!クリスタライズドは建物から巨体を剥がし、ヤグラ337に再び向き直った。その股の下を何かが走り抜けた。『いけません!』サブジュゲイターの通信。『あれはディスカバリーか?セントール……』「お役御免の不良バイオニンジャなど捨て置けばよい」クリスタライズドは言った。65

2015-07-05 17:51:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それよりも、貴殿はヨロシ・ジツを引き続き重点されたし。しぶとく抵抗してくる屑共が存外邪魔くさい」そして彼は再び拳を振り上げ、ヤグラ337に叩きつける。KRAAAASH!もうもうと立ち込める粉塵!クリスタライズドは拳を引き抜く。更にもう一撃くわえて、フィニッシュしてやろう。66

2015-07-05 17:56:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲコーッ!」クリスタライズドは顔をしかめ、横を見る。振り上げた腕にまきついたのはお決まりのフロッグマンの舌である。セントールらの逃走経路を守るように、再び巨大化した蛙が道路を塞いでいた。まただ。面倒な事だ。しかもさっきより更に弱い拘束力。邪魔でしかない。彼は拳に力を込める。67

2015-07-05 18:01:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何?」クリスタライズドはフロッグマンを二度見た。氷像内の不明瞭な視界であっても、その舌の上を走って向かってくる別の存在に気が付いた。「……何?」何らかの対処が必要か?検討する時間もあらばこそ、次の瞬間その者は高く跳んで、クリスタライズドの視界の上に消えた。「イヤーッ!」68

2015-07-05 18:03:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クリスタライズドにそれ以上の行動の自由は無かった。次の瞬間、氷像の脳天部が砕けた。攻撃者のカラテを止め、氷温によって逆に傷つける無敵のコリ・アーマーは今回、ゆっくりと、だが決して止まることなく侵入してくるカワラ割りの拳を防げなかった。「え?」クリスタライズドは目を見開いた。69

2015-07-05 18:07:33