不知火と初霜の七夕

帰りの電車で軽率に浮かんだので書いた。特に反省はしていない
1
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

提督いわく、『色々危ないルートでようやく手に入れた』笹には艦娘達の書いた短冊がところ狭しとぶら下がっていた。 「初霜さん、短冊にはなんと書いたんですか」 南国のぬるく湿った風がカサカサと笹の葉と短冊を揺らす。 「秘密です」 不知火の質問に初霜は肩をすくめた。 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:35:15
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「貴女のことだから、どうせ『皆を守れるように強くなりたい』等と書いたのでしょう」 「私の事なんだと思ってるんですか?」 鼻を鳴らす不知火に、初霜は頬を膨らませる。 「では教えてください、初霜さん」 「あ、それは……」 不知火は意地悪げに笑っている。分かりやすい罠だ #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:39:06
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「自分で見ればいいじゃないですか、そこのピンクのです」 「どうせ貴女の願いは子供じみた――」 初霜の指差した短冊に書かれた願い事を見た不知火の言葉が途切れた。 『不知火さんを守れるくらい強くなりたい 駆逐艦初霜』 「子どもじみた願いですよ! どうせ!」 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:40:38
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

積乱雲のように急速に悪化していく初霜の機嫌を取ろうと不知火は必死に弁解の言葉を考える。 「いや、不知火はそういう意味で言ったのでは」 しかし思考が空回りするだけで言葉は出てこない。 「いいです、欠陥駆逐艦は欠陥駆逐艦らしくしてますから!」 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:44:11
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

不知火は駆け出そうとした初霜の腕を掴んだ。 「欠陥駆逐艦なら、それらしく守られていて下さい」 「な……んですって!」 さすがに不知火に言われたのは心外だったのか、初霜の表情が険しくなった。 「貴女はどうしてそうも大きなものを背負おうとするのですか」 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:48:51
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

不知火には初霜と同じことが出来ないから悔しかったのかもしれない。 「だって! 今度こそ護りたいんです!」 "前"の記憶はどの艦娘も持っている。それがトラウマになっている者も乗り越えようともがく者も、別のことで埋め合わせしようとする者もいる。 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 23:04:20
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「初霜さん」 「何ですか」 初霜はいつも不知火にかける声よりも一段低い声で答える。 「貴女はもう、不知火よりも強いんですよ」 「お世辞はいりません!」 「貴女の理想にかける気持ちは不知火よりもずっと強い。これだけは認めます」 不知火は初霜の肩を両手で掴んだ。 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:53:13
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「でも――」 不知火は初霜を強く抱き寄せた。キスをする勇気はなかった。 「少しは不知火のことも頼って下さい」 精一杯の背伸びをしてそう口にするのがやっとだった。 「ずるいです、不知火さん」 初霜の腕が不知火の背中に伸びてきゅっと不知火の細い体に絡みつく。 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:55:56
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「守ってくれるなら、ずっと守ってくれないと嫌です」 「大丈夫です。不知火は簡単に沈んだりしませんから」 『初霜さんにもっと優しく出来ますように 駆逐艦不知火』 と書かれた水色の短冊は、不知火の視界の端でラバウルの風に揺れていた。 #ぬい霜の七夕

2015-07-07 22:58:55