元関脇 竹乃節によるACECOMBAT04論 その6

プレイヤー(P)、プレイヤーキャラクター(PC)、そしてノンプレイヤーキャラクター(NPC)の三項構造の観点から見て、シリーズの中でも04が特異であるということについて解説します。
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元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

また、無線の内容も、実務に即した「無線に乗せるべき発言」だけが流され、またのちの一部作品であるような「敵と味方が語り合っている」ような内容は存在しない。

2016-09-03 23:09:13
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ゲーム発売前、AC04の無線システムの紹介として、「敵の無線を傍受することも…?」という表現が使われていたが、それに反してAC04内における敵の無線の扱いは「メビウス1の視点ではなく、神の視点からそれを聞いている」というスタンスで統一されている。

2016-09-03 23:09:20
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

つまり、プレイヤーに「様々な視点から見たユージアという世界」を伝えるにあたって、情報を伝達する段階では決して製作者の意図を反映させないという狙いがあのゲームにはある。

2016-09-03 23:09:28
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ゲーム内で表示されるコンテンツについて、それが「具象の側なのか抽象の側なのかどちらなのか」という疑問は出てくるし、ゲームのタイトルごとにその回答は異なるであろうが、AC04の場合、回答は「すべて具象の側だ」となる。

2016-09-03 23:09:35
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

つまり、AC04で提示される画像や無線やシチュエーションは、すべて「製作者が見せたい意図や思想」ではなく、(それがあくまで作り物であったとしても)「あちら側の世界で起きている(誰かが起こしている)事象」の積み重ねである。

2016-09-03 23:09:42
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

そうすることで、「製作者の作った恣意的なストーリーにゲームが乗る」のではなく、ゲーム中の時間軸の流れ、プレイヤーの行動、そしてストーリーが同じ地平に立って進行する、AC04の独特のゲーム構造が誕生する。

2016-09-03 23:09:53
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ただし、ゲームのコンテンツとしては唯一(というか唯二つ?)、この表現の例外となるイラストが存在する。 ご存知、パッケージと取扱説明書の表紙、2枚で一組となるあのイラストである。

2016-09-03 23:10:02
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

パッケージと取説のイラストは、背景はブラーの中に埋もれ、どこを飛んでいるのかは明示されない。またメビウス1の機体がF-22であるが、(初周の)ゲーム中でこれを使用可能となるファーバンティとは、空の色が合致しない。

2016-09-03 23:10:38
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

メタ的な話をしてしまえば「2周目」なのかもしれないし、空は青いけどファーバンティだと言い張るのかもしれないが、あのイラストにおける重要な点は「P-PC-NPCの3項構造」の「視点の交錯」を表現したものだと言った方が正確である。

2016-09-03 23:10:48
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

パッケージという「ゲームのコンテンツ本編」というより「ゲームの広告」の性質を持っている部分であるからこそ、あのイラストには「AC04というゲームが持っている性質」を具象化した心象光景である必要性があったように思う。

2016-09-03 23:11:01
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

翻って、そのものズバリ広告においてはどうだろうか。 広告においては、ゲームの流れや思想はさておき、どのようなコンテンツがそのゲームに含まれているか、1枚の絵で表現せねばならない。

2016-09-03 23:11:09
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

あくまで広告の部分にだけは「心象光景を使う」という屈服も選択肢に登るのであろうが、AC04は自ら定めた鉄則を破ることなく達成した。それが、おるむく氏がついに見つけ出したこちらの広告である。 pic.twitter.com/YAjJnhIiIf

2016-09-03 23:12:16
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おるむく @olmk17

電撃プレイステーション9/28 エースコンバット04、ガラス演出広告。 pic.twitter.com/UT57jSVd29

2016-09-03 21:35:35
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元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

この広告は見て取れるように、ゲーム内の様々な光景が一堂に会している。 一堂に会してはいるが、一つのフレームに収まってはいない。 ガラスの破片のようなフレームに、それぞれの要素は閉じ込められ、断絶している。

2016-09-03 23:12:48
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

この映像的な断絶は、ゲーム内においてそれぞれの場面(ひいてはゲーム中で提供される情報)が、時間と空間を断絶された出自を持つことが暗示されている。 つまりガラスの破片で映像を区切ることで、要素が集合していながら心象光景としての集合絵でなくする効果を発揮している。

2016-09-03 23:13:14
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ガラスの破片の表現は、キュビズムにおける「様々な角度から観察した対象を一つの絵にまとめる」という手法と共通していながら、「どの場面までが一つの観察で得られたものなのか」を明示しているという点で、わかりやすさを獲得している。

2016-09-03 23:13:23
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

コンテンツの要素が一堂に会したものでありながら、しかし抽象の側にはとどまらず、具象の側に残って表現するという技法をとったという点で、この広告はゲーム本編、そしてサイドストーリーの手法を見事に暗示したものだったのである。

2016-09-03 23:13:40
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

エースコンバットシリーズの中で04の決定的な特異点を挙げるならば、「美しい物語」でも「戦闘機の挙動」でもなく、これらの「複層的視点の独自性と完成度」であると断言する

2016-09-03 23:19:15