きるふぇぼんむらかみ

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hikari∞短めのお話 @love_suzume

51. 満面の笑顔でぴょこんて頭下げられて、顔がだらしなくにやけんのが自分でも分かる。 「じゃあじゃあ、村上さんの名刺、もらってもいいですか?」

2015-06-11 22:35:55
hikari∞短めのお話 @love_suzume

52. ...ますます分からんぞこれは...。 そっけないメールの後の水着の写真といい、こっちがデートやって浮かれてたとこにお好み焼き指定やし、かと思ったらこんなかわいいことすんの? 「ちょうだいしまーす」

2015-06-11 22:36:03
hikari∞短めのお話 @love_suzume

53. そう言って、俺の名刺しげしげ眺めて、満足そうにあげたばっかのカードケースん中に入れた。 「お前なぁ...語尾は伸ばすなよ」 「はーい」 嬉しそーに笑って、またお好み焼きを頬張る。 「あ、でもこれほんと、すっごいおいしー」

2015-06-11 22:36:15
hikari∞短めのお話 @love_suzume

54. いちばんおいしいんですよねーって笑ってる。 ............。 ほんまは、俺んちまで歩いて帰れる範囲でいちばんおいしい。 か、正解やけど。 こーなったら博打やで。 今日中にいけるとこまでいったろって下心で。

2015-06-11 22:36:24
hikari∞短めのお話 @love_suzume

55. ごめんなぁ。 でも、もーいろんなとこ限界やし。 親戚の愉快なおっさんは、今日で終わり。 俺も男やねん。 ちゃんとそれ、分かって?

2015-06-11 22:36:35
hikari∞短めのお話 @love_suzume

56. 「ごちそうさまでしたぁ。お腹いっぱいだぁ」 自然に駅の方に足が向く彼女を、半歩後ろからついてく。 さすがに30過ぎてるし、これまで何度となくこんなシチュエーションに出くわすことはあったわけで。 ただ、なんでやろ。 めっちゃ緊張してんの。

2015-06-12 23:01:15
hikari∞短めのお話 @love_suzume

57. 不確定要素が多すぎやからか...。 昔みたいに、ノリと勢いでいってまえみたいにはならんようになった。 単純に年食っただけかもしれんけど。 「明日、学校?」 「単位もう取っちゃったし、あと卒論だけなんで。おやすみです」 いいでしょーって言って、振り返って笑う。

2015-06-12 23:01:24
hikari∞短めのお話 @love_suzume

58. 「...ほんなら、もう一杯だけ飲むか」 「え?...あ、いいですよ」 ほんの一瞬だけ間があって、その意味を考えてしまうけど。 「どこ行きましょっか?」 俺んちの方に方向転換して、歩き出したらおとなしく着いてきた。 「珍しいですね。村上さんがそんなこと言うの」

2015-06-12 23:01:32
hikari∞短めのお話 @love_suzume

59. まあ、しょーじき今までだってこのままどーにかしてしまおうと思ったこと、何回もあってんけど。 でも、自分のときのこと思い出すと、シューカツ中に余計なことできんなって。 こーゆーとこがもう若くないんやろなぁ...。 「まあ...そーゆー日もあんねん」

2015-06-12 23:01:40
hikari∞短めのお話 @love_suzume

60. あんま酔ってないっぽいし、家に直行して警戒されてもアレやし、近所のカフェ的なバーで飲んでからやなって考えてたとき。 「あれ、これなんだろ」 隣を歩いてた彼女の左手が、すっと襟元にきてドキッとして...。 「なんか...毛?」

2015-06-12 23:02:06
hikari∞短めのお話 @love_suzume

61. 彼女がつまんだのはグレーの動物の毛...。 「あぁ、ねこやな」 って、絶対ちゃうけど。 うちの茶色やし。 多分お好み屋で隣に座ったカップルの、女の方の鞄についてたキーホルダーみたいなやつの毛やけど。 「え、ねこ飼ってるんですか?」

2015-06-12 23:02:16
hikari∞短めのお話 @love_suzume

62. 咄嗟の判断で、一か八かで言うたけど、なんか...好感触...? 「言うてなかったっけ、マンチカンって...」 「手が短いやつ!?」 ほら、食いついた。 「足が短いやつな」 「えぇー、いーなぁ...」 「...見にくる?」 「...いいんですか?」

2015-06-12 23:02:26
hikari∞短めのお話 @love_suzume

63. また、一瞬間があって、彼女が言う。 同時に不安になった。 きょうびの若い子はねこ一匹で男の家にカンタンに足を踏み入れるのか。 貞操観念どないなっとんねん。 や...俺がなめられてんのか...。

2015-06-12 23:02:35
hikari∞短めのお話 @love_suzume

64. 「とりあえず、コンビニ行くか」 「あー、私、パルム食べたい!いちご味!」 今までは、どっちか言うたら自立したしっかりした女がタイプやってんけど。 全力で甘えられんのってこんな気持ちえーもんなんやなぁ...。

2015-06-12 23:02:42
hikari∞短めのお話 @love_suzume

65. 「おじゃましまーす」 どーぞって言ってドア開けたら、ぴょこんとお辞儀した。 ほんま何考えてんの、この子............。

2015-06-13 22:27:25
hikari∞短めのお話 @love_suzume

66. そういやこないだテレビで見たな。 きょうびの若い子ぉらは、男女で同じ部屋に泊まってもなんもせーへんって普通らしい。 悪いけど、おっさんそんなん知らんぞ。 家まで来たってことはそーゆーことやで、おっさんの常識じゃ。

2015-06-13 22:27:39
hikari∞短めのお話 @love_suzume

67. 「あーん、どうしよう、超かわいいー」 ............。 ケージの中にいるチーを見て、俺の腕のとこをぎゅうって掴むから、早々に変な気持ちになってきた。 「触ってみる?」 そう聞くと、勢いよく頷く。

2015-06-13 22:27:53
hikari∞短めのお話 @love_suzume

68. あーあ、もー、お前のほーが超かわいいっちゅーねん...。 チーは知らん人にびびったんか、出した途端にものすごいスピードでソファの下に逃げてって、彼女が後を追う。 「チーちゃーん、こんばんはー、怖くないよぉ〜」 四つん這いでソファの下覗き込んでる。

2015-06-13 22:28:04
hikari∞短めのお話 @love_suzume

69. おいおい...。 もうあっちの想像しかできんぞ、そのかっこ...。 謎にフラミンゴがいっぱいついてる紺色のシャツは、まだ6月やっていうのにノースリーブで、白いふわっとしたショートパンツから伸びる脚は確実に生足で...。

2015-06-13 22:28:18
hikari∞短めのお話 @love_suzume

70. もう...誤解を承知で言いますけど! 若いって...最高やな! ありがとう、夏! 感謝、異常気象! むしゃぶりつきたいのをグッと抑えて冷蔵庫を開ける。 モノゴトには順序っちゅーもんがあるからな。 「ビールでええか?」 「あ、すぐ帰りますんでお構いなくー」

2015-06-13 22:28:30
hikari∞短めのお話 @love_suzume

71. それは聞かんかったことにして。 「見て見てー。チーちゃんマッサージ上手ー」 ............。 缶ビール落っことしそうになった。 おいこら、何しとんねん。 ねこのくせに。 メスのくせに。

2015-06-13 22:29:22
hikari∞短めのお話 @love_suzume

72. 彼女に抱っこされたチーは、短い前足を柔らかそーなおっぱいの上に置いて足踏みしてて、気持ちドヤ顔で俺を見てる。 まだ俺も触ってないのに。 「うふふ、くすぐったーい」 このエロねこ! 何しとんねん、ほんま...。

2015-06-13 22:29:30
hikari∞短めのお話 @love_suzume

73. これ以上この戯れを見てたら、すぐあかんことになりそうで...。 つまみ持ってくるフリしてまた冷蔵庫開けた。 頭冷やそう。 いや、ヤりたいのはヤりたいけど、てか、さっきからずっとそれしか頭んないけど...。 俺はちゃんとしたいねん...。 もうええ年やし。

2015-06-13 22:29:35
hikari∞短めのお話 @love_suzume

74. 「あーすずし〜」 すぐ後ろで彼女の声がして飛び上がる。 「な、なに!?」 「えー?何入ってんのかなぁって」 俺の身体越しに覗き込む。 「おっさんの冷蔵庫見たって何もおもんないで」

2015-06-13 22:29:42
hikari∞短めのお話 @love_suzume

75. 「村上さんは、おっさんじゃないですよ」 変に真面目なトーンで言われて...。 え............。 「............じゃあ...なに...?」 冷蔵庫の冷気で顔の左側だけ冷たくて、そのまま、黙り込んだ彼女をじっと見つめてた。

2015-06-13 22:29:47