PODアフター　～オッサンがんばる回～

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 診療所でのドタバタから少しして、アヤメの元へ、ハーレーのオルトロスが訪ねてきた。首からはいつかと同じお使いカバンを提げている。オルトロスはアヤメの前にお座りすると、カバンを差し出すように首を伸ばして、パタパタと尻尾を振った。 #オッサンがんばる回

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「あら、ハーレーさんのところのオルトロスちゃん。こんにちわ」 抱きかかえていたジニアをおろし、オルトロスの頭を撫でる。 「あら、今回もおつかい？ 偉いわね」そういって、首に備えられたかばんに手をやる。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod カバンの中には一通の手紙が入っていた。 『アヤメ殿 今夜は七夕とかいうイベントらしいな。離れ離れの恋人が年に一度だけ会える日……だったか。 まあそんなことはいいんだ。 イベントにお出掛けする予定がなければ、今夜、おまえさんをディナーに招待させてくれ』→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 便箋には、店の名前と場所、時間が書かれている。 『OKならその旨を、今夜が無理ならいつならいいか、返事を書いてオルトロスに持たせてくれ。 それじゃ、色好い返事を期待している。 ハーレー・ストーン』

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「あら、おしゃれなディナーのお誘いだなんて。……わたし、ハーレーさんに誘って頂けるほどのことなんてして差し上げたかしら……？」 うーん、と首を傾げて。 「……それとも、恋人だなんてことを意識してたりするのかしら、ハーレーさんたら？」(続)

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@orikadoyuki 「ま、ないわね」 即座に結論づける。 「わたしみたいな女にそれはないでしょ、多分。まあそれはそれとして、ご飯は大丈夫、楽しみにしてます、と。これをまたオルトロスちゃんに預ければいいのかしら？」 手紙を荷入れに入れる。 「よろしくねオルトロスちゃん」

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod がう、と吠えて手紙を預かったオルトロスは、尻尾をふりふり歩き去った。 ちなみに、手紙に書かれていたお店はお洒落なレストランでも小洒落たバーでもなく、いわゆる普通の酒場である。 同日夕刻。件の酒場はドアに『本日貸切』の札を下げ、招待客の到着を待っていた。

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@orikadoyuki 会場が場末の酒場と分かっても、アイリスのやることは変わらなかった。 ジニアを頼れるひとに預け、わざわざスリットの入った長いスカートのドレスに身を包んで、その場に赴いた。 「ご招待されに来たけれど、ここで良かったかしら？」 トントンとドアをノックする。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 店の中から、ドタドタと騒がしい足音。扉はすぐに内側へと開かれ、今日のホストである男が、お客人を出迎えた。 「すまん。外で出迎えようと思ってたんだが、準備に手間取っちまってな」 花柄エプロンを身に付けたオッサンガンマンが、ミトンをはめた手で頭をかいた。

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@orikadoyuki その出で立ちに両目をぱちくりと見開く。 呼び出し先が居酒屋で驚いた次は、まさかその以上に驚かされるとは。こっちだってびっくりさせようとこの姿で来たのに。 「え、ええと。今晩はお誘いありがとう。……ここ、ハーレーさんのお店なの？」 恐る恐る聞いてみる。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「くかか！違う違う。ここは馴染みの店でな。今日一日、貸してもらってんだ」からから笑いながら、アヤメを店の中へ招き入れる。テーブルはひとつを除いて脇へ寄せられ、そのひとつに、食事の用意がされている。「とりあえず座ってくれ……と、言いたいとこなんだが」→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 椅子を引きながら、アヤメの立ち姿をまじまじと見つめた。「座っちまうと、せっかくの素敵なスリッ……ドレスが隠れちまって、もったいないな。―――いや、まあそれは冗談だけどな……こんな素敵なお嬢さんをお迎えできて、光栄だ」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「そう。どんなご馳走が出てくるのか楽しみね。その格好すごいさまになってるし」 冗談めかして告げる。 「割と頑張ったでしょ？ 年甲斐もなく」 ふふふと悪戯をした子供のように笑む。 「ええと、座っちゃっていいのかしら？ お手伝いとか」

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「ま、ツマミみたいなやつしか作れないんだけどな」 テーブルの上には、カプレーゼやきのこのマリネ、ソースを添えたスティック野菜など、軽くつまめるものが並んでいる。前菜というよりは、お酒のお供といった風情である。 「手伝いはいいから、座って楽にしてくれ」→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「メインディッシュの出来上がりにはも少し時間がかかるんで、とりあえずは乾杯といこう。飲み物の希望はあるか？ビールかワインか、軽めのカクテルか。場所柄、大抵のものは揃ってる」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「あら、そう？ じゃあお言葉に甘えて」 とさりと席に着く。 「んー、何がいいかしら。それじゃ、カクテルをお願いしようかしら。ハーレーさんのお任せで。甘めのがいいわ」 よろしくねと一言。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「甘めで軽め、な」バーカウンターの裏に回ったハーレーは、しばし酒のラインナップを物色したあと、グラスをふたつ手にして戻ってきた。一方をアヤメの前にコトリと置く。 「ミモザなら好みに合うかね。シャンパンとオレンジジュースのカクテルだから、甘くて軽い」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「ロングアイランドでも出されたらどうしようかと思ったわ。意外と紳士で安心」 ふふふと笑って、片方のグラスを受け取る。 「それじゃあまずは、乾杯かしら？」 そう言って、すっとグラスを差し出す。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「そんなセコイ真似すると思われてたのはショックだな」わざとらしく肩をすくめて見せる。 「それじゃあ……そうだな、時空災害の終息と、互いに生き残ってることと……あとはおまえさんの素敵なドレス姿に、乾杯だ」 かちん、とグラスを触れ合わせる。

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「ホントに〜？ まあ、信用しましょうか」 冗談めかして笑う。 「ええ、そうね。あと、これから出てくる貴方の料理にも、乾杯」 グラスを重ねて、くいと一口呷る。 「ふふ、お酒なんて飲むの久しぶり」

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「なんだ、普段は飲まないのか。そこそこイケる口かと思ってたんだがな。もしかして悪い酔い方でもするのか？」 前菜をつまみながら、そんなところを突っ込んで聞いてみた。一度、飲みながら互いの話をしてみたかった、というのも、このディナーの目的のひとつだ。

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「まさか。普通に飲んでたしそこまで悪酔いはしないと思うわ」 野菜の漬物に手を出しながら。 「ただ、ひとりだとやっぱり味気ないし。それに今は娘もいるし尚更ね」 ふふと微笑む。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「そういえば子供を拾ったんだってな。男の前にコブつくっちまうなんて、良い女は売れ残らないってえ余裕の証か？」茶化すように言って、くつくつと笑う。 「まあしかし、おれとしちゃラッキーかもな。久しぶりの酒で、隙を見せてもらえるかもしれん」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「ええ。ひとり佇む子供を見つけて放っておけるほど、物事割り切れてないもの」 あの子が混沌災害絡みだと暗に告げながら。 「好みの男性は、作ろうと思って作るものじゃないでしょ？ 好きだから隣にいたいのであって、隣にいたいから好きになるわけじゃないもの」(続)

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki ふふふと笑って。 「どゆこと？ お酒飲んだら確かにゆるゆるになるかもしれないけれど」 意図がよく分からない、という表情を浮かべている。