PODアフター　～オッサンがんばる回～

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「いやなに、いつもと違う顔が見られるかも、と期待してるだけだ。別に下心で言ってるわけじゃあない」なんて言っても、説得力はなかろうが。 「しかし、そうか。出会いは慌てず待つ派なのか。ま、おまえさんならコブつきでも言い寄ってくる男は山ほど出てくるわな」→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod なにしろ女神様だからな、とからから笑う。

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「……どうにも気に障るような言い方。女神だなんてこともないし」 不機嫌そうに。 「別にわたしは誰かに好きになってもらうために生きてるわけじゃないし、好きな人を探そうとしてるわけでもないもの」 クイ、と一口手にしたグラスを煽りながら、言う。(続)

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「仮に好きになったひとがわたしを見てくれれば嬉しいし、見てもらえるようにするわ。でもそのためにわたしは自分の生き方を変える気はないし、そもそもそれを否定する、この場合は娘がいることでわたしを敬遠する。そんな心持ちの相手なら、そもそも好きにならないもの」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「それだけの話。別に待つとか押すとか、そういう話でもないのよ。言うほど声をかけられもしないし、言いよってくるとも思ってないわ。わたし、面倒な女だもの。腕も立つし、それこそ言い方悪いけどコブつきなんだから」 それでもわたしは自分を曲げないのよ、と語る。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 気圧されたように目を丸くしていたハーレーは、「あー……」と呻きながら視線を天井に向け、それから「うーん……」と唸り……。 「すまん。下世話な軽口を叩きすぎた。……いや、叩きすぎたというか、普段からこんな話しかしてないってだけだな。おれっていう人間が」→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod これまで、ほとんど戦場でしか会うことがなかった相手なのだ。どこまでを軽口として笑って楽しめるのか、どこからは本気で不快に感じるのか。そもそも、アヤメという人間がどのような性格をしているのかすら、さして知ることはできていないのだ。今の自分には。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「……口惜しいな。おまえさんのそういう考え方とか、信念とか、好き嫌いとか。そういうところをもっと知って、仲良くなっていきたかったんだがなあ……」 残念ながら、そんな時間は残されていない。明日にも元の時代へ帰還してしまうかもしれない身の上なのだ。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「とにかくすまんかった。それから、嫌な気持ちになったことを隠さずに、おまえさんの考えを聞かせてくれて、ありがとな。この時代から消えちまう前に、すこしでもおまえさんのことを知りたいんだ。この場を適当にやり過ごされるより、ずっといい」

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「こっちこそ言いたい放題言っちゃってごめんなさい。こればっかりは考え方だから。わたしの正義というかね。どうこうできない筋みたいなものだから」 お酒がまずくなっちゃうわね、と申し訳なさそうに。 「……そっか、ハーレーさんも未来から来たんだったわね」(続)

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「いつ帰っちゃうかわからない、か。確かに。せっかく今ここにいるんだもの。少しでも楽しまないと損よね」 すくと立ち上がり。 「わたしなんかで良かったら、お酌くらいはしてあげるわ。暴力女で申し訳ないけれど」 ふふと笑って、奥から瓶を抱えて戻ってくる。(続)

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「それにしても、そんなに時間が少ないのにわたしなんかとサシで飲む場なんて作っちゃってよかったの？ もっと大勢絡みたい人もいたでしょう？ それとも何、わたしのこと知りたい、だなんて。惚れでもした？」 軽口には軽口で。そんなノリでくすくすと話す。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「おおっ、お酌は嬉しいな」 視線を下に向けないよう自制心を総動員させながら、グラスを差し出す。 「惚れてる、か。くかかっ。今さらなに言ってンだ。ベタ惚れだよ、おれは、おまえさんに」 注がれた酒に口をつけながら、グラス越しにアヤメを見上げる。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「どこが好きなのか、なんて聞かないでくれよ。えらく強いとこも、さっきみたいに譲れない主義があるとこも、その素敵なスリットももちろん好きだがね。それでもなんで惚れたかって言われると、そんなもんわからん。ただ『この女が欲しくてたまらねえ』って思うだけだ」→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod グラスを置いて、アヤメを見つめて―――ニイッと破顔してみせる。 「なんてな。女好きの異邦人の戯言だ、って聞き流してくれていいぜ。今夜は別に、愛の告白をするために招待したわけじゃねえんだ」 返事を待たずに席を立つ。 メインディッシュが焼き上がる頃だ。

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「……歯の浮きそうとまでは言わないけど、随分とお世辞がうまいわね」 笑う。一部に男性らしい欲求も浮き出ていたような気がするけれど。 「じゃ、そんな愛情こもったご飯？ お待たせさせてもらおうかしら」 手伝おうかと思うも、招かれているのだからと踏み留まる。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「ちょっと待っててくれ」 そう言い置いて、厨房へ。焼き窯の中を覗いて、出来映えを確かめる。 「よし、良い具合だな」 窯から大皿へ移して、スパイスを振りかけて、これで完成。皿を抱えてテーブルへ戻る―――その前に、ふと、足を止めた。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「…未練がましいな、おれも」 10年だ。今このときから、自分のいるべきときの間には、10年分もの隔たりがあるのだ。 求めてどうなる？真摯に気持ちを伝えて、もし仮に応えてもらえとたして、それでどうなる？これからの彼女の10年に、自分は登場できないのに。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 今夜一晩だけでも良い仲になれたら。自分であればすぐに胸に抱きそうなその手の願望が、不思議と湧いてこない。たぶん、そういうものではないのだ。 同じ時間を過ごしてみたい。 そんな、思春期の乙女のような純粋さで。自分は、恋に落ちてしまったのだろう。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「待たせたな！これが今夜のメインディッシュ。おれの国、《ナナリー領》の名物料理。ピザだ！」 ドンとテーブルに大皿を置く。円形のパン生地に、スライスしたジャガイモとオニオン。トマトやピーマンなどなど野菜を載せて、とろとろチーズがすべての具材を包み込む。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「ふだん食べてるのはもっと肉々しいんだけどな。おまえさんはこってり系が苦手だって聞いてたから、ヘルシーにまとめてみたんだ。……ま、とにかく食ってみてくれ」 食べやすいサイズにカットして、取り皿に載せてアヤメに差し出した。

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「……これは、すごいわね」 パイとも違う、少し独特な雰囲気。 カットされながらとろりと糸を引くチーズがまた食欲をそそる。 「あら、じゃあこの場用の特製なの？ なんだか申し訳ないわ。じゃ、頂きましょうか。温かいうちに」 一切れ手にして、かぶりつく。(続)

やかんの企画垢 @y_anem_gc

@orikadoyuki 「……おいしい」 思わずほうと息が漏れる。 「葡萄酒あたりと合いそうね、これ。あまり詳しくないから、よさげなものを選んでもらえないかしら。なんだか全部任せっきりで申し訳ないのだけれど」 せっかくなのだし、楽しく味わって食べたいところだ。

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「気に入ってもらえたようでなによりだ。年甲斐もなく頑張った甲斐があるってもんだ」 腰に手をあてて得意気に笑う。 「ピザに合うのはやっぱ冷たいビールだろうが……そうだな、おまえさんならコッチのほうがいいか」 ビールをジンジャーエールで割って差し出した。→

シキ @orikadoyuki

@yakan_r_pod 「ジャンディガフのほうが、好みなんじゃねえかな」 自分も椅子に座って、美味しそうに食べてくれるアヤメを眺めて。 「ウマイって言ってもらえて安心したわ。なにしろ、おまえさんにお礼をするためのディナーのメインディッシュだ。ここで外しちゃ台無しになっちまう」