【元旦早々】心理学は自然科学か?【学者乙】

渡邊芳之 @ynabe39 北海道帯広市 心理学者,専門は性格心理学,心理学論。近著は「性格とはなんだったのか〜心理学と日常概念」(新曜社, 2010, ISBN4788511886) http://twilog.org/ynabe39
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流人光宏 見習い竹剣士 @lightningmitchy

おっしゃる通りです。そして、科学=学問じゃない所が昨今の科学崇拝主義者には納得がいかないのかなぁ、と思う次第です RT @ynabe39: イギリス経験論はすべての「科学」の基礎です。 RT つまり、ベーコン以降のベーコン側の考え方に依るわけですね。

2011-01-01 07:20:33
渡邊芳之 @ynabe39

まさにそうですね。そこのところをもう少し論じます。 RT @lightningmitchy: おっしゃる通りです。そして、科学=学問じゃない所が昨今の科学崇拝主義者には納得がいかないのかなぁ、と思う次第です

2011-01-01 07:23:33
渡邊芳之 @ynabe39

昨日の宮川さんのように「心理学は自然科学」という方の研究分野が広い意味で感覚知覚や認知であることは偶然ではない。そういう機能では個人差はもともと小さいし,そうした分野で個人や個人の文脈をユニットとして分析する必要性も小さい。そしてそれらの機能は基本的に反復可能である。

2011-01-01 07:25:20
渡邊芳之 @ynabe39

いっぽう心理学は20世紀にかけて人文学と深い関係を持ちながら急激に膨張した。そこでは初期の心理学のような「人類に共通の機能」だけでなく,個人や個人の文脈,一回性の事象も研究の対象になった。

2011-01-01 07:28:42
渡邊芳之 @ynabe39

発達心理学,教育心理学において個人は重要な分析ユニットだし,臨床心理学は個人の適応を対象とするし,(私の専門である)性格心理学にいたっては個人差自体が研究対象だ。実験系の心理学とこれらの「非実験系心理学」とでは「科学との関係」は当然大きく違うものになる。

2011-01-01 07:32:25
渡邊芳之 @ynabe39

こうした分野の中でも,個人ではなく人間一般の傾向や法則性にテーマを絞れるもの,個人差を扱ってもそれを法則性のひとつの変数として扱えるものは推測統計学を利用して「科学化」していった。しかしそうでないテーマがどうしても残る。

2011-01-01 07:35:50
渡邊芳之 @ynabe39

典型的なのが臨床心理学やカウンセリングであるし,発達・教育心理学でも個体発達やその個人差を重視する人たち,そして性格心理学。しかし20世紀半ばから末の心理学では「科学的心理学」の大発展によってこうした人々は心理学のメインストリームからは除外される。

2011-01-01 07:38:28
渡邊芳之 @ynabe39

その人たちが再び声を上げ始めたのは20世紀も終わりに近づいてからで,同じことは社会学におけるグラウンデッド・セオリー・アプローチの興隆や文化人類学におけるギアーツの仕事など他の人文諸学でも起きた。これらの学問志向はおしなべて現象学的で質的データを重視する。

2011-01-01 07:43:26
渡邊芳之 @ynabe39

心理学における質的方法の再評価はそうした隣接分野の変化の影響を大きく受けた。そして先にあげたような個人と個人の文脈,一回性の事象を重視する心理学では質的方法や現象学的・解釈学的方法を用いる人が徐々に大きな勢力になっている。

2011-01-01 07:46:59
渡邊芳之 @ynabe39

いっぽう実験系心理学はどんどん自然科学化しており,質的方法や現象学の影響力は小さい。わずかにギブソニアンの生態心理学の人々がそこにいるが,彼らは彼ら独特の論理で自分たちを「自然科学」と考えているところが異なる(他の自然科学的心理学からどう見えているかは別)。

2011-01-01 07:49:53
渡邊芳之 @ynabe39

こうした「科学でない心理学」,人文学的心理学に対する「科学的心理学」の反発は根強いが,最近は「それぞれ発展すればいいんじゃないの」という雰囲気になっている。数量データを扱う研究を一切しないで学振DCに選ばれたりアカポスに就く若い人も増えている。

2011-01-01 07:53:46
瀧本哲史bot @ttakimoto

実は、法律学も科学に憧れて、その非科学性が批判され、科学化が試みられるも、上手く行ったところと、そうでないところがあって、人文学に属する解釈学としての要素を積極的に評価する流れも出てきて、現在に至るという話は前もしたかも

2011-01-01 07:42:03
瀧本哲史bot @ttakimoto

一つには、法律学が裁判という個別の事案解決のための準則作り、そして個別事案判断の積み重ねであり、必ずしも、一般性を予定してない、判例の整合的説明を目的としているから。これは、カウンセリングとなんとなく、似ている

2011-01-01 07:46:09
瀧本哲史bot @ttakimoto

経営学でも、似た動きがある。定量分析の勃興とそれに対する反発。質的分析の重視、個別事案の特殊性への注目など。これはもちろん、社会学、人類学、心理学の動きと平行関係にある

2011-01-01 07:49:45
瀧本哲史bot @ttakimoto

例えばマーケティングひとつとっても、インターネットの登場で、データベースマーケティングはよりやりやすくなった。その一方で、リクルートとかベネッセとか豊富なデータベースを保有している会社も質的調査をかなり重視していることは、広く知られている

2011-01-01 07:54:10
渡邊芳之 @ynabe39

自然科学の方法をとり「自然科学になること」で発展した人文「科学」もあれば,そうしないで自然科学の方法では取り扱いにくいテーマを扱い続ける人文学的心理学もある。それぞれがそれぞれのコミュニティを持って発展している。それが現在の心理学の状況だ。

2011-01-01 07:56:34
渡邊芳之 @ynabe39

そうそうひとつ書き忘れたことがある。自然科学の人たちが自分たちの方法を「あらゆる学問のあるべき方法」と考えやすいのは,それが自然科学全体という相当に大きいコミュニティ全体で共有しているからだと思う。物理学,化学,生物学といった違いがあっても基本的な方法はほぼ共通だ。

2011-01-01 08:03:58
渡邊芳之 @ynabe39

これは自然科学のさまざまな分野がもともとたとえば「natural history」のような「ひとつの学問」だったこと,それが17世紀から19世紀にかけてほぼ同時に爆発的に発展して細分化したことと関係する。自然科学は乱暴にいえば今でも「ひとつの学問」なのだ。

2011-01-01 08:06:43
渡邊芳之 @ynabe39

いっぽう自然科学以外の学問はそれぞれにまったく別々の長い歴史を持っている。哲学,倫理学,法学,経済学,社会学,心理学などにはそれぞれ別のルーツがあり,自然科学の諸学の間にあるような共通性は薄い。学問のあり方としてはむしろ自然科学諸分野のありかたの方が特殊なのだ。

2011-01-01 08:11:40
渡邊芳之 @ynabe39

な〜んて話を3日分くらいまとめて引用文献を20もつけて体裁よく印刷すれば紀要論文は簡単にでき上がって,2011年は論文1本だ。それで「論文を書いている」と評価されるなら楽な話だ。

2011-01-01 08:14:25
青虫 @aohmusi

かつて、エレア学派によるピタゴラス学派の批判を解決する過程で、ユークリッドの原論にある公理主義が生まれたという主張を読んだことがあります。その意味ではピタゴラス学派が最初の科学コミュニティかもしれませんRT @ynabe39

2011-01-01 08:15:05
渡邊芳之 @ynabe39

RT @aohmusi: かつて、エレア学派によるピタゴラス学派の批判を解決する過程で、ユークリッドの原論にある公理主義が生まれたという主張を読んだことがあります。その意味ではピタゴラス学派が最初の科学コミュニティかもしれませんRT @ynabe39

2011-01-01 08:15:36
渡邊芳之 @ynabe39

科学哲学者の大多数は人文学でなく自然科学,とくに物理学の教育を受けた人でした。 RT @fab4wings: 今はだいぶ廃れたのかもしれませんが、科学哲学は結構間を埋めそうな哲学側からのアプローチに思えました。

2011-01-01 08:16:50
ぎゃおおお @gyaooo

帰納と演繹、自然科学と人文学、EBMとNBM……似たようで色々な軸があるもんじゃの。

2011-01-01 08:20:39
渡邊芳之 @ynabe39

EBMとNBMはまさに今日俺が述べたことと連動する話。 RT @gyaooo: 帰納と演繹、自然科学と人文学、EBMとNBM……似たようで色々な軸があるもんじゃの。

2011-01-01 08:22:14
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