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紙飛行機(カオルレイ)end

紙飛行機、最終話と次作のほんのりとした紹介です
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

チサ先生は何も答えない。うつむき、拳をギュッと握っている。 『……私……』 チサ先生の手を握る。先生はパッと顔をあげた。 『……チサ先生を、信じてたんですけどね。ユウ先生と、治してもらえる事を、信じて、たんですけどね……』 ……チサ先生は、何も言わなかった。

2015-06-18 03:05:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『……嘘をついたのは何でですか?ソウタさんが嘘をついたのは……チサ先生が嘘の情報を教えたんですか?』 「ち、違うの!あれは、ソウタが勝手に!」 『そうですか』 パッと手を離す。サングラス越しからは、涙が溜まっている目が私を見つめていた。 『……信じた、私がバカでした』

2015-06-18 03:08:22
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

チサ先生は何も言わない。ただ、涙を流していた。 「カオルちゃん……」 『さようなら、チサ先生。今まで治療してきてくれてありがとうございました』 礼をして、病室へと歩いていく。1回も振り返らずにどんどん、どんどんと歩いていった。

2015-06-18 03:09:55
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

病室に着く。鍵をかけ、扉に背をつけ座り込んだ。 『なんで……』 今更になって、涙が溢れ出てくる。 『私、死んじゃうの……?』 拭おうともせず、ただ涙を流す。 『レイさんと……手紙を交換出来なくなっちゃうの……?』 やだよ。そんなの、やだよ。せっかく生きる希望を見つけたのに……

2015-06-18 03:13:00
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『なんで、私ばっかり……』 なんで私ばっかりこんな目にあっちゃうのかな? 『なんで……』 なんで、普通に恋をして、結婚して、子供が出来て……って事が出来なくなっちゃうのかな? 『……もう、辛いよ……』 私って――生きてる意味、あるのかな?

2015-06-18 03:14:27

ここで一旦、私の記憶は途絶えた。

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「カオルちゃん……いい?」 声が聞こえ、目覚める。どうやら泣き疲れて寝てしまっていたようだ。扉に寄りかかったままの姿勢で、背中とお尻が痛い。 「カオルちゃん……?」 ああ、この声は……私を騙してきた人の声だ。 今は開けたくない。だから、開けずに扉の前に座り込む。

2015-06-23 20:25:52
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……聞いているか分からないけど……今日は、今日のことは本当にごめんなさい。 だけど!私は、私は騙すつもりじゃ無かったの……でも、カオルちゃんが退院楽しみにしていたから、言い出せなくて……」 ……今更何を言うのだろうか。失った信頼はそう簡単に取り戻せるわけでもないのに。

2015-06-23 20:28:31
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「でもね!これだけは信じて!……死ぬ可能性は高いけど、絶対に死ぬわけじゃ無いんだって!」 さっきと言っていることが違う。もう、私はこの人を信じることが出来ない。出来やしない。 「だから……お願い、手術を受けて」 病室の中にも外にも静寂が訪れる。数分後、足音が遠ざかる音が聞こえた。

2015-06-23 20:30:58
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そして、ゆっくりと立ち上がり……紙とペンを手に取る。 『今までありがとうございました……』 『貴方と話せて嬉しかったです……』 『実は、私はもうすぐ……』 『遠くに行くの。だからバイバイ』 書いては紙をぐしゃぐしゃにし、書いてはぐしゃぐしゃにしを繰り返す。目には涙が溜まっていた。

2015-06-23 20:33:17
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『ほんと……何やってんだろ、私』 真実を言いたい。だけど、言えない。レイさんに会えなくなることが嫌だ。 そう思うと、どうしても書けなくなってしまう。 ――お医者様になれました。 結局は、また嘘を重ねる。 『私も結局……嘘つきなんだよ』 こんな自分が、大嫌い。

2015-06-23 20:37:53
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

その次の日。私は久しぶりにレイさんのところへ行った。 レイさんはいた。そして、明るい笑顔を向けてくれる。 こ、ん、に、ち、は 私も笑顔でそう返す。 い、く、よ そして、紙飛行機をすうっ……と投げた。綺麗にレイさんの元へと届く。

2015-06-27 01:11:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……と、私の視界が一瞬揺らぐ。 『(えっ……)』 すぐに足を踏み出し、倒れることは防いだ。だけど、眩暈がひどい。 『(……何、これ……)』 でも、レイさんの前でこんな姿は見せられない。顔を上げ、レイさんに笑顔を見せる。 じゃ、あ、ね そう言い、足早にその場を去った。

2015-06-27 01:13:41
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

病室に着き、ベッドに倒れ込む。 『なんで……?何でレイさんと話すことすら出来なくなってくるの……?』 嫌だよ。 話していたいよ。 もっともっと、レイさんと生きていたいよ。 『……何で、私はこんな目にあってばかりなの……?』

2015-06-27 01:15:16
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

なんでやりたい事が出来ないのか。 なんで皆と一緒に遊べないのか。 なんで――私はこんな早くに死んでしまうのか。 まだやりたい事はいっぱいある。退院して、お買い物して、普通の女の子の生活をしてみたい。 『辛いよ……』 とても、辛いよ。悲しいよ

2015-06-27 01:17:18
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

それから数日が経った。 たった数日なのに、私の体は不調だらけになってしまった。耳も聞こえづらくなり、歩きづらくもなり…… チサ先生とは、会話もしなくなった。毎日検診で私の病室へ来るけど、チサ先生も挨拶しかしない。ユウ先生はそれを見て悲しい顔をするだけだった。

2015-06-27 01:20:24
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『(久しぶりにユウキさんに会ってこようかな)』 近くにある松葉杖を手に取り、ユウキさんの病室へと向かう。 『……ん?』 ユウキさんの病室の周りに人だかりが出来ている。看護師さん達が沢山いて、患者さんも少しいる。 『……あ、カンナさん』

2015-06-27 01:24:44
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

話しかけようと思って手を上げる……けど、その手は途中で止まった。 カンナさんは――泣いていた。 『……へ……?』 何故泣いているのだろうか。だけど、その泣き顔を見て、私は話しかけることが出来なくなった。 『(忙しいのかな?また後で来よう……)』 そうして自分の病室へ戻って行った。

2015-06-27 01:26:58
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

夜になる。チサ先生がやってきて、ご飯を出してくれた。 『……チサ先生』 「!な、なに、カオルちゃん」 久しぶりの会話。チサ先生の顔色が心無しか明るくなった気がする。 『ユウキさん、どうしたんですか?』 その瞬間……チサ先生の表情が固まる。嫌な予感がする。

2015-06-27 01:28:40
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ユウキさん。実はね……退院しちゃったの」 少しの間があり、チサ先生はそう答えた。 『……本当ですか?』 「ええ……」 なら、あのカンナさんの涙は何だったのだろうか。でも、どれだけ考えてもその答えは出ない。 『……ありがとうございました』 「ううん!何でも聞いてね!」

2015-07-16 13:40:03
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そして、チサ先生は出ていく。その姿を見送り、私は溜息をついた。 『ユウキさんが退院、かあ』 嬉しいような、寂しいような。だけど、少しだけ羨ましかった。 『(また会えるかな?)』 そんな期待を胸に抱き…… この時、私は重大な間違いをしてしまった。後になって後悔することになる……

2015-07-16 13:41:15
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

ある日。私は、何となく病院内を探索することにした。 松葉杖をつきながら歩く。ナースステーション、他の患者さんの病室、手術室。何年もここにいるため、どれも見たことあるものばかりだ。 だけど、1つだけ違うものがあった。 『……あれ?あそこの部屋、扉開いてたっけ』

2015-07-18 11:12:31
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

開けようとしても鍵がかかってて入れなかった扉が、今日は少しだけ開いている。 『……入ってみようかな』 そして、その大きな黒い扉の前に立ち……まずは少しだけ開ける。部屋の中は真っ暗だった。 このままでは見えないと、扉を大きく開けた。中は、何かの資料で埋め尽くされていた。

2015-07-18 11:15:11
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

それと、もう1つ。大きな何かが布を被っていた。 『何だろう?』 そう思い、その布に手をかける…… 「何してるの!?」 寸前。背後から誰かの声がした。振り返ると、そこにはチサ先生が怖い顔をして立っている。 『チサ先生……』 「カオルちゃん!ここには入っちゃダメ!」

2015-07-18 11:17:08
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

その大声に驚き、つい布をギュッと握ってしまった。 バサッと音をたて布がとれる。 「あっ!」 ……布の下には、ガラス管のようなものに入った人。何も着ていない……人「だったもの」が、そこにはあった。 『あ、え、え……』 何より私が驚いたのは……その人たちが着ている服。

2015-07-18 11:19:36