鋼鉄の咆哮×艦隊これくしょんSS「超兵器の金剛6」

今回から順次更新式にしていきます。 ご容赦を。
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さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

『こちら長門! 利根と筑摩が大破! 比叡と鳥海も中破した!』 『大淀です! 敵の第一波は引き返しました! しかし大破、中破艦多数!』 次々に入ってくる無線を、提督は地下の防空壕内に作られた司令部で聞いていた。 「次が来たら守りきれないか……」(51 #超兵器の金剛6

2015-09-09 02:03:52
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

『提督、聞こえますか? 赤城です』 「赤城か。どうした」 『現在私の彩雲が、帰還する敵機を追跡しています。これで敵の位置を割り出して見せます』 「こちらから打って出る、というのか」 『現状、それが最適かと』 「……そう、だな。これ以上、やらせるものか」(52 #超兵器の金剛6

2015-09-09 02:06:47
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

提督の目には、赤く燃えたぎる怒りがはっきりと映っていた。 「金剛! 赤城を含む艦隊を即座に編成し、敵超兵器の撃滅に向かえ! 鎮守府の守りはこちらに任せろ!」 『オーケー、レッツパーリィね』 無線越しからでも、金剛が笑みを浮かべているのが感じられた。(53 #超兵器の金剛6

2015-09-09 02:09:18
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

即座に艦隊は組まれた。 旗艦は戦艦金剛。 空母は赤城と瑞鶴の二隻で、それぞれ烈風や紫電改などの強力な戦闘機を満載している。 そこに改装が間に合った重巡の那智と、同じく重巡の高雄。 最後にこちらも改装済みの駆逐艦叢雲が加わり、迎撃艦隊がここに編成された。(54 #超兵器の金剛6

2015-09-09 02:12:51
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

第零遊撃艦隊の面々は先ほどの防衛線で多くが損傷しており、また軽巡の五十鈴は防空能力の高さから鎮守府の守りに徹せよとの指示で、艦隊には組み込まれなかった。 鎮守府の皆に見送られ、艦隊は赤城の誘導で、アルウスが待ち受ける南西諸島海域へと向かった。(55 (続く #超兵器の金剛6

2015-09-09 02:17:52
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

(続き) 赤城所属の彩雲は、つかず離れずの一定の距離を保ってアルウスの編隊を追跡していた。 視覚を同調させている赤城の目は鋭く、今にも獲物に襲い掛かりたい鷹がじっと木の枝に止まっているような、そんな姿を連想させる。(56 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:04:28
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

もう一人の空母、瑞鶴も怒りに震えていた。 彼女の姉である翔鶴は中破され、彼女と親しかった艦娘も多くが中破または大破していたのである。 弓を握る拳はきつく握り締められ、ギリギリと弓が軋んでいた。 その表情は鬼気迫るものがあり、後ろの叢雲は何度も生唾を飲んだ。(57 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:07:55
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「おかしいわ」 ぼそりと呟かれた赤城の言葉が聞こえたのは、隣にいた那智だけだった。 「どうしたんだ、赤城」 「おかしいのよ。相手の編隊の動きが素直すぎる。まるで私たちを誘っているような……」 航空機を運用する赤城だからこそわかったことだ。(58 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:10:19
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「赤城がそう言うんなら、そうなんだろう。金剛!」 那智に呼ばれ、金剛が振り返る。 「赤城が言うには、これは罠かもしれん。どうする?」 「このままでいいネ」 即答だった。 「アルウスに小細工は通用しない。偵察機を飛ばして今も私たちを見ているに決まってるネ」(59 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:12:24
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「ちょ、ちょっと! あんな数の編隊を何度も飛ばしてくるヤツなんでしょ!? 何もしないの!?」 叢雲の言うことももっともだ、と那智は頷く。 「どうでもいいわよ。真正面からぶん殴ってやればいいんでしょ」 ギラギラした目で瑞鶴は言う。(60 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:15:18
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「防空は叢雲サンと空母の二人に任せるネ。私と那智サン、高雄サンは回避に徹するヨ」 「了解よ。敵にほえ面書かせて、馬鹿め、と言ってやるわ」 高雄は帽子をきゅっとかぶり直し、水平線の彼方を睨みつけた。 「はあ……まあ、やるしかないか。腹をくくれ、叢雲」(61 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:19:24
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「ああもう! アンタたちホント信じらんないわ! いいわよ、やってやるわよ!」 叢雲はそうして考えることをやめた。 超兵器との戦いは常識を捨てろ、と提督に言われていたが、投げ捨てることになろうとは思わなかった。(62 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:23:02
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

数時間ほどはそのまま何もなかったが、南西諸島海域に到達した直後、事態は動いた。 「……ッ敵編隊急降下! 雲の中に入る!」 赤城が見上げた先には、黒い積乱雲の渦。 これ以上の追跡は困難と判断し、彩雲を戻した。 「やっぱり気づかれていたのね。舐めた真似を!」(63 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:26:03
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「輪形陣! 仕掛けてくるヨ!」 赤城と瑞鶴を中心に輪形陣が形成される。 叢雲が先頭となり、対空電探を起動させ警戒を始めた。 「瑞鶴!」 「はい、赤城さん!」 空母から戦闘機が飛び立ち、上空で編隊を組む。 「どこからでも来なさいよ、超兵器ッ!」(64 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:29:24
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

瑞鶴が怒鳴るように言った直後だった。 「敵編隊、右上方5000!」 対空電探が探知したのは、アルウスから発艦した第二次攻撃隊だった。 攻撃隊は雷撃機を中心に、戦闘機を含む混成部隊。 艦隊の上空にいた瑞鶴の直援機が迎撃の為に向かう。 「赤城さんも烈風を!」(65 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:32:31
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

だが、赤城は冷静だった。 彼女は敵編隊が現れた場所とは真逆の位置に戦闘機を差し向けたのだ。 「左方向からも敵機! 大編隊だわ!」 電探の反応は、右の敵編隊よりも編成は大であり、赤城が戦闘機の目線から視認すると、その中には陸軍の重爆撃機も含まれていた。(66 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:37:17
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「主砲タイプスリー、ファイアァー!」 50.8cm砲の射撃が始まると同時に、戦闘機も空中戦を開始した。 三式弾の火花が降り注いだ左の編隊は態勢を崩し、そこへ赤城の烈風隊が上から襲い掛かる。 あっという間に数十機が火だるまになり落ちていく。(67 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:39:35
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

右も怒りに燃える瑞鶴の戦闘機が敵を引っ掻き回し、編隊からはぐれた敵機を叢雲や那智や高雄の高角砲が狙い撃ちにしていた。 彼女たちの練度が勝っているのか、敵の攻撃は激しくとも目立った損害はない。 重巡二人は射撃しながらの回避で、至近弾はあっても直撃はなかった。(68 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:43:21
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

艦隊への攻撃第一波は、特に目立った損害も出すことなくすべて撃墜した。 瑞鶴の烈風、紫電改に二機程度の損害はあったものの、数百機の攻撃をしのいだのだから軽微と言えるだろう。 撃墜し、残骸となって海に浮かぶB-25の残骸を蹴り飛ばしながら、瑞鶴はつばを吐いた。(69 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:50:17
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「つまらないわね。もっと来るかと思ってたけど」 「瑞鶴落ち着け。まだ第一波だ。第二、第三が来るかもしれないんだぞ」 「わかってるわよ」 なだめる那智の腕を振り払ってしまうほど、彼女の怒りはまだ収まっていない。 「でも敵は近いはずネ。きっとどこかの島陰に」(70 #超兵器の金剛6

2015-10-15 00:58:14
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

そう言って周囲を警戒する金剛の目が海面すれすれを飛行する影を見つけたのは、まさに偶然だった。 それは瑞鶴艦隊の後方から、一気に距離を詰めてきていた。 「後方ッ!」 その声にいち早く気付いた叢雲が高角砲を撃つ。 だが相手が速すぎて着弾はすべて後ろだった。(71 #超兵器の金剛6

2015-10-15 01:01:41
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

ドドドドドッ。 機銃弾が横殴りに瑞鶴を襲った。 損害は小破にとどまったが、その機影は彼女の頭上数センチを通り過ぎ、急上昇してその姿を彼女たちに見せつけた。 「プロペラが、ない……?」 赤城にはそれが、火を噴いて飛ぶ青い剣に見えた。(72 #超兵器の金剛6

2015-10-15 01:04:20
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「シッッ! ジェットを出してきたカ!!」 金剛はその存在を知っていた。 彼女が前世で戦ってきた国々、組織、集団。 そのいずれもが、ジェット機を運用していたのだから。 「このっ! このっ! このおおおっ!」 叢雲は焦りからか高角砲を連射するが、当たらない。(73 #超兵器の金剛6

2015-10-15 01:07:21
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

『ふははは! どうだ、我がバンシー隊は恐ろしいだろう?』 唐突に聞こえた声に全員が振り返る。 ヤシの木の多い島陰からゆっくりと姿を現した、軍服姿の女性。 巨大な艤装を背負った彼女は、間違いなく超兵器、アルウスであった。 「貴様らの戦闘機など、敵ではない!」(73 #超兵器の金剛6

2015-10-15 01:09:41
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

青いジェット戦闘機、バンシー十機は散開して赤城と瑞鶴の戦闘機に襲い掛かる。 マッハに近い速度で襲われては、烈風も太刀打ちできずあっという間に撃墜されていった。 「のこのこと姿を現すなんて!」 高雄が攻撃を始めるが、アルウスは甲板を盾のようにしてそれを防ぐ。(73 #超兵器の金剛6

2015-10-15 01:11:59