ツイノベまとめ

#twnovel で書いた小説や、書き出し祭りなどツイノベ小説をまとめました。
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みお @miobott

どうせ落ちるは地獄の果てだ。ならば生前愛した男も共にと女は目の前に垂れた足首を掴む。かつては愛し可愛やと抱いた足。必死に爪を立て引けば男は切なく女の顔を見た。名を呼んだ。途端女の顔が菩薩のそれとなり、諦めの笑みが広がる。そして彼女は緩やかに闇へと飲まれて消えた。 #twnovel

2011-07-04 20:42:55
みお @miobott

「いつもごめんなさい」年長者らしい少年は幾分か緊張の面持ちで、男を大きな椅子に座らせる。「毎年毎年可哀想だから」「今年はもう虐めない事にしたのです」幼い少年少女達が、戸惑う男に小さな手を差し出した。手の上には可愛らしい福豆一粒。それをカリリと噛んだ鬼の目に涙。 #twnovel

2011-02-03 10:36:39
みお @miobott

彼女は猫の子のように目を輝かせた。「私、あなたに恋してるんじゃなくて」早朝特有の気怠く青い空気。湿気ったシーツにくるまり、彼女は白い四肢を伸ばす。その指先には一粒の甘い塊。「このチョコレートに恋してるの」ハートを象ったそれに唇を寄せて蕩けるような声を上げた。 #twnovel

2011-02-02 00:28:59
みお @miobott

「あなたなんて大嫌い」少女は強張った顔で呟いた。「顔も見たくないから、ここからあなたを出すの」俺を閉じ込めていた檻が、鉄の音をきしませ開く。久々に嗅ぐ外の空気!ここは夜の動物園。園長の娘は俺を睨む。「大嫌い。さようなら」 渡される事の無い手紙に彼女の涙が滲んだ。 #twnovel

2011-01-31 22:13:09
みお @miobott

私は恋に怯えていた。「本当は目なんて悪くなかったの」私は震える手で眼鏡を取る。それは私を守る壁だった。彼は目を細め、いつものように私の髪を撫でる。「知ってた」その笑顔は眼鏡越しに見るよりも優しく。「さあこの橋を越えて旅を続けよう」朝日を浴び彼の顔が明るく輝いた。 #twnovel

2011-01-30 12:08:05
みお @miobott

「あれはもう死ぬね」少女は歌うように人を指さす。「昼間の映画館の客なんて半分は幽霊か死に際の人間さ」スクリーンは暗いまま。不思議と映画は始まらない。「今日は誰にしようかな」。彼女は鎌のような細い指で僕の胸を突き「君も本当に生きた人かな?」輝く瞳で死神は笑った。 #twnovel

2011-01-27 14:52:28
みお @miobott

寒いね。うん寒い。僕たちは子供のようにピッタリくっつき、明るいコンビニから飛び出した。外は真っ暗、お互いの顔も見えやしない。「手袋半分こ」君はミトンの手袋片方、僕に差し出した。手袋をはめた手には買ったばかりの肉まんを、逆の手は繋ぎ合う。「暖かい」君は笑った。 #twnovel

2011-01-22 09:04:43
みお @miobott

許されない恋だった。「もうすぐ貴方は私を忘れる」泣きじゃくり、くぐもる声で彼女は言う。古いホテルの一室。隙間から光が漏れて埃が輝いた。「待って」僕は慌てて彼女の美しい羽衣を掴む。「忘れない」「無理よ。忘れる魔法を掛けたもの」無理に笑う彼女の顔が朝日に溶けた。 #twnovel

2011-01-22 08:42:42
みお @miobott

「君の為に浴室を広くしてみた」彼は微笑む。見れば浴室の壁も天井もすっかり剥がされ丸裸。顔を上げると空の様子がよく見える。「飛行船のようだろ?」でも今日はあいにくの雨。「良いさ晴れていたら君が月に帰ってしまうから」抱き寄せる手に噛みついて「馬鹿な人」と私は言った。 #twnovel

2011-01-19 16:50:48
みお @miobott

「やっと会えましたね」白衣の老人は揺れる花に声をかける。昼の日差しも届かない、そこは閉鎖された地下の一室、彼が手にするのは闇に輝くしゃれこうべ。花は髑髏の目から生えている。「百年はとても長い、長い時間でした」白濁とした瞳を細め老人は艶と輝く髑髏の額に口づけた。 #twnovel

2011-01-16 13:16:08
みお @miobott

彼女は本棚に背を預け「雨の日の図書館ってなんか特別な気がする」と言った。彼女の言うとおり図書館は静かで人も少なく、どこか神秘的である。「ここに居てもいい?」彼女は棚に置かれた私の革表紙に頭を押しつけ、甘えた。その柔らかく甘い髪の毛で撫でられ私は人になる夢を見る。 #twnovel

2011-01-13 15:22:39
みお @miobott

暗い夜の高架下、少女と少年は顔をつきあわす。「いつ飛ぶの?」「次の電車が通過したら」二人はおずおずと手を重ね、互いの温度に驚くように顔を見合わせた。やがて高架の上に深夜特急貨物電車が行き過ぎる。音が止む前に「次はあの星座へ!」叫んで飛べば二人の姿はかき消えた。 #twnovel

2011-01-11 23:26:55
みお @miobott

#twnovel 退屈で死んでしまいそうだったので男はある日、土を練った。土の塊は立ち上がり踊り出す。楽しくなり、量産する。そのうちそれは口を聞き、恋をして子供を成して世界を作る。いつか土は、男を忘れた。「奇跡は所詮、奇跡か」男は寂しく笑って、再び退屈の世界で静かに眠るのである。

2015-09-02 00:20:36
みお @miobott

私の目の前には透明な壁がある。それは狭い部屋の中、私はただ壁を見上げる毎日だ。しかし存外この生活は心地良くここで一生を終えるのも悪くはない、等と思っている。でもそんな生活にも終わりが来る。着飾った女が私の体に手を伸ばし「この猫下さい」私の平穏なる生活は終わった。 #twnovel

2011-02-11 07:45:45
みお @miobott

#twnovel 強烈な昼の日差しから逃げるように、あなたは図書館に迷い込む。気怠そうなその瞳が私を見るなり微笑みにかわった。「この表紙、昔の画家が描いた画家の娘さんだったか。まるで向日葵のような人」私の描かれた表紙を指で撫で囁くあなたの声は遠い。そうだ、私の恋はいつも叶わない。

2015-08-02 20:39:10
みお @miobott

#文字スケッチ 夏の青い日差しが大地に当たって白く弾けた。緑は日差しを含んで競い合うように濃さを増す。夏の空気の中で二匹の狐は背を伸ばし人待ち顔だ。彼らが待つのは心地良い雨雲である。彼らの神は五穀の神、どうぞ雨のお恵みをと狐は祈る。 pic.twitter.com/qNHS759izU

2015-07-26 20:55:37
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みお @miobott

#twnovel 夏の水面に跳ねる夕陽、映る篝火。船が動き始めると打ち鳴らされる太鼓の地響き雅楽の音色。御鳳輦の中で密かにほくそ笑む神は、しずしずと川に浮かんだ。今宵の賑やかなるこの祭りは陸から川へと練り歩く年に一度の神の散策である。 pic.twitter.com/19bu0CLsUw

2015-07-25 20:24:41
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みお @miobott

#twnovel 海へと消えた女を追って私も海に足を浸した。女の声に惹かれて進む間に、水は私を飲み込みやがて体は海の底。見上げれば水中を悠々泳ぐ魚影の中に、愛した女の面影を持つ魚が一匹。手招こうと上げた私の腕は魚の鰭になっている。 pic.twitter.com/1u0i7gQZUk

2016-02-07 23:19:28
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みお @miobott

#twnovel 「お前の剥いた蜜柑が食べたかったね」と呟き、その夜男は逝った。目も口も利かぬ娘は男が再び優しい声をかけてくれるを信じそのまま壊れた。「見て御覧」後日、男の弟子は畳に転がる蜜柑を見て涙ぐんだ。「人形遣いの名人は死して人形を泣かすんだよ」物であるはずの人形の娘の涙。

2016-01-16 23:08:44
みお @miobott

#twnovel 恋を囁けない私にとって、彼女との触れあえる数時間は唯一無二の至福の時間である。私は彼女のふくらはぎを包み込み、彼女は幸せそうに舞台の上で最高の演技を見せる。しかし舞台を降りれば彼女は私を無惨に脱ぎ捨てて靴箱に押し込んだ。どうせブーツの純情など誰にも分かるまい。

2016-01-11 21:52:48
みお @miobott

#twnovel 女の白い指先が猫の顎を優しく撫でる。柔らかな白の毛は女の愛撫で乱され正され、滑らかとなる。膝に抱き抱えられたその猫は、アーモンド型の青い目を細めて私をみた。「さて、君は私のペットを飼いたいとそういうのかね?」気高い猫の一部には、人をペットとする個体があるという。

2016-01-11 21:49:47
みお @miobott

#twnovel 私の妻は聖女だ。一月に一度人を殺めなければ気が狂う私のような人種にとって彼女の清らかさは救いだった。ある夜、仕事を終え帰宅した私に彼女は珈琲を差し出す。「血の香りは珈琲で取れます」そして聖女の笑みで私の手を握る。彼女はどこまで知っているのだろう、と私は戦慄した。

2016-01-10 21:02:16
みお @miobott

#twnovel 夕闇に染まるエレベーターの中、彼女は一人で泣いている。大丈夫?と聞けば寂しい。と返す。危険な人だと分かりながら僕はついつい手を差し伸べる。「大丈夫僕がいるから」じゃあ一緒に来て。彼女は囁き僕の体を押す。振り返ればエレベーターの床は虚空の闇。僕は軽く目眩を覚えた。

2015-09-01 22:29:54
みお @miobott

#twnovel 新しい名を与えられると、皆ここから旅立っていく。しかしここで過ごした幸福の記憶を持ったまま旅には出られない。だから女神は毎日甘いタルトを焼く。それには記憶を薄める水薬が一滴。それを口に含んだ彼らは幸福と甘さの余韻を顔の皺に隠して、やがてどこかで産声を上げるのだ。

2016-01-06 22:42:14
みお @miobott

#twnovel 「さようなら」と風が言った。風はやがて女の姿となって男の顔に手を置く。男からすれば冷たい風が触れたに過ぎない、その程度の触れ合いである。男より切なげに離れた女は白い羊の姿となる。「さようなら」と囁く声は雪となり男に降り注ぐ。「年が明けるな」と、男は知らず呟いた。

2015-12-27 23:52:56
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