花百姿まとめ

#花百姿で書いている、ツイノベ×花の写真の花小説のまとめです。
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みお @miobott

#twnovel 青空に向かってたおやかに袖を広げるその姿はまるで天上を舞う天女である。目をこらし良くみればそれは極楽浄土の如き蓮畑。そんな花園で目を覚ました私は一匹の蟻。清らかなその腕から垂れる朝露を、私は恍惚とすするのである。 pic.twitter.com/uvHVNnkl2Y

2016-07-02 19:23:17
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みお @miobott

#twnovel 物も言わぬ石仏に彼女は毎年花を供える。なぜかと問うてみれば「こんな美しい夏の朝に色が無いのが可哀想」と、無邪気に笑い彼女は白い蓮の花に姿を変えた。なるほど彼女は花の化身であったのかと、坊主は冷たい水を白蓮に捧げる。 pic.twitter.com/VXNpvnopFM

2016-07-02 19:14:06
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みお @miobott

#twnovel 目の前に咲くその娘が自分に恋慕を寄せていることなど、彼はとうにお見通しであった。しかし所詮彼女は朝にだけ目を覚まし、短い夏の間だけを生きる儚い娘である。叶わぬ恋に哀れを思い、彼はただ彼女のために祈りの言葉を呟いた。 pic.twitter.com/rWXxrMsyXy

2016-07-02 19:02:15
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みお @miobott

#twnovel 彼女がそこに咲いたのは偶然だった。朝日に目覚め、そっと顔を上げてみれば目前には夢にまでみた彼の人の姿。目が合いぼうっと照れた彼女の体は眩しいほどの紅に染まる。それは仏に焦がれた蓮が見る、ただ泡沫の恋の夢である。 pic.twitter.com/UkMQOMlI0c

2016-07-02 18:48:41
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みお @miobott

#twnovel 「君は今、誰かに恋をしているね」と私が揶揄すれば、「なぜ分かるのでしょう」と娘は口を尖らせる。「君の姿はあまりに分かりやすいものだから」彼女の耳に顔を寄せれば初心な紫陽花の娘は、ほうと頬を赤らめて私の顔を見上げた。 pic.twitter.com/nJF3yIlXFK

2016-06-19 23:18:01
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みお @miobott

#twnovel じめじめとした雨に咲く紫陽花は、梅雨曇りの空気に艶やかな色を添える。赤や白、青に紫と咲き乱れるその花が梅雨に咲くには理由がある。それは「かつて愛した男を想って泣く涙を雨の滴で隠すのです」と紫陽花が一滴、滴を零した。 pic.twitter.com/TgiKscNCcv

2016-06-19 23:03:43
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みお @miobott

#twnovel 蓮観音が四日の命を終えた時、花弁だけが彼女の周りに散っていた。なお残る美しい紅の色は却って哀れである。かの明王の像は、彼女の体に残った葉を一撫でする。葉に落ちた滴は雨か涙か。その日より明王の像は寺から姿を消した。 pic.twitter.com/DLDxcQeYaR

2016-06-19 19:48:36
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みお @miobott

#twnovel 蓮観音の咲く寺の隅、うち捨てられた手水舎に一体の不動明王の像がある。誰が置いたのかいつからあるのか、住職さえ知らないのだという。その明王はただ、ただ蓮を見つめる。その石の目にはかすかな恋情と憐れみが浮かんでいた。 pic.twitter.com/t6rFjX0Ni9

2016-06-19 19:45:06
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みお @miobott

#twnovel 雨の滴にも負けぬ凜とした立ち姿。裳裾は緑、襟に黄の重ね。目元には眩しいまでの紅を引く。彼女はただ天を見た。雨を願い雨に濡れ雨に愛された彼女を蓮観音という。ただ数日、朝の短い間だけ生きることを許された哀れな娘である。 pic.twitter.com/n7C0jcxVYD

2016-06-19 19:42:39
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みお @miobott

#twnovel 「紫陽花に恋した男の話はいかがでした?」女将は微笑み私に茶を勧めた。私は汗を拭い愛想笑いをする。「いやはや夢のような」顔を上げれば女将は消え、代わりに紫陽花を模した菓子が一つ。雨の香りを思い出し、私は目眩を覚えた。 pic.twitter.com/jLa4IazYNv

2016-06-11 22:28:31
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みお @miobott

#twnovel 紫陽花に恋した私はいまや哀れな一匹の蝸牛。息苦しいまでの雨の中、私は彼女の緑の葉に乗り憐憫と情愛を請い続ける哀れな存在だ。紫陽花の女は私を憐れみの目で見つめ、優しくその葉を広げた。それは、観音菩薩の慈愛の掌である。 pic.twitter.com/6buif0GYcS

2016-06-11 22:00:21
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みお @miobott

#twnovel 私は少々、花の園で遊びが過ぎた。紫陽花の女は情が深く色気がある。それは鬱陶しい季節に雨を受けて健気に咲くその性質によるものらしい。「どの女を選ぶのですか?」振り返れば花の群れ。色に酔いそうだ、と私は呆然と呟いた。 pic.twitter.com/PuXKdQoOcn

2016-06-11 21:57:03
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みお @miobott

#twnovel 「朝は悲しくて仕方が無いのです」と彼女はさめざめ泣いた。なんともいえない薄衣の美しさ、朝露に湿った滑らかな膚。たまらず抱き寄せれば彼女は一輪の早咲き紫陽花に姿を変える。「朝は貴方とお別れの時」彼女は朝露の涙を零す。 pic.twitter.com/QRfGHLuZmj

2016-06-11 21:46:59
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みお @miobott

#twnovel 彼女は不思議な女だ。快活と思えば冷たい所もあり聖女と思えば悪女でもある。君はまるで多重人格だと言えば「そうね」と彼女は微笑む。「だって私は一人ではないのだから」姿を変えた彼女は紫陽花の人。多くの花弁が私を見つめる。 pic.twitter.com/SVXfaL6hQV

2016-06-11 21:52:02
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みお @miobott

#twnovel その艶やかな黒髪に、紫の色はさぞかしよく映えることでしょう。ただ私はあまりに内気に過ぎますので、あなたより少し離れた場所で花を咲かせて、そうっと花簪のように添うことしかできない、情けなくも淡い恋心にございます。 pic.twitter.com/3LL5o2EsZr

2016-05-22 19:08:35
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みお @miobott

#twnovel 日差しが差し込むと黄色の着物を纏った娘達がいよいよ楽しげに手を伸ばす。白い日差しの中、彼女らの袖が揺らめき風に色が移る。目を擦ればそこにあったのは黄色の花畑。風に色だけ残し、娘達のはしゃぐ声が幻のように通り過ぎた。 pic.twitter.com/9F6BaLO5ef

2016-05-22 19:01:42
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みお @miobott

#twnovel 彼女が目覚めるのはわずか数刻の間だけ。艶やかな膚に滑る水の珠、瞳は薄瑠璃に似た紫の色。近づいても彼女は顔もあげず水の上で揺れるだけ。水の女神と呼ばれた彼女は睡蓮だ。貴女に焦がれる哀れな蜂にどうぞその甘い蜜の幸福を。 pic.twitter.com/fQsQadfYiQ

2016-05-22 19:06:01
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みお @miobott

#twnovel 里から見えるあの山には神が宿るのだと老人が言った。山に光が落ちれば稜線の緑が沸き立つように輝く。息を飲む私の横で老人は一本の木に姿を変えた。それは古びた大木。まるで山に祈りを捧げるようその枝は恭しく垂れ下がるのだ。 pic.twitter.com/IkMKOoeVoo

2016-05-22 19:31:16
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みお @miobott

#twnovel それは、まるで季節外れの満開の桜である。そよそよとそよいで揺れるその花は、本殿より聞こえる神楽の音と共に舞い遊ぶ。やあ美しい桜の花と近づけば、それはなんであろう、人々の祈りが描かれた神籤をこよりとしたものである。 pic.twitter.com/VuIOCdB8oP

2016-05-02 22:33:01
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みお @miobott

#twnovel 廃線の線路の上に咲く花は、かつての汽笛音を覚えている。今春も、かつての電車の影を待ち続け、やがて錆びた線路の上に花を散らした。 pic.twitter.com/O2O9kj51Zy

2016-04-10 22:27:34
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みお @miobott

#twnovel 茶屋に腰を下ろせば、私の背に寄り添う娘があった。声などなくともいつもの娘と分かる。振り返れば逃げてしまうので堪えていたのは三日の間。思いきって振り返れば、そこにあるのは赤い傘にうすらと映る、しだれ桜の影である。 pic.twitter.com/iZMM3mL9nH

2016-04-02 21:52:28
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みお @miobott

#twnovel 彼もけして野暮な男ではない。とうに女の気持ちには気がついていた。愛おしい人と、毎年春に咲き誇る、愛らしい桜の愛。それは、万年の命を誇る石像の彼にはちと重い。いつも散りゆく彼女の姿をただ見つめるばかりの切ない春だ。 pic.twitter.com/pZmOh0AY9B

2016-04-02 21:35:19
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みお @miobott

#twnovel 吉野の取り柄は嫋やかな儚さ。陽光の取り柄は名の如く春の光を吸い込み輝く美しさ。さてお客様、どちらの娘になさいますか。と、女衒の男は私の目を覗いて笑う。浅い夢から目覚めれば、目の前に陽光と名付けられた桜が揺れていた。 pic.twitter.com/l8lyxj4AJt

2016-03-26 19:51:18
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みお @miobott

#twnovel さあこちらへ。貴重な瞬間は直ぐに終わってしまいます。急いで…愛らしい娘達が私の手を引き背を押す。誘われるがままに駆け出せば、目前にパッとばかりに開けた春の色。青の空に薄桃の花。振り返れば娘達は花の顔で笑っている。 pic.twitter.com/A5Qczb18FS

2016-03-26 19:47:21
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みお @miobott

#twnovel 秘めた恋だからこそ、行方をおみくじの結果に頼るのです。女は儚くそう微笑んで、細く折ったその紙を細い枝に結んでしまった。結果は如何と聞いてみれば、「人に漏らば叶いません」そう言って彼女はおみくじを見守る桜花となった。 pic.twitter.com/mFoCxj0gju

2016-04-02 21:31:50
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